【1日1曲紹介】ド頭から突き刺さる普遍的な比喩表現(いまは僕の目を見て/Base Ball Bear)

スリーピースになったベボベが「秋」をテーマに作った2nd EP「Grape」に収録されている1曲。

何よりこの曲は冒頭の歌詞がメチャクチャなパンチライン。

「言葉は穴のあいた軽い砂袋さ 君まで届ける前にかなりこぼれてしまう」

自分はこの1部分を聞いただけで、小出祐介天才…って唸ってしまった。

一聴するとシンプルで爽やかなギターロックで、歌詞もラブソングにも受け取れるんですが、この曲は小出が「コミュニケーションの曲」と語っているように恋愛以外にも言える普遍的なことを歌っています。

サビはもう少し具体的にこの1文を説明していて、「本当に思っていることは多分うまく伝えられないけど聞いてほしい」ということを歌っているけど、この曲のテーマをド頭だけで説明できてしまっている。

多分音楽の歌詞のことでもあるのかなと思っていて、楽曲の歌詞で本当に伝えたいことは、伝えきれてないけど、とりあえず曲聞けよ!っていうメッセージも含んでいるだろうなと解釈してます。

またちゃんと滅茶苦茶「秋」なんですよね。

「フリーハンドで飛行機雲が秋空を割ってく」

「焼却炉 昇る煙が 訳もなく寂しい」

かなり好きなフレーズですが、この2文がすごく季語として効いてる。

そういうテーマとはいえ、これまで「夏!」「檸檬!」というイメージが強いベボベが初めて「秋!」「Grape!」という曲を作っているのに、歌詞の妙と曲のアレンジによるどこか切ない雰囲気を作り出せているのが素直にすごいなと。

曲で言うと下北系ギターロックを3人でやってみようとしたとインタビューでは言ってましたが、まさにそうなっていて、ベボベで言えばわかりやすく近いジャンルであるものとして「short hair」があるが、ここからリードギターが1つ減っているようには全然聞こえない。

3人でそういう風に聞かそうとする工夫がされていて、間奏が盛り上がるポイントではドラムが常にシンバルを鳴らしていて、ギターが足りなく感じる部分をかなりカバーしてるのがよく聞くとわかるんですよね。

3人になってからの他の楽曲も強めのディレイを掛けて、残響を残すことでカバーしていたり、逆にカバーしないことを特徴としていたりと、聞いていて色々な角度からの発見ができて楽しいです。

スリーピースのバンドは他にも聞いてるけど、音源の時点でここまでこだわって音を絞る、いるメンバーの楽器の音しか重ねないというパターンはあまり聞いてこなかったにもかかわらず、元々4人だったバンドがこうなるんだ。

その時々のモードで最良のものを目指すベボベだからこそ、色々なものを見せてくれるし、だからファンをやめられないんです。

次の新作まで楽しみに生きますね。

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