社会人生活2ヶ月目、恋人の事
令和3年4月1日に社会人になってから早くも2ヶ月が経過した。
もう2ヶ月?と時の流れの速さに引きつつも、様々な生活の変化にただ翻弄されて、既にくちゃくちゃになっているし、疲れている。
落ちた木の葉が水たまりに嵌り、道行く人に踏まれ、アスファルトに押絵の様にへばりついてる。それと同じくらい、つかれている。
何処にも行けないし、もうどうしようも出来ないから早く誰かに片してくれと願い続けるみたいな。
仕事に関しては中々刺激的な毎日を送れている。手取りと額面の違いに愕然とした。引かれすぎだろ。
そして上司はコミニケーションを取りたがらないタイプで、人に気を遣いすぎて疲れる私にとってはやり易い。このまま薄ぺらい好意を振りまき続けていけば人間関係で悩む事はなさそうで安心した。
4月末に恋人に別れを告げられた。
ついに来たか、と言うのが連絡を見た最初に抱いた感情だった。審判の時が来た、と。
元々人に好かれたいがあまりに人に気を遣いすぎ、そして人の身勝手さに勝手に絶望し人を嫌いになるという厄介な性格の私だったが、彼は唯一その厄介さを楽しんで、好んでくれた。
私の全てにおいて肯定と承認を与えてくれた。
彼が私の全てを肯定してくれていたおかげで、私は私自身を肯定し日々を送れていた。
本来の自分は目もあてらないほど醜いのに私は大丈夫だ、と根拠の無い自信を持てていた。
彼が地上に降りた神様なのか?と一時期本気で考えていたが、言うまでもなく彼はホモ・サピエンスだ。
私と同じく怒りと悲しみを抱き、快楽を追求する人間だ。
彼がいくら優しい言葉で、君の醜い部分まで受け入れる、と伝えてくれていても、このままでは必ず彼に限界が来る、と頭で分かっていた。分かっていたのに私は私を変えなかった。
私は私のまま彼に承認されたかった。
それがいつか彼が私への好意を枯らすと分かっていても、ありのままの私を見せていたかった。
書いてて死にたくなってきた。
彼の隣に座っているだけで本当に、完全に、私の全てを肯定できた。陽だまりに包まれた時と同じくらい満たされていた。全てがそこにあった。
世間の皆様が言う幸せってこの事なんだなと初めて肉体で理解出来た。どんな言葉や歌でも表すことの出来ない感情が人にはこんなにあるのかと知れた。
私の全てを受けいれようと努力し続けてくれた彼が、もうそれを終わりにしたいというのなら私に止める権利はないのだ。こちらも彼の望みを受け入れるしか出来ない。それが1番彼を次の幸福へと導くのだから。
通勤で電車に揺られる中、LINEで何度かのやり取りをして、実に呆気なく私と恋人の2年間は幕を下ろした。
改札を抜けて号泣しながら今までありがとう。幸せにね。と元恋人へ文章を打った後、
霧雨と涙でマスクがべちゃべちゃになる不快感に激しい怒りを抱きながら話のわかる女友達二人に電話したがどちらも出ず、「別れた」とだけ送った。
職場が見えた途端に涙が止まって、人間は意外にしぶとく生きるよと祖母が言っていたのを思い出す。世界で1人だけのこの私がこんなになってんのにこれから8時間働くのか、世界はやっぱり狂ってると思った。
あの朝からショックで上手く働かない頭のまま1週間ほど過ごしたので、その間に教わった業務内容に抜けている部分が多く、たまに先輩に釘を刺される。
この間、彼の得意料理だったヒレカツが食卓に出て、味わった途端に彼の自慢げな笑顔を思い出して飲み込めなくなり、そのまま箸を置いた。私は二度とヒレカツが食べれなくなってしまった。
彼が居なくても日々は過ごせるが、この様に記憶がフラッシュバックして目眩がする事がある。その度に死にたくなる。食事が喉を通らないという経験を初めてした。体重は4kg落ちた。
もう二度と戻らない幸福を待ち続けるのは辛い。
目の前から消えた存在について思いを馳せるのが辛すぎる。なので私も他の失恋した人と同じく他の男で忘れる事にした。マッチングアプリは本当に女に優しい。今日も1人新規で会う。
他の男に会ったところで自分に空いた穴の大きさを再確認するだけになるのだが、それはまた書ける時に書きたい。
兎に角この2ヶ月走って気付いた事があるとすれば、人間は意外と死なないということと、毎日うんざりするくらい誰かの家族が死んでいるという事だ。
私もいつか来る終わりまで走り続け無ければならない。これは義務だ。
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