初めて会った日②(毒舌あざらし視点)
ツンちゃんが家に来てから僕の日常は大きく変わった。
ツンちゃんは甘えん坊で寂しがり屋さんだった。(今もだけど)
それまでの僕の一日と言えば、海月保育園に行って友達のゲスくまと沢山遊んで保育園から帰るとまたゲスくまと遊ぶかお家でゲームをしたり漫画を読んだりしてた。
だけど、ツンちゃんが来てからはツンちゃんの相手をする毎日になった。
ツンちゃんはパパやママとはぐれた寂しさからか、ずっと僕についてきた。
朝、僕よりも早く起きて「お兄ちゃん!起きて!起きて!」と僕を起こしてくる。
保育園に行く時も僕とツンちゃんはクラスが違うのに僕の教室に行こうとする。
保育園から帰ってテレビを見ようとしたら「やだやだ!僕と遊んでね!」とペチペチしてくる。
しまいには寝る時に僕の布団に潜り込んで一緒に寝ようとしてきた。
僕が「ツンちゃんの布団はあっち!」って言うとツンちゃんはヤダヤダと手足をパタパタし始める。今思えば短い手足でパタパタするなんて愛くるしい事この上ないが当時の僕にはそんなことを思う余裕は無く、イライラしてしまった。
ある時、僕はついにこんなことを言ってしまった。
「だ・か・ら!ツンちゃんの布団はあっち!あっちの布団で寝ないともう遊んであげないよ!あっち行ってね!」
そしたらツンちゃんはしょんぼりして自分の布団に行ってしまった。
その夜、僕は夜中なのに目が覚めてしまった。もう1回目を閉じて寝ようとしたけど眠れない。
どこからが泣き声が聞こえて来た。
泣き声の主を探したら、ツンちゃんだった。
ツンちゃんは布団の中で寝ながら泣いていた。
「おとうしゃん…おかあしゃん…どこー?」
「ひとりはこわいよ…置いてかないで…」
その時、僕は胸がたくさんチクチクした。ツンちゃんはまだちっちゃいのにパパやママとはぐれちゃったんだ。なのに、僕は、僕は…
「…お兄ちゃん?」
ツンちゃんが目を開いた。どうやら自分の泣き声で起きてしまったらしい。
「ごめんな」
「…?なんで謝るの?」
「酷いことしたから」
「お兄ちゃんなんで泣いてるの?」
ツンちゃんに言われて初めて自分が泣いてる事に気がついた。
ごめんね、さみしかったよね、一緒に寝るよ
と言おうと思ってるのに、喋ろうとすると全部変なしゃっくりになって涙もポロポロ出てきてしまう。
その時、ツンちゃんがギューッとしてきた。
「…?」
「辛い時はギューしたら良いっておかあしゃんが言ってた!」
「…」
「ギューしたら辛いの飛んでいくから泣いてる子がいたらギューしてヨシヨシするんだよっておとうしゃんも言ってた!」
ツンちゃんの身体はあったかくて柔らかかった。僕より一回り小さい身体なのに僕を抱き締めてヨシヨシしようとしてる。
僕もツンちゃんをギューした。
その日からかな、
僕達が一緒の布団で寝るようになったのは。