中央大学通信課程2021年1月代替試験 労働法(集団的労働法)[評価B]
※解答には参考文献の記載必須とありましたが、書き忘れました。丸善の電子書籍(学認でログインできるアレ)と、ノイズレスサーチを駆使してください。
問い わが国における現行の集団的労働関係法が、21世紀の経済社会に適応するために改革すべき課題について、思うところを論じなさい。
解答
1. 現状
a. 雇用形態の多様化
テクノロジーの発展、日本経済の停滞などにより、集団的労働関係法が予定していなかった、新たな雇用形態が続々と生まれ、それらに従事する労働者の数も年々増加している。具体的には、(正規・非正規雇用による)テレワーク、(個人事業主の)SOHO、プロジェクト単位の契約、(主婦などによる)クラウドソーシング(いわゆるすきまワーカー)などを含むシェアリングエコノミーやUberなどが挙げられる。雇用された企業内で、雇用主の監督の下で労働をおこなう、正規雇用労働者(フルタイムの無期雇用労働者)であれば問題とならない点が、その他の雇用形態にとっては大きな問題となる。特に、労務管理、信頼関係の構築などを含めた、「使用者性」の問題がある。一定の実態をもつ下請け企業から派遣された労働者を使用する放送局について、「雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて」労組法7条の使用者にあたるとした朝日放送事件(最三小判平成7年2月28日民集49巻2号559頁)で争われた使用者性も、雇用形態の多様化という背景から生じている。また、このような非正規雇用労働者の多くは、そもそも企業内組合に参加できないという問題がある。日本では典型的に企業別に組合が結成されることが多く、加入の対象外である非正規雇用労働者にとって、そのデメリットははかりしれない。
労働組合組織率が低下し続けている背景にも、このような雇用形態の多様化がある。1社に専属しないフリーランスや、一般労働者を対象とする団体交渉になじまない専門職や管理職の立場にある労働者など、組合や法が想定していなかった多様な雇用形態をもつ労働者が増加しているためである。今後も多様化が進むと考えれば、企業別組合だけで組合員を確保し続けるのは一層難しくなるだろう。職種、産業を問わず、広い地域にわたって労働者を組織する一般労組や、地域で誰でも加盟できる地域一般労組、職業別組合、派遣社員のための労働組合などへの参加率が増加し、その重要性も一層高まると考える。
b. 個人の雇用問題の増加
雇用形態の変化、日本経済の停滞など経済社会情勢の変化に伴い、企業組織の再編、企業の人事労務管理の個別化、労働組合組織率の低下等を背景として、解雇、労働条件の引き下げ、いじめや嫌がらせなどをめぐる個別労働紛争が増加している。 民事上の個別労働紛争については、
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