【つれづれ】エコーを入れて1秒【よもやま話】
あなた真剣な目をしたから
そこから何も言えなくなり…
ません。
たなかゆうすけです。
今回は、経腟超音波を入れてすぐにわかることについてお話します。
1秒は言い過ぎかも知れませんが、本当にすぐわかっちゃうことがあるんですね。
それは、
・卵胞(卵子が格納されている袋)が発育しているかどうか
・排卵しているかどうか
ということです。
ではお話していきましょう。
まずは矢状断
エコーを入れてまず最初に、矢状断と呼ばれる断面を確認します。体を正面から縦に真っ二つにする断面が矢状断です。素直にエコーを入れたときに描出されるビューが矢状断と思っていただいたらOKです。
エコーのプローブ(棒状の機械です)の先端からは、扇状に超音波のビームが出ています。この扇の向きを矢状断に合わせると、子宮の入り口(頸管)から子宮の本体(子宮体部)が一直線に描出されます。
これをまずはきれいに描出します。体部しか写っていないとか、ちゃんと矢状断になっていないとかはNGです。この辺りはこだわりとか美的センスが問われるところです。たった一枚のエコー写真ですが、きれいな写真を撮れるかどうかでも、わかることは変わってきます。
注目すべきポイントは3点
ここまでで0.3秒くらいでしょうか。
では矢状断をしっかり描出できたら注目すべきポイントは、次の3つです。
・内膜の厚み、性状
・頸管粘液の有無
・腹水の有無
これらで、卵胞が発育しているかどうか、排卵しているかどうかが推定できてしまいます。
内膜の厚み、性状
内膜は、卵胞の発育に合わせて分泌されるエストロゲンや、排卵すると分泌されるプロゲステロンといったホルモンによって変化します。
卵胞がまだ発育しておらず、エストロゲンが十分に分泌されていなければ、薄い内膜しか観察できません。
卵胞が発育していれば、十分に分泌されたエストロゲンの作用で内膜は分厚くなり、木の葉のように見えます。この木の葉状の内膜パターンをleaf patternと言い、排卵していない内膜の特徴です。
排卵が起こるとプロゲステロンが分泌されますが、この作用で脱落膜化という反応が起こり、内膜が着床できるように変化します。この変化はエコーでも確認でき、排卵後の内膜ではleaf patternが消失し一様に白っぽく変化します。
このように内膜の変化一つでも、卵胞の発育や排卵の有無を推定することができます。
頸管粘液の有無
頸管粘液の量も、エストロゲンの影響を受けます。
排卵に向かってエストロゲンが上昇すると頸管粘液の量は増加します。卵胞が発育する前には頸管粘液が増加していないため、エコーでは頸管はぴったり隙間なく見えます。
これに対し卵胞が発育していると頸管粘液の増加に伴い、エコーでは頸管に隙間が見られるようになります。
そうして排卵が起こるとエストロゲンはピークから減少するため、頸管粘液も減少します。このため、エコーでは頸管はまたぴったり隙間なく見えることが多いです
このような頸管粘液の変化に注目すると、卵胞の発育や排卵の有無を推定することができます。
腹水の有無
腹水はその名のとおり、お腹の中の水です。
排卵が起こる際には卵巣の表面がはじけて出血します。エコーでは子宮の裏側、背中側のダグラス窩と呼ばれる部分に黒い部分が出現することで確認できます。
このダグラス窩の腹水の有無では、卵胞の発育は推定できませんが、排卵の有無は推定できます。内膜の状態も併せて判断することが多いです。
ここまで1秒
慣れたらここまでの確認は約1秒で終了します。
入れた瞬間に『あー、これは卵胞が発育しているなあ』というように感覚でわかるようになります。
コンプライアンス的にあまり画像が出せないので想像しにくいとは思いますが、ここまで読み進めるのにどれくらい時間がかかりましたか?3分くらい?
熟練してくると、これを1秒くらいで判断しているんですね。
終わりに
エコーは生殖医にとって基本中の基本の技術です。
こうした画像1枚でも、いろんな情報がつまっています。
たかが画像1枚と疎かにせず、基本に忠実に行うことで、よりよい診療を行えるよう心がけています。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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