豊岡滞在制作2日目 6月14日
睡眠薬を家に忘れてしまったけど、快眠した。人の家にはまだ慣れないが、綺麗で快適な家でとてもよかった。しかし嫌な夢を見た気がする。いつも、嫌な夢は、見た気がするだけで、具体的な内容は思い出せない。思い出せなくてむしろいいのかもしれない。嫌な夢を忘れられる都合が良い頭でよかった。
遥野ちゃんの身支度の音で8時くらいに目が覚めた。謝られたけど、目覚まし時計で目を覚ますより100倍良い。遥野ちゃんは俳優だけど、普段は朝から劇場で働いているから早起きだ。まじめで健気でえらい。〝OKグーグル〟のやつの使い方を教えてもらった。そういう機能があるらしく、なんとピカチュウと会話した。止め方がわからず、ずっとピカチュウが可愛く鳴いていた朝だった。
昨日のお酒がまだ残っている。お酒のせいで昨日の日記が尻すぼみになってしまったことを改めて後悔する。
9時には机に向かって、後輩の1人芝居の戯曲に手をつける。基盤になるセリフは1Pあるけど、昨日プロットを変えたから、ほとんど書き直しになる。ふう。
10分もしたら書くのに飽きたので、再びベッドにもぐりこんだ。人がいない家はひまだ。そういえば、昨日は夜にベッドで「蛇にピアス」を1人でみたけど、隣の部屋で寝ている遥野ちゃんにエロいシーンの音は聞こえてなかっただろうか。心配だ。しかし、5分くらいで心配な気持ちは薄れた。ぼうっと、再び寝ることを試みる。が、完全に起きてしまったので、軽く筋トレをする。
ぼうっと過ごすことに飽きたので、セックス・アンド・ザ・シティのドキュメンタリーをみる。裏側を知るのは、なんだってドキドキする。
10時になって、やっと、愛読書「シナリオの基礎技術」を読みながらノートを開いた。BGMにはセックス・アンド・ザ・シティを流す。
「あたみ」の脚本を書きながら、自分は単純なんだな、と感じた。脚本を書くということは単純になっていくことなのかもしれない。あるいは、正直になっていくことかもしれない。一方で、俳優の仕事は複雑で大変だ。俳優だけやっている人はどうしてやってるんだろう。俳優は凄い。私は演技をすることもあるけど、根本的に俳優ではない。〝女優〟という生き物には、いつも驚かされる。私は嘘をつくのが上手じゃないし、嘘をつかない方がいいと思ってるから、上手に嘘をつける人を尊敬する。
ふと、マップを開く。名古屋からずいぶん遠くに来ていてびっくりする。様々なものから遠いのだな、と思うと、肩の荷が軽くなった。
ノートを1ページうめたところで眠くなり、15時半まで寝た。大人数で旅行に行く夢だった。いま旅行にきているのに。だからか。
まだ場所に慣れていないから外出に気が向かず、やることが書くことか寝ることくらいしかない。孤独だ。これが滞在制作か、とひとりごちる。
遥野ちゃんとりこちゃんの帰宅が遅くなるという連絡が来ていることに気づく。一緒にご飯を食べる約束をしていたので、生活がまるまる3時間後ろ倒しになる。いよいよ、やることが書くことしかなくなった。後輩の1人芝居が進んだ。しかし、もう1つ展開が必要である。そのピースが思いつかない。ノートに〝処女〟について書きなぐった。
夕方に1度2人が家に戻ってきて、人の気配に嬉しくなる。遥野ちゃんは夕方なのにパスタを茹でて食べていた。お腹が減っている人というのは、どうしてこんなにも可愛いんだろう。りこちゃんがクレヨンしんちゃんの話をしてくれて嬉しかった。
2人が外出して、また、ひとりになる。セックス・アンド・ザ・シティのスタンフォード(誰もが大好きな彼)が亡くなってしまったことを昼間に知ったので、その俳優さんについて調べてみる。
ご飯を食べるために駅に集合する。街灯の少なさに恐怖を覚える。お酒を飲んで、すこし真面目な話をする。みんなそれぞれ考えて生きていて偉いなと思う。
お酒を飲んでしまったので、もう日記は書けない。夜思ったことは明日の日記に回す。