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ナンプラーのかほり#8  カラフル文化

どうも、バンナー星人です。

あれは2005年のこと。タイ人が日本を旅行するためには、まだビザが必要だった当時、友人を日本へ連れていったことがあります。ビザを取得するのも簡単ではなく、ホテルではなく私の家に泊めるにも、そのタイ人との友人関係を証明する写真の提出まで求められました。その頃はバーツに対して円も高かった上、タイ人の所得も今よりずっと安かったこともあり、日本はまだまだ旅行に行くには敷居の高い国だったわけです。

彼らの目に初めての日本はどのように映るのかは、私にとっても興味深いものでした。多分、自国では見られない、「交通ルールを守る車」や、「電車の時間の正確さ」はたまた「町の清潔」さなどに驚くのだろうな、などと予想していたのですが、彼らの口から出たのは、思いがけない言葉だったのです。

それは、大阪に到着した次の日、京都へ向かう電車に乗っている時のことでした。友人が私にこう聞いてきたのです。
「昨日から思ってたんだけど、誰か偉い人が亡くなったの?」
ポカンとしている私を見て、彼は質問をわかりやすく変えてくれました。
「なんで黒や灰色の服を着ている人が多いの?」
どうやら、暗い色に身を包んだ人たちを見て、喪に服していると勘違いしたようなのです。

しかし、これに関しては、バンコクに初めて来た日本人は全く逆の印象を受けるのかもしれません。いらっしゃったことのある方はご存知だと思うのですが、この街は、何につけても色使いが派手。蛍光色のタクシーを見ると「またバンコクにやって来たぜ」という実感がわくなんて声も聞かれたりします。明るい色を好むタイ人の服装とも相まってカラフルに染まった街並みに、ふと現れるお寺もこれまたキンキラキン。この街にそぐわない日本語をひとつ選べといえば、私は迷うことなく「わびさび」という言葉をチョイスすることでしょう。

数ある銀行もしっかり色分けがされており、バンコク銀行は青、アユタヤ銀行は黄色、サイアム商業銀行は紫、など、非常に分かりやすく、ATMも見つけやすいのであります。銀行名が思い出せない時も「黄色の銀行」で通じるというのも便利といえば便利ではあります。

本校の運動会も、赤、オレンジ、黄、緑、紫の5色でチーム分け。でも、なぜにその5色なのか。「赤があるならオレンジはいらんやん?」とか「赤と青を混ぜた紫はあるけど青はないんや」とかツッコミたくもなるのですが、多分その感覚を頑張って説明してもポカンとされるだけなのでしょう。

以前、日本の旅番組の中で、当時はまだ「オセロ」として活躍していた松嶋尚美氏が、ワットアルン(暁の寺)を訪れていました。彼女が、その仏塔に貼られたタイルに触れながら、「この斬新な色使いは日本にはないなぁ」と評していたことをなぜか鮮明に覚えているのですが、自国の色づかいのクセというのは、外に出てみてはじめて気づくものなのかもしれません。

話は変わりますが、今週末、十数年ともに働いてきた同僚の先生が結婚式を挙げることとなり、男運のない彼女を20代前半からみてきた私にとっても、とても嬉しいニュースであります。で、タイの結婚式といえば招待を受けるときに確認しておいた方がいいのが、「衣装のコンセプト」

日本と同じように考えて、とりあえずフォーマルだったらなんでもいいだろう、とスーツで出かけていくと完全に浮いてしまったりするので、注意が必要です。ちなみに今回の彼女の結婚式のコンセプトは、
「海辺でくつろいでいるような気軽な服装で、色は水色と黄色」。

先生も気取らず軽装でね、なんて言われましたが、「海辺でくつろいでいるような」というシチュエーションを設定されると、家にあるものですますというわけにもいかず、全く気軽ではないのです(笑)。

というわけで何週間も前から、他の先生たちと、「あーでもない、こーでもない」などと、当日着ていく服について話しているわけですが、言ってしまえば「どうでもいい」ことに「真剣に」頭を悩ましているのが、「仕事中」だったりするところもまた日本にはない「タイらしさ」ではないでしょうか。とにもかくにも彼女のこれからの幸せを願うためにも、私も精一杯のファッションで会場に駆けつけたいと思っています。

最後になりますが、カラーセラピーという言葉を持ち出すまでもなく、色には人の感情を揺るがすようなパワーが宿っています。タイという国に溢れているエネルギーに日々触れていると、これってもしかすると町中にあふれる色の力も大きいのではないのだろうか、と思ったりもするのです。

私も一時帰国して電車に乗ったりすると、黒・茶色・グレー・紺といった色目の多さに「日本に帰ってきたな」と実感することがあります。国力が落ちていると言われて久しい日本ですが、いっそのこと「明るい色」キャンペーンでもして、「元気になった気がする」ことから始めてみるのもいいのでは?などと、お節介なことを言いたくなったりもするのです。

ではまた次回のお話でお会いしましょう。

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