ナンプラーのかほり#6 タイポリス
どうも、バンナー星人です。
先日のことですが、わたしが勤めている学校からほど近いホイクアン警察がちょっとした話題になっていました。タイでは違法とされる電子たばこを所持していた台湾人女優に対して、見逃す代わりとしての賄賂を要求した件を追求され、6人の警官が逮捕されたのです。
実際、この電子たばこに関しては、日本人が多く生息する場所を狙ってこっそり監視し、獲物がアイコスを取り出し一服ついた時点でニヤニヤ近づいてくるというそのやり口が、以前から問題になっていました。まあやり方だけいえば日本の道路交通法違反取り締まりと変わりないのですが、その取り締まりが警察官のおこづかいである賄賂と直結しているというのが、大きな違いと言えるでしょう。
道路交通法違反で思い出しましたが、タイ人が運転する車に同乗していた時のことです。詳細は覚えていませんが彼が何か違反をしたのか、警官に止められてしまいました。
「この紙を持って裁判所に出頭し、罰金を払ってください」
という警察官に対し、
「仕事で忙しくて行けそうにないんですが、なんとかなりませんか」
という彼。と、その警察官はニヤニヤと2本指を立ててみせました。
一瞬ピースサイン?と思ったのですが、運転手からすっと200バーツを受け取った警察官は、「運転にお気をつけて」とばかりに我々を笑顔で解放してくれたのでした。
まあ、これぐらいの袖の下なら、「ウィンウィン」とも言えるわけですが、調子に乗りすぎると、冒頭の警察官のように逮捕されることもあるようで、特にSNSが発達したこの世の中、相手も「得をした」と思えるぐらいの匙加減で留めておくテクニックが、警察官にも求められるようになったということでしょう。
実は、タイに来た当初、タイ人の友人から「警察官には気をつけるように」と言われたことがあります。なんでも道端で数人の警察官に囲まれて職質を受けている間に、その中の一人がこちらの鞄やポケットに麻薬を忍ばせ、犯罪をでっち上げることが横行していたようなのです。交通違反を見逃してもらうための200バーツなら、感謝のしようもありますが、身に覚えのない話で脅されてはたまったものではありません。
ちょうどその話を聞いた頃、勤めていた日本語学校で、裕福な女子高校生が多いクラスを担当していました。皆、我々日本人教師には手が出ないスタバのキャラメルフラペチーノなど飲みながら優雅に勉強していたわけですが、ある日の授業で、「お金持ち」と言うワードが出て来たことがありました。すると、一人の学生がいたずらっぽく、隣にすわっていた友達を指差したのです。
せっかくパスをもらったので、その指をさされた学生に、
「家族はお金持ちですか。」
と聞いてみました。まだタイ人の性格を掴みきれてなかった私は、その学生がてっきり否定するものだと思ったのですが、ちがいました。
「はい、お父さんは警察官ですからお金持ちです。」
と、しっかりとした日本語で説明してくれたのです。
医者ですから、弁護士ですから、ではなく、警察官ですから。
まあ、きっと警察官の中でも相当上の位の方だったのでしょうが、友人から
「警察官には気をつけろ」とアドバイスを受けたばかりということもあり、色々とよくない想像をしてしまったわけなのです。
「警察官の娘」といえば、現在勤めている学校でもこんな生徒がいました。その生徒は私の受け持ちではなかったのですが、私がいる職員室によく顔を出していたので、自然と一言二言話すようになっていました。
ある日、いつものように登校すると、職員室のタイ人教師たちがざわついていました。耳をそばだてていると、前日の放課後6時ぐらいに飛び降り自殺があったとのことでした。といっても、うちの生徒ではなく、学校と隣接しているビルから飛び降りた男性が、学校の敷地内、それも国旗掲揚ポールと釈迦仏像の間に落ちるという、タイホラー映画にでもでてきそうな衝撃的な最後を迎えたようなのです。
その日の昼休みのことです。件の生徒が職員室にやって来て、昨日、死体検分に来たのお父さんのチームなんだよ、とちょっと自慢げに話してくれました。「へええ、じゃあもちろん写真とか撮ったんだよね」と何気に聞いた僕に彼女はこんな驚くべきことを言ってきました。
「私、お父さんにファイルもらったから、先生にも見せてあげるね」
半信半疑で彼女にe-mailアドレスを教えると、それぐらいの機敏さで宿題も出せばいいのにねと、からかいたくなる速さで、「汁を流しながら地面に横たわる男性の写真」を送ってきてくれたのでした。何があって自殺されたかはわかりませんが、自分の無残な姿を写真に撮られ、どこの誰ともわからない外人にまでたらい回しにされると知っていたら、思いとどまってくれたのではないかな、などとその男性の虚ろな目を見て思ったことを覚えています。
その事件直後の2010年、政治的混乱によってセントラルワールドが放火された時も、「お父さんがブランド物のサングラスをたくさん持って帰って来てた」とそのまんま火事場泥棒じゃん、てことをニコニコと報告してくれてました。そのお父さんのモラルが当時の警察官の中でも特殊だったのか、はたまたみんなそんなもんだったのかは、今となってはわかりません。ただ、「警察官ですからお金持ちです」という言葉の裏には「警察官だといって法律を守るとは限りません」という事実が横たわっていることは間違い無いでしょう。
最後になりますが、タイの高校で使用されている日本語の教科書の中にこのような練習問題があるので紹介します。
「先生、これは日本のけいさつかんのこと?」
こんな嫌味が生徒の口からポロリと出てきてしまうタイポリスのトホホぶりもまた、褒められることではないとしても、タイのアメイジングな調味料の1つとなっていることは確かなのであります。
ではまた、次回のお話でお会いしましょう。
いいね!ボタンとフォローボタンが大好物ですので、ポチッとよろしくです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?