パウル・クレーの旋律
虹色のキャンドルを灯した。
2~3色のグラデーションのキャンドルは迎えた事はあるけれど、多色は初めてだ。
個人的に単色が好きである。着る服も黒や灰色や紺が多かった。あまり目立つのが嫌いなので明るい色は着たことは無い。
絵を描いているが自分は黒子だと思っている。
思い浮かぶそテーマやビジョンは自分独自ではなく、自分と同じイメージを抱くのは何人もいてその中で表現できた者だけがそのイメージを表せる。
小説を書いていた頃に感じた挫折感の一つである。
自分は主役ではなく、主役は白い紙に描かれた絵で私はそれを形にした裏方だといつも思っている。
なので明るい色はあまり好きではない。
なのに最近は明るい色に目が止まる。制作でも水彩で4~5色を使う事が多くなった。でも固定的に使うようになったわけではない。
思いついたイメージによる。
なので、虹色のキャンドルを迎えたのも何か意味があるのではないのかと感じている。
灯した最初のイメージは「パウル・クレー」だった。
パウル・クレー(1879-1940)は抽象的な絵を描く画家である。美術史を習っていないので詳しい事は分からないけれど画集は持っている。色彩豊かだけれども色鮮やかだけではない。なにか・・そう楽譜を見ているイメージがする。色と線で描かれたものであるけれど絵の具の彩度のせいだろうか・・
一枚の中に抑揚があり、音階があり、動いている様にも感じる。
少しググッてみたら「色彩と線も魔術師」で音楽性が絵画作品に反映されているとの事である。
なるほど、納得がいく。
火を点けるのは精神的に疲れている事が多い。
焦燥感やどうしようもない孤独感に苛まれると何も聴きたくはない。
曲の歌詞や音や歌い手の声で感情に火がついてしまう。
しかし何か気分を変えないと、何かでなだめないと寝ることが出来ない。
マッチを擦って火を灯す。
1/fの揺らぎとパウル・クレーの印象で無音なのに心が落ち着くのである。
低く高く
暗く明るい
揺らぐ炎に部屋が揺れる
溶ける色にほどける色彩
不規則な配色に
一色の感情に色とりどりの音が
溶けて混ざり
解けて消える