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町家オープンカレッジ「社会と自分をつなぐロールプレイング ~NPOゲーム体験会~」レポート

2019年10月17日、NPOをテーマに町家オープンカレッジ(MOC)を開催しました。ゲストは、京都府南丹市を中心に活動する「NPO法人テダス」の高橋博樹さん。NPOの活動を支援する中間支援団体「テダス」の代表を務め、さまざまな企画や事業を展開する高橋さんの知識と経験を詰め込んだNPOゲームというボードゲームを楽しみながら、組織運営や事業づくりについて学んだイベントの様子をご紹介します。

(PROFILE)
高橋博樹(たかはしひろき)氏
1971年生まれ。(株)都市・計画・設計研究所に5年間勤務したのち、手仕事をしたいという思いから脱サラし、京都伝統工芸大学校に入学。2006年、卒業と同時に木工家として活動しつつ、京都府南丹市を拠点に「NPO法人京都匠塾」を設立。
2012年、NPOのよろず相談所「NPO法人テダス」を設立し、NPOの活動支援を開始。南丹市まちづくりデザインセンターの運営、全国えんぴつけずり大会など、さまざまな事業を展開中。

町家オープンカレッジとは?

町家スタジオにて、ツナグムが不定期に開催している学びの場。ツナグムのメンバーが学びたいことを実践するイノベーターをお呼びし、これからの京都や仕事について考える場です。

自らの経験を活かしNPOの活動を支援する道へ

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サラリーマンとして働いていた高橋さんが、自らNPOを立ち上げ、さらにNPOを支援する活動をするようになった理由は?そんな参加者の疑問に答えるように、高橋さんの経歴をたどるお話からトークイベントはじまりました。

「大学で建築を学び、大学院卒業後は都市計画の会社に就職しました。5年間、阪神大震災の復興計画などに関わってきたのですが、ある日雷に打たれたように、ものづくりがしたい!という気持ちになって。もともとものづくりの分野に進みたくて建築の道を選びましたが、携わるのは設計まで。実際に自分の手で作るわけではありませんでした。やっぱり自分で作りたいという思いが強くなったんですね」

そこで高橋さんはこれまでの仕事を辞め、京都伝統工芸大学校に入学。2年間木工を学び、卒業と同時に木工家として独立します。

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一方で高橋さんが気になったのは、卒業していくほかの学生たちの進路でした。
京都伝統工芸大学校では、毎年150~200人が卒業するものの、そのほとんどはなんと就職先がないという状態だったそう。

「陶芸も竹工芸も漆工芸も、どの分野の学生もみんな就職できないんです。全国各地に探しに行くけど、弟子入り先が見つからない。業界に残れるのは2%くらいでした」

伝統工芸の業界を変えたい。業界を活性化し、若手職人がもっと活躍できるようにしたい。そんな思いから高橋さんは、京都伝統工芸のさまざまな分野の若手職人が集い活動する「NPO法人京都匠塾」を立ち上げました。

「NPOを運営していると、いろんな人が僕のところに相談に来るようになりました。NPOってどうやって食べてるの?ボランティアとどう違うの?そんな話がたくさん来て。何かやりたいけど、やり方がわからない人たちを放置しているのはもったいない。この人たちがやり方を学んでどんどん活発に活動するようになれば、もっと地域が豊かになると思いました」

そこで高橋さんは、NPOの活動を支援する中間支援「NPO法人テダス」を立ち上げます。
テダスはいわば、NPOのよろず相談所。NPO法人や市民団体、自治会、地域の支援型組織といったさまざまな人々が相談に訪れます。その相談に応え問題解決の手助けをする、口だけでなく「手も出す」の意味を込めて「テダス」と名付けたそうです。

ボードゲームでNPO運営を疑似体験!

テダスが生み出したさまざまな事業のひとつが、NPOゲーム。
地域のために、地球のために、何かやりたい!と思った人が、仲間を集め団体を立ち上げて事業を展開し、NPO法人格を取得して、人を雇用する、そんな擬似体験ができるボードゲームです。

「事業を展開しようとすると、やっぱりみんな同じところで悩むんですよね。どうすれば資金調達できるのか、広報がうまくいくのか、仲間が増えるのか。いろんな解決方法があるので、はじめは本を書こうと思ったんですけど、本よりもゲームにしたほうがみんなおもしろがってやってくれるんじゃないかと思って作りました。では実際にゲームをやってみましょうか」

ここで3~4人ずつテーブルに分かれ、実際にゲームを体験することに。1人1枚ずつ配られた能力シートにプレイヤー名、出身地、夢などを記入し、自分の分身となるコマを選んでゲームをはじめます。

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順番にサイコロを振り、コマを進めます。
進むごとに、事業力、事務力、共感、信頼の4項目がレベルアップしていきます。

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90分ほどでNPOゲームは終了。真剣ながらも和気あいあいと、各テーブルが盛り上がりました。

大切なのは共感と信頼。その下支えとなる事務力

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高橋さんがこのゲームで伝えたかったことは二つ。
一つ目は、事務力の大切さです。会計、経理、人事、総務、連絡調整一つに至るまで、さまざまな場面で事務力が重要だと高橋さんは語ります。

「何よりも大事なのは、書類を読んでその通りのことができること。普通のようですが、結構できない人が多いんです。僕らのような活動団体は、サッカーで言えばフォワードが多い。事業力、外に打って出る力はすごく高いし、点を取りに行こうとするけど、ディフェンス、つまり事務が弱い。ディフェンスが弱いから点を取られて勝てない、みたいな組織になりがちなんです。だから事務力を疎かにしたらダメですよっていうことを、このゲームにめちゃめちゃ盛り込んでます」

もう一つは、共感と信頼です。
一見似ているようですが、高橋さんはこの二つを明確に使い分けていると言います。

「良いことをしようとすると、たいてい共感は得られます。例えば、川掃除をみんなで一緒にやりましょう、と言うと共感はしてもらえます。でももしその川掃除に怪しげな団体が絡んでいたら、参加したくなくなるでしょ?つまり、共感はするけど信頼はできないという状態なんですね」

大事なのは、共感と信頼を併せ持っていること。
信頼にまつわるのが人間であり組織であり、信頼と事務力はつながっていると高橋さんは強調します。

「問題は誰がやるか、どんな組織がやるか。会計が雑でお金がどう回っているかわからないような団体に、補助金を出したり業務委託を依頼したりできないですよね。だから事務力は大事だし、事務力がないと信頼は得られない。それをゲームで伝えたいんです」

10年にわたりNPO法人に携わってきた高橋さんの知識と経験がギュッと詰まったゲームを通じて、組織運営や事業づくりに必要な力を体感することができた今回のプログラム。
ゲームや終了後の交流会では、NPOの活動や事業づくりに関心を持って集まった参加者同士の交流も盛り上がりました。

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文/藤原朋





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