「夜が明ける」読みました

【注意】
当方は評論家でも本の虫でもない、ただの日本文学科の大学生です。あとネタバレ含みます。


西加奈子さんの「夜が明ける」を読みました。

私は本を読む数が圧倒的に少ないので、西加奈子さんの作品を読むのは初めてでした。
だから西さんのことは何も知りません。
どんな方なのか知っていたらもっと有益な感想を言えるのでしょうが、残念ながらできません。

以下、純粋に本を読んだ感想です。

「再生と救済の長篇小説」というキャッチコピーにん?と思いました。


「男同士の友情と成長」
んん?
そんな…高尚な話だったか?

私はアキのパートと「俺」のパートを全く別物として読みました。彼らの人生は同じクソな生活でありながら全く異なる性質のクソだったからです。
アキはマケライネンに出会って(出会わされて)から右肩上がりな人生になります。傍から見れば彼は幼い頃の虐待を一生引きずった哀れな男ですが、彼はそれでも幸せだったように思います。だって自分はアキ・マケライネンだから。

一方で「俺」は右肩下がりの人生なように感じたのです。それまでのうのうと暮らしていたのに父親を失い、仕事はブラックでハラスメントを受け、全てがボロボロになっていきます。どん底まで落ちてやっと、やっと一筋の光を見つけたのです。

この対比によって私の心はずっと鬱屈としていました。序盤からずっと鬱展開じゃん。しんどい。
やっと見つけた光も本当に一閃で、そんなんじゃ今までのチャラにできないって。

だから私は「再生と救済」をメインテーマにしていいのか、別ベクトルの人生を歩む2人を「友情」と表していいのか、疑問に思いました。そんな陳腐な言葉で表してしまうと、私の抱いた沈んだ感情が簡単に救われてしまうじゃないか、と思ったんです。

これは色んな人も言っていますが、何度も本を閉じました。読むのが辛すぎて。
だって私は、親の金で悠々自適に暮らす大学生だからです。
アルバイト代は娯楽に消えますし、衣食住は親持ちです。奨学金も借りていないし今も親が支払う電気代によって温められた炬燵に入りこれを打っています。
自分の人生がいかに生ぬるいかを突かれて痛かった。
お前が今辛いと思っていることは全く辛いことではないんだと言われているようで辛かった。
だから本を閉じたんです。

そしたら、閉じた本から「逃げるのか?」と問いかけられているような気がしました。
この本から、苦難から、人生から逃げるのか?
そんなことが許されると思っているのか?
クソ!と思い、離れるためにハンバーグオムライスを食べましたが脳内でずっと響くのです。知らない男の声が。

仕方なく、鉛のような重い指で本を開くのです(もちろん食後に)
開くしか選択肢がありませんでした。
読むしかなかったんです。
気づいたら読み終わってました。
強烈な読後感というより、鬱の延長線のような気持ちになりました。
私はこの本で何を得られたのだろう。
未だに答えは出ませんし、一生出ないと思います。
それでも、私はきっとこの先の人生に多々あるターニングポイントにおいてこの本を思い出すと思います。
辛いときやしんどいときに思い出して、「逃げるのか?」と問いかけられるのです。

そういう意味では、我々にとっての「再生と救済」の物語なのかもしれません。

(余談)
読み終わった後、謎の焦燥感に駆られ皿洗いをしました。

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