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【やさしい】hMG-hCG療法と低用量漸増法【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
今回は注射での排卵誘発の方法についてお話します。
注射での排卵誘発の方法には、
1.hMG-hCG療法
2.低用量漸増法
の2種類があります。
hMG-hCG療法
hMG-hCG療法は、高用量のhMG製剤を連日投与し、卵胞が発育したらhCG製剤を投与して排卵させる方法です。hMG製剤は75単位から150単位を連日投与します。
hMG製剤は血中半減期(血液中から薬剤がなくなるまでの時間、つまり薬剤の代謝速度を表します)が40時間を超えており、連日投与すると薬剤の血中濃度は徐々に上昇していきます。薬剤の血中濃度が高い状態が持続すると、排卵誘発効果の成功率は高くなりますが卵胞が複数発育しやすくなります。
実際、hMG-hCG療法の排卵誘発成功率は高いですが、多胎率(双子以上を妊娠する可能性)も約20%と高率です。また複数排卵が起こった場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や、正所性異所性同時妊娠(子宮内外同時妊娠)が発生することもあります。
排卵誘発の基本的な考え方は、リスクを避けて誘発をする、ということです。日本産婦人科診療ガイドラインでも、16mm以上の卵胞が4個以上存在した場合、治療周期をキャンセルするよう推奨されています。ただしこれも排卵個数が2~3個なら問題はないという意味合いではなく、なるべく単一排卵を目指すべきだと思います。
低用量漸増法
低用量漸増法はrFSH製剤(recombinant;遺伝子組み換え製剤)を使用することが多いです。rFSH製剤であるゴナールは、血中半減期が150単位で28時間程度と比較的短く、hMG製剤と比較すると蓄積性が高くありません。
これを少量(50単位~)から開始し、1週間くらい連日投与します。そこで卵胞の発育がなければ、62.5単位や75単位へ増量し連日投与します。1週間くらい投与して卵胞の発育がなければ、再度増量します。これを卵胞の発育があるまで繰り返します。
低用量漸増法ではhMG-hCG療法と比較して、多胎妊娠、OHSSの発生率は低下しますが、注射の期間が長くなり受診回数も多くなってしまうことが多く、コスト面含めてわりと負担は大きい治療です。
しかし、hMG-hCG療法の多胎は大きな問題となります。特に品胎(三つ子)以上の多胎妊娠の発生数については、体外受精・胚移植よりも一般不妊治療(体外受精・胚移植以外の治療法)の方が多くなっています。体外受精・胚移植の場合は3個以上の胚を移植しなければ、品胎以上になることはそう多くありません。
せっかく妊娠しても、超ハイリスクの多胎妊娠となってしまうと、母児ともに健康に出産できない可能性もありますので、hMG-hCG療法より低用量漸増法が推奨されています。
私もhMG製剤を一般不妊治療で使用するときは、連日投与は行わず、薬剤の蓄積が起こりにくいよう間隔を空けて投与を行います。それでも発育が起こらない場合は、低用量漸増法を使用しています。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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