超短編 寝る前
女と男、ベッドで横になっている。
(男、終始あしらうように)
女「ねえねえ」
男「なに?」
女「好きだよ」
男「俺も好き」
女「どれくらい好き?」
男「一番好き」
女「え、二番は誰?」
男「二番なんていないよ」
女「ほんとに?」
男「マコだけだよ」
女「元カノは?二番じゃないの?」
男「元カノのことなんかもう忘れたよ」
女「男は名前をつけて保存じゃないの?」
男「わかんない。俺男じゃないのかもしれない」
女「えー!ヒロくん女の子だったの?知らなかったあ」
男「女の子だったのかもしれない」
女「えー。かわいい。マコ、女の子と付き合ってたんだ」
男「かわいいやつめ(髪の毛をぐちゃぐちゃに撫でる)」
女「ふふ。でもさ、でもさ、じゃあ仕事と私どっちが好き?」
男「そんなの、マコを大事にしたいから仕事を頑張ってるよ」
女「そうなの?」
男「うん」
女「てことは、結婚したいの?」
男「できたらいいね」
女「えへへー。マコも結婚したい〜」
男「ほんとに?嬉しい」
女「結婚したら、ヒロくんに毎日ご飯作ってあげるんだあ」
男「ほんと?めちゃくちゃ幸せ」
女「ヒロくんは結婚したらなにしたい?」
男「えー。毎日いちゃいちゃしたい」
女「えー!毎日?」
男「そう」
女「そんなの疲れちゃうじゃん」
男「何想像してんのー?いちゃいちゃって、ぎゅーしたりとかだよ」
女「えー?別になんも想像してないよ」
男「結婚したら毎日いちゃいちゃしてくれる?」
女「結婚してなくても毎日いちゃいちゃしてるじゃん」
男「確かに。賢い!」
女「えへ。じゃあさ、マコとガンプラ、どっちが大事?」
男「え?ガンプラ?」
女「うん」
男「...マコの方が大事だよ」
女「え?ほんとに?」
男「うん、ほんと」
女「マコがガンプラ壊しちゃったら?」
男「そんなのまた作ればいいだけだよ〜」
女「え、でもめっちゃレアなやつだったら?もう手に入らないやつだったら?」
男「......」
女「あっ、ほら、マコより大事なものあるじゃん。愛してないんだ」
男「愛してるよ」
女「一番愛してる?」
男「一番愛してるよ」
女「ガンプラは?」
男「種類が違うじゃん。物と人じゃん」
女「え、でもマコがガンプラ壊しちゃったら?ガンプラの道具全部捨てちゃったら?別れるでしょ?」
男「...あのさ、カマかけて、人を試すようなことをしないでください。さすがにわがままです」
女「え?私がわがままなんじゃなくて、そう言わせるヒロくんが悪いんでしょ」
男「信頼してないよね。僕を疑わないでください」
女「いやいや、疑われるお前の力量不足だろ。仕事できない男嫌いなんだけど」
男「あなた、サイコ」
女「は!?」
女、男の胸ぐらを掴む。
男、抵抗することもなくなされるがまま。
男「あの暴力やめてください」
女「先に言葉の暴力ふるったのそっちだよね」
男「だってサイコじゃん」
女「はあ!?」
男「僕はなんて答えればよかったんですか」
女「うんうんそうだねってうなづいてればいいんだよ」
男「それで満足なの?」
女「うん」
男「頷くだけじゃ満足しないくせに。こっちが百点の回答するまで詰め寄るくせに」
男「どこまで求めれば気が済むの?」
女「どこまでも」
男「女の承認欲求は果てがないですよね」
女「宇宙の神秘と同じだね」
男「離してくれませんか?」
女「敬語やめて。距離感じる」
男「はー。(深いため息)離して?」
女「もっと優しい声で言って」
男「...(優しく)離してくれる?」
女「わかった」
女、男の胸ぐらを離す
男「落ち着いた?」
女「うん、落ち着いた」
男「ムズいって、いつも」
女「だから言ってるじゃん。女のヒステリーは流すのが一番なんだよ」
男「俺、だから最初流してたじゃん」
女「確かに。嫌いになった?」
男「出会った当初からずっとちょっと嫌いだよ」
女「え!?」
男「冗談。めちゃくちゃ好きだよ。好きなの、本当に気持ち悪いよな」
女「恋愛してる時なんて皆気持ち悪いでしょ」
男「こういうやり取り疲れない?」
女「でも楽しい」
男「ウケる。わかる」
女「こういうのが楽しいうちは楽しんでいいと思う」
男「マコがそういうなら付き合ってあげてもいいよ」
女「やったー大好き」
男女、再び布団の中に入る。
男「俺の事どれくらい好き?」
女「宇宙中の全パワーをもって好き」
男「重。ウケる」
女「やったーウケた」
終わり。