倫理政経ポイント解説(政経②)
こんにちは。今回は日本国憲法と人権保障について解説していきます。
憲法については細かい歴史はありますが、とりあえず日本国憲法と大日本帝国憲法の比較を抑えましょう。
大日本帝国憲法
憲法の特質 皇室典範とともに最高法規、欽定憲法※1
主権 天皇
天皇 神聖不可侵・国家元首・最高統治者
戦争・軍隊 天皇が統帥権を持ち、国民は兵役の義務有り
国民の権利 自由権的基本権のみ※2
国会 天皇の協賛機関、二院制(衆議院と貴族院):両院対等
内閣 条文に規定なし、国務各大臣が天皇を輔弼
裁判所 天皇の名による裁判
地方自治 規定なし
憲法改正 天皇が発議、帝国議会が議決
日本国憲法
憲法の特質 最高法規、民定憲法
主権 国民
天皇 象徴、国事行為のみを行う
戦争・軍隊 平和主義
国民の権利 社会権的基本権(基本的人権)まで保証
国会 唯一の立法機関、二院制(衆議院と参議院)
内閣 行政の主体
裁判所 司法権の独立
地方自治 地方自治の本旨※3を保証
憲法改正 国会が発議、国民投票で決める
※1君主である天皇が国民に授ける憲法
※2人権は法律の範囲内で認められていた(法律の留保)
※3地方政治・行政は住民の意思に基づくとする「住民自治」と地方政治・行政は国から独立した団体に委ねられ、団体の意思と責任で行われるとする「団体自治」から成る。
※日本国憲法は硬性憲法(↔軟性憲法)である。
日本国憲法9条に関する裁判
(専門家じゃないので9条に関する細かい話はしません)
ポイントだけ解説
砂川事件
最高裁は統治行為論によって判断を回避
争点:①在日米軍が第9条の戦力に当たるか
②裁判所が条約などの違憲審査をできるかどうか
恵庭事件
被告人は無罪
争点:自衛隊法121条は合憲か
長沼ナイキ事件
原告敗訴
争点:自衛隊の基地の設置が保安林を解除する「公益上の利益の理由」になるか。
百里基地訴訟
原告勝訴
争点:自衛隊は憲法違反かどうか
自衛隊イラク派遣違憲訴訟
原告敗訴
争点:①イラク復興支援特別法は違憲か
②自衛隊のイラク派遣は憲法9条に違反するか
③イラク派遣は平和的生存権を侵害しているかどうか
日本の防衛政策
自衛隊は文民である内閣総理大臣が最高指揮権をもつこと
→文民統制(シビリアン・コントロール)
内閣には国防に関する機関として国家安全保障会議(日本版NSC)がある
政府は核兵器について非核三原則を打ち出し、1976年に核兵器拡散防止条約(NPT)に批准。
また、1967年からは武器輸出三原則のもとで武器の輸出を厳しく取り締まってきた(武器輸出は原則禁止)
しかし、2014年の防衛装備移転三原則によって武器の輸出は原則容認となった。
日米安全保障条約
1951年日米安全保障条約締結
1960年新安保条約に改定
同時に日米地位協定を締結※1
※1日米地位協定では在日米軍の駐留費用は原則アメリカが負担することになっているが、1970年以降その費用の一部を自主的に肩代わりする「思いやり予算」が定着。
その後日米安保体制は再定義され、日米安全保障共同宣言(1966)が出された。
1997年・1999年ガイドライン改定
その後
武力攻撃事態法など有事関連3法(2003)
国民保護法など有事関連7法 (2004)
などが成立。
ミサイル防衛(MD)に関する協力も進展。
2015年ガイドライン再改定、新しい安全保障関連法
PKO
1992年PKO協力法の成立
派遣先
カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、ハイチ、南スーダン
人権関連の条約or法律
アイヌ文化振興法(1997)
アイヌ新法(2019)
女子差別撤廃条約(1979採択、1981発効、日本は1985批准)
男女雇用機会均等法(1985)
男女共同参画社会基本法(1999)
DV防止法(2001)
障害者基本法(1970)
※ポジティブ・アクション(積極的改善措置)
例えば女性の割合の少ない会社が優先して女性を採用すること。
人権
私人間における人権保障
憲法の規定が直接
①自由権(国家からの自由)
●精神の自由
思想・良心の自由(第19条)、信教の自由(第20条)※、学問の自由(第23条)、表現の自由,検閲の自由,通信の秘密(第21条)
※政教分離の原則
●人身の自由
奴隷的拘束及び苦役からの自由(第18条)、法定手続きの保証(第31条)、現行犯以外の逮捕・住居侵入・捜査・押収には裁判官による令状を必要とする(第33条・第35条)、抑留や拘禁の場合には理由を知らされる(第34条)、拷問や残虐な刑罰の禁止(第36条)刑事被告人には弁護人依頼権(第34条・第37条3項)が与えられ、黙秘権(第38条1項)、公開裁判を受ける権利(第37条1項)唯一の証拠が自白である場合は有罪とされない(第38条3項)有罪が確定するまでは推定無罪、事後に制定された法律で処罰されない(遡及処罰の禁止)、判決の確定した事件について再度問うことを禁止(一事不再議の原則)
※死刑制度の是非
国連では国際人権規約B規約の第二選択議定書(死刑廃止条約)などが出されている(法的拘束力を持つ)
●経済の自由※公共の福祉による制限を強く受ける(二重の基準)
居住・移転及び職業選択の自由(第22条1項)、財産権の保障(第29条1項)
②社会権(社会権的基本権)(国家による自由)
●生存権(第25条)
具体的な内容は国の裁量とするプログラム規定説
国に法的義務が生じるとする抽象的権利説
●教育を受ける権利(第26条)
義務教育の無償など
●労働基本権
勤労権(第27条)
労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)(第28条)
●請求権
請願権(第16条)
損害賠償請求権(第17条)
損害補償請求権(第29条)
裁判を受ける権利(第32条)
刑事補償請求権(第40条)
●参政権
選挙権(第15条)※細かい話はまた今度
最高裁判所裁判官の国民審査(第79条)
特別法の住民投票(第95条)
憲法改正の国民投票(第96条)
③新しい人権
●環境権
環境影響評価法(環境アセスメント法)(1997)
●知る権利
情報公開法(1999)
→「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を要請する権利を保障」
※国家機密漏洩を防ぐために特定秘密保護法(2013)が成立
●プライバシーの権利
住民基本台帳ネットワーク(2002)
個人情報保護関連法(2003)
※肖像権や忘れられる権利も大事
●アクセス権
マス・メディアに対して反論、意見する権利
●自己決定権
インフォームド・コンセントなど
国民の義務と公共の福祉
●国民の義務
保護する子女に普通教育を受けさせる義務(第26条)
勤労の義務(第27条)
納税の義務(第30条)
●公共の福祉
自分の権利のために他人の権利を侵害してはならない
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