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【やさしい】採血値の読み方【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

今日は採血値の読み方です。

採血は主に、

1.卵胞の発育や排卵の確認を行う
2.排卵の時期を予測する

の2つの目的で行います。


卵胞の発育と排卵の確認

卵胞の発育はE2(エストロゲン)で確認ができます。E2は卵胞発育に伴って上昇するホルモンで、月経中はだいたい50くらいの値です。それを大きく超えた値が出ていれば、卵胞が発育しているだろうと判断します。排卵前には300近くまで上昇します。

基本的には卵胞の発育はエコーで確認するものですので、ルーチンには採血検査は行いません。エコーでどうしても卵巣が確認できないけれど内膜の状態などから卵胞の発育が予想される場合には、エストロゲン採血を行うことがあります。

また、見えているものが卵胞ではない可能性がある場合にもエストロゲン採血を行うことがあります。月経中に卵胞発育がない場合には、その後に大きな嚢胞(袋)状のエコー像が卵巣に確認できれば、卵胞と考えて差し支えありません。月経中に卵胞発育のないことを確認していない場合には(特に月経周期の予想排卵日とズレている場合)、見えているものが卵胞なのか採血をして確かめることもあります。

しかし、遺残卵胞や黄体嚢胞でもエストロゲン値が上昇することがあるため、それだけでは卵胞だと確認することはできません。結局経時変化を見て排卵したことを確認することが多く、それさえ確認できれば卵胞であったことはわかるため、採血を行うことはそう多くありません。

基本的には、卵巣の確認がかなり難しい場合や、判断のためにどうしてもその日に結果が必要な場合のみ採血検査を行います。採血を行う場合にも、エコーの情報から、どれくらいの値が出るか予想してから、採血を行います。エコーから得られた情報の裏付けを採血でとるようなイメージです。値によってその後のアクションを変えるときには採血を行いますが、アクションが変わらない場合には採血は行いません。


基本はエストロゲンとプロゲステロンをセットで採血する

採血の時には、E2とP4(プロゲステロン)をセットで採血します。E2が高いだけだと、排卵前なのか排卵後なのかは正確には判断できません。

上の図は月経周期内でのE2、P4の推移を表しています。これをもっと簡単にすると、以下の図になります。

だいたいの基準としては、E2>100ならある程度卵胞発育あり。P<0.5なら未排卵。P>3.0なら排卵後です。ほんとにだいたいですが。

これを見たらわかるとおり、卵胞発育の途中から排卵後までE2は高値となりますので、P4の値を見ないと状況はわかりません。ですので、基本はセットで採血します。


排卵の時期の予測

排卵時期の予測は、LH(黄体化ホルモン)で行います。卵胞がある程度発育してE2が高い状態が一定時間持続すると、排卵のスイッチが入りLHが急激に分泌されはじめます。このLHの急激な分泌をLHサージと言います。LHサージが開始すると、徐々にP4も上昇し始めます。排卵時期を予想する場合は、LHとP4をセットで採血します。


LHサージが開始されてから、一番高い状態に到達するのに約14時間かかります。そして一番高い状態が約14時間持続し、約20時間かけて低下してもとの値へ戻ります。LHサージの持続時間は約48時間とされています。そして、LHサージ開始からは約36時間で排卵が起こります。

ここから、排卵の時点ではまだLHはある程度高い値がでるはずです。P4がある程度上昇しており、エコーで排卵の痕跡が確認できる場合でも、LHがまだある程度高い値であれば、12時間(48時間マイナス36時間)は経過していないことが予想できます。逆に、LHが通常の値で、P4がある程度上昇しており、エコーで排卵の痕跡が確認できる場合は、排卵から約12時間『は』経過していることが予想されます。それ以前のいつ排卵したかはわかりません。

また、LHが低い状態から排卵までは約36時間『は』かかるということになりますが、36時間後以降のどこで排卵が起こるかはわかりません。

LHが上昇しているのは48時間のみですから、LHの上昇の仕方で判断できるのはその間の状況のみであって、その範囲外のことはわかりません。LHの上昇がないときに、いつ排卵するのか、いつ排卵したのかを採血値のみで正確に予想することはできません。LH採血をする場合は、ここに十分注意しておきます。

排卵時期を予測したいのは、基本的に自然周期移植の場合です。それ以外ではあまり予測のためにLH採血をすることはありません。


FSH(卵胞刺激ホルモン)は?

FSHは卵胞発育や排卵時期の指標にはなりませんので、ほとんど採血しません。採卵周期でごくまれに測ることはありますが、ルーチンでは必要ありません。以上。



今日は採血値の読み方をお話しました。ホルモン値はだいたいこんな感じで見ています。ちゃんと目的があってやっているんだという程度に思ってもらえればよいと思います。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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