スゴイ仏壇・・・💦
最初にお断りしておきます。わが日本は信教の自由も憲法で保障されていますが、同時に言論の自由も保証されております。ですので、私が今からここに何を書こうともそれは悪意によるものではなく、特定の宗教団体、政党、果ては関係団体に至るまで、決して、決して、け~~~っして揶揄しようとか、おちょくってやれとか、お前らそんなもん辞めてしまえとか、言う気はま~~~ったく、ございませんということを、ご理解くださいませ。
はい、皆様こんにちは。miriamです。今回は、ふとしたことで思い出した昔のお話にお付き合いください。どれくらい昔か、って?う~ん・・・そうですねー、40年くらいになるかな?あれは私がまだセーラー服のよく似合う中学生の時のことでした・・・。
その日は父方の親戚の家で、法事がありました。祖父の法事です。私が幼い時に亡くなった祖父。その霊を慰めるために、呼ばれたのでした。ですが、私ははっきり言って父方の親戚の人が苦手で・・・はっきり言うと、キ・ラ・イでした。だもんで、あんまり父方の実家には、近づきたくなかったのです。でも、呼ばれた以上は仕方がありません。そうさいさいあることでもないので、親にくっついて連行・・・じゃない、出かけました。
自分の両手に手錠がついているような気がしました。手錠の代わりというべきか、父の大きな手は私の手を握って離さず、これが逃れることができない儀式であることを、私にいやというほど教えてくれていました。
叔父の家・・・父方の実家に着きました。玄関のドアを開けた私は、通された仏間を見てびっくりしてしまいました。部屋の壁一面を切り抜いて、天井高くまでそびえたっているものがあります。あれはいったい、何だろう。 そうこうしている間に親族が次々と到着し、たわいない話でどんどんにぎやかになっていきました。
とあるおじさんに、奥さんがため息交じりに言います。「この人ったらねー、あんなにお医者さんから言われているのに、まだ禁煙できないのよー」「いいじゃないか、ベランダで吸ってるし」「そんなんじゃなくて、このままだとアナタ肺を壊してしまいますよ、ってあんなに言われているのに・・・」「わかったわかった、もうやめる。明日からな」「またそんなこと言って―!」
また別のところでは、今年小学生に上がったばかりの女の子の話題が花盛りでした。「○○ちゃん、小学校、楽しい?」「うん!!すっごく楽しい!ランドセル、ピンクのやつ買ってもらったんだよー!」「ほうほう。それはよかったじゃない。」「赤にしなさいって言ってるのに、この子ピンクにするって言ってピンクのランドセル抱きしめて離さないのよ・・・」「まあ、持つのは○○ちゃんだからね。○○ちゃんの好きなの持てばいいさ」「うん!」
また違うところではオバサンがほっとした顔を浮かべています。「血圧、気になってたんだけどこの前検査したらだいぶ正常値に近づいてきたって言われたの・・・このままの状態が続けば、お薬もいらなくなりそうですね、って、先生から!」「よかったじゃない。あとは眼科だけ?」「そうなのよー」
世間話に興じる親戚たちをしり目に、私はこのかなり広い仏間の壁1枚をそのまま占拠しているものの存在が気になって仕方がありませんでした。ま、仕方がない。やることだけはやっとこーぜー、と、私が仏壇のある2階に上がろうとすると。「あれ?ミリアムちゃん、どこ行くの?」叔母さんの問いに私が、仏壇にお参りするのだというと、「ああ、仏壇ならここ、ここ」
叔母さんは、置いてあった小さなリモコンを取ると、ボタンを押しました。すると。ガコーーーン!!私が妙だと思っていた壁一面が動き出し、観音開きになった扉の中から、天井にまで届くほどの大きな仏壇が、現れたのです。呆気に取られている私に叔母さんは「さあ、お参りしてちょうだい!」ニコニコしながら、金ピカの仏壇をこれ見よがしに指し示しました。仏壇の大きさにもたまげたのですが、そのあともっとたまげた事態になろうとは、この時私は知る由もなかったのです。
ポカーンと口を開けていた私は、リモコンのボタン一発でガコーンと大音響を上げて開いた仏壇を見て、「何かに似ている・・・」と考えていました。「あっ!!」思い出しました。「ガ・・・ガ〇ダム・・・。」あの、モビルスーツの、操縦席!パイロットが乗る、あの席!・・・中には仏像があるわけでもなく、お経の文句を書いた掛け軸が掛けてあるだけなのですが、奥行きといい、雰囲気といい、あれ、そっくりだったのです。
・・・私はキリスト教プロテスタント派の敬虔な(?)信徒である。お仕えするのは主イエスただおひとり。しかーし!今ここで必要とされているのは周りに合わせること!日本では長いものには巻かれるものなのだ。・・・イエス様、お許しください。掛け軸に手を合わせようとも、線香をたこうとも、私の心はあなた様ただおひとりのものです!―さあ、やるぞ!線香に火をつけて、「ミリアム、行きまーす!!」これは昔使っていたものと同じ、ゴンゴーンとバチ(?)で大きな「おリン」を鳴らして、数珠を持った手を合わせ、真言を唱えます。「な・・・」
―その瞬間。今まで周りにあふれていた和やかな雰囲気が、ガラリと変わり・・・。ものすごい圧とともに、周りから大音響の読経が聞こえました。「南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!・・・・・・(しばらく続く)」
私は鼻先にデコピンをされた猫のように、大きな座布団から文字通り、飛び上がりました。この大きな仏壇は、ただ大きいのではない。高性能で知られるBOSEのスピーカーが、いくつも中に入っているのに違いない!私がきょろきょろとスピーカーを探す間にも、読経の音は聞こえてきます。さっきまで旦那が喫煙をやめてくれないと嘆いていたおばさんも、娘の求めに従い赤でなくピンクのランドセルを買ってやった夫婦も、血圧が下がったと喜んでいたおばさんも、胸の前で手を合わせ、あらん限りの大声で、声を合わせて真言を唱えているのでした。
すっかり毒気を抜かれた私は、「BOSEのスピーカーじゃなかった・・・」と思いつつ、「なむ・・・みょう・・・ほ・・・れんげ・・・」と小さな声でつぶやくと、絶句してしまいました。だって、私一人の声よりも、周りの皆さんの声のほうが迫力とありがたさの点で、はるかに勝るのですから。
うつむいて大きな絹の座布団の房をいじくっていた私に、指導が入ったのはその時でした。「ミリアムちゃ~ん・・・もっと真剣に、もっと大きな声で唱えてくれないと困るわ~・・・」このうちの主の、叔父の声でした。 さっきまであんなに熱を帯びていた雰囲気が、すっかりシラケてしまっています。「はい・・・すみません・・・。」小さな声で申し訳なさそうに謝って座布団を降りた私は、人知れず深ーいため息をつきました。
それからも誰かが仏壇にお参りするたびに、大音声での「南無妙法蓮華経!」のリフレインは続き・・・。
昔のこのうちは、こんなんじゃなかったんだけどなー。2階に小さな仏壇はあったけど、それだけで、真言の大コーラスもなかったんだけど。幸い、それからそのうちに行くことはなかったので、今はどうなってるのかわかりませんが。そういえば、ある時から、決まって選挙の前になると叔父がやってきて、「アンタの選挙区じゃ○○さんが出るから、入れてやってくれ」と頼みに来てたなあ。内緒で、(これって公職選挙法違反じゃないの?)と思いながら、見てたんだけど。「東を向いて拝め!!」とかさ。「西方浄土」というくらいだから、仏様は西の方角においでじゃないのかと思うんだけど。仏様にお尻を向けて、いいのかなぁ。突っ込みどころはたっぷりあります。叔父はもうこの世の人ではなくなったので、ああ、すごいところと縁が切れてよかったあ。・・・つくづく思う、今日この頃であります。
長くなりました。ここまでお付き合いいただいた方、どうもありがとうございました。よろしければ、また次のお話でお会いいたしましょう。では!