六本木3
現在は都営地下鉄大江戸線の開通によって廃止されているが、かつてJR田町駅から三田、麻布を通り、四谷三丁目を経て新宿東口に向かうバスが六本木を通っていた。麻布十番から地下鉄と同じく現在の六本木ヒルズ下から六本木交差点に向かう一気に坂を登るルートで、六本木交差点のアマンド横の坂道(芋洗坂)が交差点から下るのみの一方通行(現在も同様)な為、坂を登ってきたバスは途中でかなり無理矢理に右折して坂道(饂飩坂)を上がり、ロアビル横から表通りの外苑東通りにアクセスするという具合であった(逆に青山方面からは六本木交差点を右斜めに進み一方通行の芋洗坂を下る)。六本木トンネルも開通していない頃で、今でこそ再開発の為の区画整理が始まっていることもあり少し閑散としているが、かつては車の往来が多く、それ以上に人通りも多かったと記憶している。
六本木の交差点は高台にあり、外苑東通りが尾根道になる。前述の通り麻布方向には芋洗坂、饂飩坂が下っており、南西に向かう六本木通りは西麻布交差点に向かって下っていく。北東側も溜池方面に向かっていく下り道であり、それらに伴い、赤坂方向にも、青山墓地の方向にも下っていく坂道がいくつもある。
2つの大通りに挟まれた西側も坂道がいくつかある。今でも盛り場として夜は人通りが多いエリアではあるが、やはり以前に比べる程ではない。表通りのドン・キホーテもできた当初は屋上にジェットコースターを作り物議を醸したが、その残骸も数年前に無くなった。伝説的なディスコの店舗が集まっていたスクエアビルも今はなく、ホテルとなっている。
このエリアは突如現れる墓所に向かって一気に下がっていく坂道、場合によっては階段がある。奥まった所にあるビルの横にも階段がある。かつては六本木AREAという有名なディスコもあった場所で現在はナイトクラブが入るビルだが、ディスコの後に改装されたシネマコンプレックス「シネマート六本木」の時代の方が私には馴染みがある。2014年のフランス映画『ヴィオレッタ』の公開の際には来日したエヴァ・イオネスコ監督(写真家、イリナ・イオネスコの娘)と主演のアナマリア・ヴァルトロメイと一緒に写真を撮ってもらった。
このあたりはビルの老朽化に伴う取り壊しが進んでいるようだ。一方で、外苑東通りを挟んだ反対側の街区はロアビルを始め「ハードロックカフェ」や「ストライプハウス」、かつてはオールディーズライブハウス「ケントス」などもあり賑いのあったエリアだが再開発に伴うビルの閉鎖や区画整理が始まっている。時代の景色は、取り壊されればあっという間に忘れられる。
(撮影 2020)