「烏の巣」外伝 Paradies :楽園
死にに来た。
僕は肉体を放棄し、死を迎える。
「名前を。」
受付係だろうか。女の人がこちらをみて名前を聞いてきた。
「アタ。」
「フルネームでお願いします。」
「分かりません。」
僕には他に名前なんて一つを除いて存在しない。
「あら?アタという人はまだご存命ですが。」
受付の女の人が不思議そうに見つめてくる。
「そうですか。」
僕にはこれまでのことを話す気力もなかった。
「今係のものを呼びますので、あちらにおかけになってお待ちください。」
「結構です。」
そう僕は答えると走って奥の扉を開けた。
全速力で突進しドアノブを回す。
なぜかここだ、という確信があった。
「待ちなさいっ!!!そこはスタッフ以外立ち入り禁止なんです!!」
ザボン….。o○
深い海の底。
ふわふわ漂う泡がとても美しかった。
どんどん浮上していく。
水面に顔がでて、身体を起こし周りを見渡すと
島があり空には月が浮かんでいた。
満月だ。
「綺麗。」
サク、サク
砂浜に登っていく。
足跡はついていない。
だが砂浜に近づくにつれ頭がズキズキ痛み出した。
「ウェーん、ウェーん」
赤子の泣き声が頭の中に響き渡る。
「うっ。」
膝をついても止まることはない。
ガンガン頭の中では心拍が激しく脈うち、赤子の声が大音量で響き渡る。
耐えなければ。
砂浜に手をつき、吹き出す汗が目に染みるのを止めずにただ、
耐え続けるんだ。
しばらくしてピタリと泣き声が止んだ。
「はあーっ。耐え抜いた。」
空を見上げれば美しい夜空が広がりオーロラも見ることができた。
「綺麗だ。」
ここは『命の泉』と呼ばれる場所だろう。
まだ肉体があった頃に何回か来たことがある。
全ての生命の源だ。
「よし!決めたっ。」
僕はここで暮らそう。
島の中を散策していく。
驚いたことに文明の跡があった。
しばらく歩いていくと暮らせそうな建物も見つかった。
「来ないでっ!!」
「ん?」
どこからだろうか。
進んでいくと大きな屋敷の前に出た。
「君、それ以上進むと怒るよ!!」
次は頭の上から声が降ってきた。
見上げると木の上に少女がいる。
座ってこちらに棍棒を振り上げていた。
「僕は別に侵略者じゃないよ。」
「君、審査を通って来ていないだろう?そういう奴のことをここでは侵略者って呼ぶんだよ!」
少女はまだ怖い顔をしてこちらを威嚇している。
「…。」
侵略者、か。
僕は黙ってしまった。
「なんかありそうだな。」
「えっ?」
驚いて顔をあげると少女が不思議そうに僕を見ていた。
「来い。」
スルッと木から降りると僕を案内し出した。
「ここの空気は気持ちいいんだ。」
「世界一綺麗なんだよ。ほら、あれも見て!」
少女は嬉しそうに教えてくれる。
もともと明るい性格なんだろう。
「ここには全部の幸福が詰まっているんだ。なんでも手に入る。」
「なんでも?」
「そう、なんでも。だけどそんななんでも手に入ったら逆に面白くなるなると私は思うな〜。」
確かに。そうかもしれない。
「ここが屋敷。ちょっと待ってて。」
そういうと少女は奥に消えてしまった。
待たされたのは大きな門の前。
木製だ。
触ると暖かい。これがぬくもりってものなのだろうか。
「いいって!ほら、入って。ようこそ、屋敷へ。」
そうして綺麗に腰を折って一礼してくれた。
僕も一礼すると
「お邪魔します。」
と言って中に足を踏み入れた。
すると途端に不思議な感覚に包まれた。
体が持っていかれそうだ。
悲しみが溜まって、それにより出来た深い穴が
じわじわ足元まで広がってきそうだった。
「さっき、ここには全部の幸福が詰まっているって教えてくれたよね?」
「うん。どうした?」
「ここの住人は悲しんでいるように感じる。」
僕は何気なく言ったつもりだった。
だが彼女は突然泣き出しそうな顔になると下を向いて
「そうかもしれないな。」
と言った。
だがすぐにまた顔をあげると
「部屋に案内するよ!」
と無理やり明るく振る舞った。
気になる。ここには何かあるんだ。
「ここが君の部屋。綺麗でしょ?」
また自慢するように言ってくる。
「うん。ありがとう。」
確かに年季の入った暖かい綺麗な部屋だった。
「それで、君の事情は?」
どうやら彼女は僕が審査をスキップして来たことが、
よほど気に入らないみたいだ。
「ちょっとね。」
「たとえどんな事情があったにせよ、ちゃんと審査は通過しないと
マズいよ。」
「そうなの?」
それから少女はここのルールを教えてくれた。
「まず、肉体を失ったものは審査を受ける。元の肉体と魂が間違っていないか、死ぬ前に破天荒なことをやらかしていないか、とかね。
そしてそれによって三つの道に分けられる。」
「二つじゃないの?」
「それは物語の中だけ。正確には無数に道があるんだけど、
三つのうちここに通じる道を使える運のいいものだけが泉に来れるんだ。」
なるほど。じゃあ、僕は自分で選んじゃったわけだ。
「それを君は勝手にドアに飛び込みやがって。今頃大騒ぎじゃないかな?」
「その時はその時だよ。」
僕がゆるっと答えると、真剣な顔をして声を尖らせながら
彼女は僕に忠告してきた。
「そんな呑気にもいかないよ。ここでは新入りの時からいい子にしていれば滅多に厳罰なんて降ってこない。
今からでも遅くない。地べたに手をついて謝んな。」
「ヤダ。」
「じゃあ、なんらかしらのことは起きる。覚悟しな。」
忠告は新参者の僕にとってはありがたいが、
自分の選択には自信がある。
間違っていない。いつもそうだったから。
「ご飯にしよう。美味しいよ。」
日もくれかけ、キッチンに案内してもらうと食器がやたらと多かった。
しかも使いたて。
「僕とあなた以外にも人がいるの?」
「いないよ。」
手際よく準備する姿はどこかの家庭の母親みたいだ。
「多く作っておいて良かった〜。作りすぎたって心配してたんだ♪」
鼻歌を歌いながら準備された料理はどれも美味しそうだ。
「いただきます。」
食卓にはキャベツとトマトの二分の一をそれぞれくっ付けたような料理やベーコンとプロッコリーが溶け込んだスープ、パンなどが並ぶ。
「どう?美味しい?」
「はい。とても美味しいです。」
「ふふっ。」
嬉しそうに笑って豪快にパンを頬張る姿は僕には魅力的だった。
幸せな家庭の食卓ってこんなんなのかな?
「これからどうするの?」
唐突に切り出されたことに驚いて僕がむせると
「落ち着いて。そんな慌てることでもないね。ごめんごめん。」
そう言って彼女は水を出してくれた。
「ほら、ゆっくりでいいから飲みな。」
それから僕らは静かに、でもかすかに微笑みながらご飯を食べた。
「星は見た?オーロラは?」
食後、僕たちは屋敷の屋根に登って空を眺めていた。
「見ました。とても綺麗で…」
「タメ口でいいよ。そういえば名前言ってなかったね。私、マキ。」
「マキ?僕はアタ。」
「アタ。いい響きだね。」
僕の本名じゃないけど、名前を褒められるって嬉しいんだな。
「マキ?」
「うん?」
「ここに僕の居場所はあるのかな?」
新世界に引っ越して、疲れ果てる一日を送った中で生まれた
小さな疑問を彼女に投げかけてみた。
するとすぐに
「そんなもの、あるに決まってるだろう!!」
あまりの腱膜に僕が驚いているとマキはまた僕に、大切なことを教えてくれた。
「ないわけないじゃないか。こうしてアタと星を見れて私は幸せだし、
神様はきっと君の居場所があるから君をここによこしたんだよ。」
「そうだね。ありがとう。」
「いいよ、当たり前のことを教えてあげただけだから。」
「マキはいつからここにいるの?」
「忘れてしまうくらいずっと前から。」
「寂しいね。」
「えっ?」
僕がポツリと呟いた言葉に
意外にも彼女は驚きの表情を浮かべた。
「寂しいよ。1人って。」
僕がそういうと、マキはまた泣き出しそうな顔になった。
きっとまだ僕はマキの本当の感情を知らない。
でもそれを知らないとここの悲しい気配の正体にも辿り着けない気がする。なんだか胸騒ぎのような…そんな感覚に陥っていた。
しばらくお互い黙っていたがマキはとうとう泣き出した。
蓋をしていた想いが溢れ出す時の顔で。
昔から変わらない人の苦しむ顔。
「…。」
僕はただただ無言でマキの背中をさすっていた。
ー翌朝ー
「昨日はごめん。」
マキが僕に謝ってきた。
「どうして?」
「いきなり泣いちゃって。」
「気にしないでいいよ。それより、散策しに行こう。」
だが僕の提案に彼女はまたものすごい腱膜で返事を返した。
「ダメ!昼間は外に出ちゃダメなの。」
「どうして?」
マキは困った様子で何かを考えながら
「そういうルールなの。そのせいでここに長くいる人は
昼間を異常に怖がる人もいるのよ。」
マキもなのかな?
不思議に思い彼女を見つめていると
察したようにマキは、
「うん。私も昼間が怖い。」
と言った。
変な話だな。昨日木に登っていたのに。
「じゃあ、一緒に出よう。」
「えっ、今の話聞いてた?」
「僕は昼間を好きなままでいたい。」
彼女は慌てながらも僕の目を見つめ続けた。
「ちょっと待ってて。」
そう言って昨日と同じように屋敷の奥に消えると
少しして戻って来た。決心がついたようだ。
「わかった。行こう。」
しかし玄関までいくと急に
「やっぱり、無理。怖い。」
と言って中に戻ろうとし始めた。
「昨日出てた。」
「それは、例外!」
「例外?」
「侵略者がそっちに行ったって連絡があったから…。」
誰かとマキは連絡をとりあっているみたいだ。
昨日から怪しいと思ってたけど。
「1人で行ってくる。」
2人で散策することを諦めた僕は、1人で外に出た。
太陽が光り輝いている。
雑誌でしか見たことがない草花が
空に向かってグングン伸びている。
僕の背丈よりも高い植物だってある。
全てが別次元に美しい。
ため息が出てくる。
空気を腹の中にめいいっぱい取り込んで
吐き出す。
「美味しい。」
実に美しい世界だ。
「戻りなって!アタ!!」
後ろからマキの声が聞こえてくるけど
僕が進むごとに次第に遠のいていく。
気づいたら僕はかけだしていたんだ。
子供のように笑いながら。
[ザー]
[チュンチュん]
[さらさらさら]
[そよそよ]
キラキラ
一日中草木や花、太陽や雲と戯れて
僕は夕方に屋敷に戻った。
でも、
そこには誰もいなかった。
「マキ?」
呼びかけても返事はない。
屋敷中探し回ってもマキは見当たらなかった。
ドアというドアを開け、走り回って探しても。
僕の足音が盛大に響き渡っても、
彼女は姿を見せなかった。
疲れ果てて、僕は壁にもたれ座り込んだ。
すると、
「ガコッ」
さっきまでもたれかかっていた壁が後ろに下がり、
僕はできた穴に
吸い込まれていった。
「マキー。」
女の人の綺麗な声だ。
マキを呼んでいる。
そして何かを見つけると、
「マキ!もう、どこにいってたの!心配したんだから。」
と言って女の人は小さな蝶を手の中に包み込んだ。
そして何やら呟いた後に手を開くと
黄色いネグリジェを来た少女が
女の人の前に現れた。
「もー!マキったら全然言うこと聞かないんだから。」
「ごめんなさい。今日は向こう岸のお家で赤ちゃんが産まれたの。
せっかくだから、見に行きたくて。」
「それは素敵なことね。でもちょっと帰りが遅いんじゃない?」
「そうね、ごめんなさい。」
そう言って2人は顔を見合わせケラケラ笑うと家の中に入っていった。
一体、これは何なのだろう。
何かの意味があるのだろうか。
目を開けるとそこは屋敷の中だった。
もう一度壁にもたれ座り込むが何も起きない。
あの家に行くしかない。
「歩こう。」
屋敷を出たら、外は真っ暗で空は分厚い雲に覆われていた。
彼女と女の人が入っていった家は赤い屋根の古民家だった。
ここら辺は昼間散策した結果、家は見当たらなかった。
ひょっとするともっと遠くにあるのかもしれない。
「ザクっ。」
砂利を踏みながら進んでいくといつのまにか湖にでた。
湖の向こう岸にはまた暗い森が広がっている。
さて、どうしたものか。
湖の水に少し手を浸し、水温やだいたいの深さなどをはかろうとすると
湖に氷が張り出した。
[パキパキパキ]
みるみるうちにスケートリンクのようになった湖から
冷気が漂ってきた。
これなら渡れるかもしれない。
慎重に足を踏み出すとまた僕は歩き出した。
思った以上に硬い氷のようだ。
渡りきると氷はじゅわじゅわと跡形もなく溶けた。
「…。」
そういう湖なのだろう。
少し、氷が解ける様子を見物するとまた歩き出す。
今度は急斜面だ。
しかも足元はドロドロで足を取られる。
何度も滑り落ちそうになりながら斜面を登っていくと
鈴が落ちていた。
真っ赤な鈴だ。
「チリン。」
鈴をポケットに入れ、歩き出そうと顔をあげると、
目の前に街が広がっていた。
なんとも言えない美しいランタンがその街をかざり
人々が楽しそうに過ごしているのが遠くからでもよく見える。
「マキが言っていた運のいい人たちか。」
だが見惚れていた間に足を踏み外し、ゴロゴロと僕は勢いよく
急斜面から転げ落ちた。
「うっ。」
起き上がると足が腫れているのか重く、ズキズキ痛む。
僕は歩き出すことを諦めて夜空を見上げた。
と、夜空から水が降ってきた。
「やめて、ください…。」
「お前喋れるのか。ほら立たせてやるから。」
そう言って誰かが僕を立たせると街の中心まで連れていってくれた。
そしてマキが入っていった家と同じような
赤い屋根の家の中に入れてくれた。
次に僕を椅子に座らせ何やら僕の足を観察している。
治療してくれるようだ。
「骨は折れてないようだ。まあ、軽い捻挫だな。」
そう言って包帯を持ってくると僕の足に巻いていく。
「ねえ、お前、私のこと見えてるか?」
さっきから僕は激痛で目を閉じたり開けたりを繰り返していた。
申し訳ないが助けてくれた人の顔を見る余裕はない。
「ちょっと、はあ。痛くって。……うっ!」
また激痛。
「そうか。明日には歩けるようになるよ。でも遠出は無理だな。
少しの間ここに泊めてやるから安心しな。」
その声を最後に僕の意識は遠のいていった。
[ガタン!ゴトン!ガタン!ゴトン!]
翌朝、頭上からの爆音で僕は目が覚めた。
「おはよう。よく眠れたかい?」
声が聞こえた方を見るとそこには美しい人がいた。
多分、男の人なんだろうけどガウンを羽織って
鍋を覗き込むその姿は美しい以外の何者でもなかった。
「お、おはようございます。この音はなんなんですか?」
「ああ、びっくりしただろうね。ちょっとした機関車が走ってるんだ、この上。朝から通勤者でいっぱいだから早朝から動いてる。
おかげでこっちは毎日寝不足だよ。」
そう言いながら鼻歌まじりに食器を出していく。
「朝ごはんはシチューだけど、食べれるかな?」
「はい。ありがとうございます。」
「良かった。」
出されたシチューは肉がトロトロで、味も濃厚。
まさに絶品だった。
「おいしいです。」
「嬉しいね。ありがとう。」
その人は丁寧に最後までシチューを味わうと、僕が食べ終わるまで
席についたまま、待っていてくれた。
「ゆっくりでいいよ。」
「はい。」
食べ終わると僕は食器を洗うのを手伝い
ちょっとした話をした。
「マキ、って人を探してて。ここに住んでいませんでしたか?」
「マキ。どうだろう。僕は聞いたことないな。」
「そうですか。」
すると彼は真剣そうに次々に質問してきた。
「その人の特徴は?」
「えっと、昼を怖がってて料理が上手で
しっかりした女の子です。」
「小さい頃の特徴は?気質とか。どんな子だったかわかる?」
「黄色のネグリジェを着て女の人と暮らしていたと思います。お転婆だったみたいです。」
「元気に過ごしてた?」
「えっ?」
彼の最後の質問に僕が戸惑っていると、彼は何か考え込んで
「…。その子ひょっとしたら…。」
と、呟いた。
「なんですか?」
すると儚い笑顔を顔に浮かべて、彼はある話をしてくれた。
「私がここにきてまだ少ししかたっていなかった頃のことだよ。
街には今よりももっと大勢の人がいたんだ。だがある日を境に何人か
この街を出て行ってしまった。基本、僕たちは肉体を放棄し
審査を受けてここへの切符をもらう。だけど出ていった人たちは
審査を受けていなかったことが後になって分かったんだ。
どこかに連れ去られたのか逃げたのか定かではないが、その中に
審査を受けた父親と審査を受けなかった母親を持つ赤子がいた。
ここで結婚して子を持つことは別に珍しいことではないんだ。
その赤子の父親は妻と子を庇ったが結局、妻と子は街を去っていった。
その子とその母親なんじゃないかな、君が探しているマキと女の人は。」
「どうして、その赤子がマキだって思ったんですか?」
「その赤子はいつも黄色いネグリジェを着ていた。可愛らしい赤子だった。」
「その2人はどこへ?」
「わからない。でも、お前なら探し出せるさ。だって、お前も審査を受けてないだろう?」
「…。」
「別に、責めたりしないよ。大丈夫さ。そういう手違いはしょっちゅう起こる。ここにいようがどこにいようが
お前を責めたりする人なんていないと思うな。」
そう言ってその人は僕の頭を優しく撫でてくれた。
「大丈夫だよ。辛かったんだろう。お前は優しい子だね。」
僕は涙が溢れそうなのを必死に堪えていた。
それから僕は三日間その人の家に泊めさせてもらい情報を集めた。
やはり、ここに住んでいた夫婦の子供という話が圧倒的に多く、
話をしてくれる人全員が
「元気にしてるといいな。」
と懐かしむように微笑んだ。
中には
「わたしゃ、抱いたんだよ。あの子を、この腕で。
黄色いネグリジェがとっても似合うそれはそれは可愛い子でね。
そうかい、そうかい。料理好きのしっかりした子になったかい。
嬉しいねええ。」
と涙を流す人もいた。
この街の人たちはあたたかい。
ずっと前にルールを破り、この街を去っていった人をこんなにも
まだ、愛しているなんて。
そして3日後、僕はこの街を離れて隣の大都市に急いだ。
この泉の世界で最も大きい街らしい。
足もあの人のおかげて回復し何故か速くなっている。
「不思議だ。」
どこにいっても人々はあたたかく、道中雨が降った時は
一晩親切に泊めてもらった。
そしてたどり着いた大都市はビル群が立ち並ぶ街だった。
街のゲートをくぐると
「ピーっ!!」
ブザーが鳴り響いた。
「君、審査を通過していないな?」
「はい。」
僕は大人しくうなずいた。
「こちらに来てもらう。」
続編 「烏の巣」外伝
Renn weg:逃げろ へ続く。