構造デザインの講義【トピック10:合成構造の可能性】第2講:木+αの構造デザイン
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック10:合成構造の可能性
第2講:木+αの構造デザイン(2)、木材会館、武雄市図書館
第5講:その他の素材+αの構造デザイン
都市の木造化を体現したポーラスなファサード、木材会館
木材会館は、新木場駅前に建つ木材問屋組合の会館で、都市の木造化(ティンバライズなど)に向けて、木材利用の一般化を試みた建物です。
最高高さ約36mの高層建築物です。
大梁は、接着剤を用いず梁継手で接合し、30m近い大スパン空間を実現しています。
RCの壁を基盤として、105mm角の木材を用いた格子により、多数の孔が空いたような、ポーラス(※)なファサードデザインになっています。
木材は、あえて不燃化せず、耐火関連の検証によって安全性が裏付けられています。
※ポーラス(多孔質体):多数の孔の空いたもので、スポンジや巣穴などのようなものです。
地元の木材を引き立てるスチールテンション材の演出、武雄市図書館
佐賀県武雄市にある武雄市図書館は、図書館の機能のほかに、書店やカフェが併設され、地域のカルチャーセンターであり、賑わいのある建物です。
2000年に竣工した図書館と歴史資料館が、2013年に改修(開架書庫閲覧室の増床、2階バルコニーの新設など)され、民間業者が指定管理者として参入し、運営されています。
放射状の平面の中心に向かうように、大屋根が傾斜しています。
これにより、連続性と回遊性を生む、大空間を感じることができます。
2階バルコニーから、開放的な木の空間を見通すことができ、館内の賑わいや人のアクティビティーを共有することができます。
また、静かに読書などに集中できるようにも配慮されています。
木材と鉄骨によるハイブリッド張弦梁が、この大空間の大スパン構造を支えています。
木材からストラッドを設け、テンション材を配置しています。
その断面の対比から、細身の鉄骨は姿を消し、木材の空間を演出しています。
大屋根の端部は、斜材を立体的に配置して、下部構造で支持されています。
梁と斜材は、鋼製部材の接合部によって一体化され、木材に覆うことで、見た目に配慮されています。
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