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高速化とグローバル化を見据えたPolygonの利活用
JCBA様主催のオンライン勉強会にて弊社取締役CTOの田原が登壇した際の内容を記事にまとめました。
はじめに
今回はPolygonチェーンにつきまして解説します。本題に入る前に本記事がどの様なポイントで解説されているかご紹介します。
他のチェーンと比較したPolygonの強み
他のL1チェーン、L2チェーンと何が違うのか
技術力や将来性
事業者視点での「Polygonを使う理由」
事業者視点でなぜ他の新興チェーンと別にPolygonを使うのか
Polygonをどの様に活用すれば良いか
Polygonについての概要
PolygonはEthereumのレイヤー2ネットワークと同様、Ethereumの処理能力向上を支えるネットワークですが、他のレイヤー2とは違い「スケーリングソリューション」として定義しています。
そしてPolygonには主に3つの強みがあると考えます。
Ethereumとの親和性と運用実績
独自に発達したエコシステム
ゼロ知識証明を用いたZk-Rollupによるセキュリティの強化
Ethereumとの親和性と運用実績
PolygonはEVMを使っているため、Ethereumと同じコントラクトを流用できます。大量のトランザクションを日々捌いているため信頼性が高いと言えます。
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運用実績としましては2022年にPolygonコントラクトを使用するユーザーは23万4000人と、前年比637%増となりました。形成されたスマートコントラクトは77万8000人と前年比152%増、処理済みのはトランザクションは9億6000万となり、アドレス数は2億100万と前年比152%増となりました。
独自に発達したエコシステム
Polygonの独自性はまずEthereumに近いエコシステムを形成しつつ、必要な機能を高度に備えているところにあります。 具体的にPolygonブロックチェーン上で開発されたQuickSwapというDEXがありつつ、UniswapやCurve financeなどのDEXでも使うことができます。更にはNFTマーケットプレイスのOpenSeaやレンディングサービスのAaveでも使うことができます。
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そしてPolygonのエコシステムはWeb3業界にはとどまりません。 AdidasやNIKEなどのスポーツ業界やPRADAなどのファッション業界、スターバックスなどの飲食業界からMetaやRedditなどのSNS業界まで様々な業界で使われています。
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Ethereumエコシステムへの依存度が高い他のレイヤー2cネットワークに比べると、非常に独自性の高いエコシステムであると言えます。
ゼロ知識証明を用いたZk-Rollupによるセキュリティの強化
PolygonにはPolygonと互換性のあるプライベートブロックチェーンが立ち上げ可能なSDKであるPolygon Edgeと、こちらを同じ技術を使いながらもより簡単に独自チェーンを立ち上げられるPolygon supernetがあります。
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こちらまででも高い技術力が伺えるPolygonですが、現在1つ技術的な課題があります。Ethereumに比較するとまだ安全性に劣るということです。こちらはユーザービリティを維持したままEthereumのセキュリティを引き継ぎ、安全性をEthereumレベルまで引き上げる必要があります。 そして答えは「zk-rollup」です。
Zk-rollup
Zk-rollupとは、ゼロ知識証明というメカニズムを利用したトランザクションを集約してオフチェーンで処理し、生成した暗号証明など一部の情報のみを親ブロックチェーンに保存することで親チェーンのセキュリティを引き継ぐ技術です。 通常のゼロ知識証明を見ながら解説します。
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こちらの図の様に、パスワードを教えていなくてもProofが正しければ相手がログインできるかどうか判定できます
こちらのゼロ知識証明を踏まえた上で、zk-rollupの仕組みを見てみましょう。
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このようになります。 しかしこちらは技術的な難易度が非常に高いことや計算量が多いことが障壁となっています。特にEVM互換にすることが非常に難易度が高いことで知られています。
そしてPolygonは積極的にzk-rollupに投資を行いながら開発を進行しています。10億ドルの資金を用意し2社のスタートアップを買収しました。 1社はPolygon zkEVMの開発のため、Hermez Networkという2021年時点でzkを利用したネットワークを開発していた会社です。 もう1社はPolygon Zeroのため、Mirというゼロ知識証明の技術開発を行っていた会社です。
たった数年でテストネット公開まで漕ぎ着けるなど投資と開発をスピーディに実行しています
TuringumとPolygon
改めてTuringumについて簡単にご紹介します。 Turingumではブロックチェーン・Web3に特化したプロジェクト支援サービスを提供しています。
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弊社はDeFiの知見をうまく活用し、トークノミクスの設計と開発を得意としています。
弊社の成り立ちや目標についてはこちらの記事をご覧ください。 また、弊社の最強リサーチャーによる、ステーブルコインから学ぶWeb3システム設計について書いた記事がおすすめですので併せてご覧くださいませ。
そんな弊社がチェーンを採用する際に何を見るかをご解説します。
1つ目はチェーンの安定性です。 実際には大量のTxを捌けないチェーンがほとんどな現状です。そのため我々は何よりも運用実績を重視します。
2つ目はユーザビリティの高さです。 手数料の安さや処理の高速さ、様々なところで利用されているかで判断します。
3つ目は技術的な学習コストです。特にEVMへの互換性が重要になってきます。
4つ目は将来的な発展可能性です。 チームの活動や資金状況を見ながら将来的なビジョンが明確かどうかを確認します。
5つ目はDEX等における資産流動性です。 トークンやNFTが利用しやすく価値が上がりやすくなります。
こちらはEthereumと主要L2チェーンを上記観点で比較した表になります。
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実行レイヤーとしてのPolygon
こちらまでを踏まえまして、Polygonを利用するべきプロジェクトと利用すべきではないプロジェクトをまとめます。
Polygonを利用するべきプロジェクト
ユーザーのトランザクションの頻度が多い or 処理が大きい
あまりリテラシーの高くないユーザーも対象顧客である
長期的運用も視野に入っている
特定のエンティティからは独立して事業運営したい └BSCや運営の力が強すぎるチェーンは自由な運営が阻害されてしまう
グローバルにユーザーを集めたい
Polygonを利用すべきでないでないプロジェクト
ユーザーは大きな金額を運用する
大きな金額を運用する場合はEthereumがおすすめ
資産価値を大きく伸ばしたいアセットがあまりない
DEXの流動性などDeFi周りはEthereumやBSCに軍配があがる
一方で手数料の安さやNFT周りの充実度 ・将来性などはPolygon
資産価値を伸ばしたいアセットはEthereumで運用するなどマルチチェーン化もあり
まとめ
今回はPolygonの強みとして
Ethereumとの親和性と運用実績
独自に発達したエコシステム
ゼロ知識証明を用いたZk-Rollupによるセキュリティの強化
の3つをご紹介しました。
Web3ビジネスにおいてチェーンの採択は非常に大事な要素となっていきますが、チェーンの採択は今回のPolygonを見てきた様に様々な視点から判断する必要があります。
弊社では実績豊富なプロフェッショナル達が手厚くサポートしながら皆様のビジネスに合ったWeb3の構築を行うことができます。 Web3ビジネスをご検討中の方や、現在Web3に関してお困りの方は、是非お気軽に弊社へご相談ください!