【やさしい】自然周期移植とホルモン補充周期移植、どっちにする?【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
今回は自然周期移植とホルモン補充周期移植を比較してお話します。
妊娠率
自然周期移植とホルモン補充周期の妊娠率は同等です。特に差はありません。
スケジュール
自然周期は排卵の5日後に胚移植を行います。タイミングをとるときのように、排卵日を特定するために何度か受診する必要があります。補助的に排卵誘発を行うこともありますが、特に月経周期が長い方や周期のバラつきが大きい方は受診回数が多くなりやすいです。排卵がかなり起こりにくい方は、移植ができないこともあります。
また、排卵日は完全にはコントロールできません。せいぜい数日ズラすくらいです。このため自然周期移植では、移植日をスケジュールに合わせて細かく調整することは難しいです。
総じて、自然周期はスケジュールが決まりにくく、調節もあまりできず、受診回数も多くなる傾向があります。
ホルモン補充周期ではプロゲステロン剤開始日の5日後に移植を行います。まず月経中からエストロゲン製剤を開始しますが、月経の14日目あたりで内膜が十分肥厚していることと排卵していないことが確認できれば、移植日の5日前から逆算してプロゲステロン製剤を開始します。排卵の心配はほとんどないため、細かくチェックする必要はありません。さらにプロゲステロン開始日を起点とするため、移植日の変更が容易です。
このためホルモン補充周期では、スケジュールが決まりやすく、調節が簡単で、受診回数は少なくなる傾向があります。
投薬の期間
自然周期でもホルモン補充を実施しますが、排卵日から妊娠成立のあたり(4~5週くらい)までの約2週間です。自然周期では排卵が起こり、形成された黄体からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されますので、これが十分分泌されていれば補充は終了しても問題ありません。
ホルモン補充周期では、卵胞の発育も排卵も通常起こりません。内膜を分厚くするために月経中からエストロゲン製剤を使用する必要がありますし、排卵を再現するためにプロゲステロン製剤を使用する必要があります。さらに妊娠が成立しても、妊娠8週くらいにエストロゲンとプロゲステロンが胎盤から分泌されるようになって薬剤なしでも妊娠が維持できるようになるまで、補充を継続しないといけません。薬剤は約8週間使用する必要があります。
プロゲステロン膣座薬の使用がかなりストレスになる方が多いようで、この理由でホルモン補充を避ける方もいらっしゃいます。
妊娠合併症
ホルモン補充周期移植では自然周期移植と比較して、妊娠高血圧症候群(Hypertensive Disorders of Pregnancy;HDP)や癒着胎盤、産後出血などが増加することが報告されています。いずれも重症化することで命に関わる可能性のある、割と怖い合併症です。これらは確率を下げられるならそれに越したことはありません。
これまでにお話した特徴は、これらの妊娠合併症に比べると重要度は高くないと思います。
私は、この妊娠合併症の増加を重視して、かなり排卵が起こりづらいかたを除き、凍結融解胚移植の90%以上を自然周期移植で行っています。ホルモン補充周期の方が正直こちらとしても簡単ですし、自然周期は少しスケジュールが合わせづらいというデメリットはありますが、少しでもリスクを下げて母児ともに健康に出産を行っていただきたいと思い自然周期移植を推奨しています。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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