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『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章』がめっちゃプリンセス・プリンシパルだったって話。

 何当たり前のことを言ってるんだと思うかもしれないけれど、映画を観たらあなたもきっとこう言います。 

 2月11日は建国記念日?違います。推しアニメの3年ぶりの供給が、王国民にもたらされた日です。「女子高生×スパイ×スチームパンク」という欲張りセットな座組みで突如現れ、革命によって狂わされた運命を背負い生き延びてきた女の子と女の子の後悔と懺悔の物語を全12話で視聴者に浴びせかけた傑作アニメ『プリンセス・プリンシパル』の完全新作劇場版、その第1章の公開日です。

 主演キャスト交代、例のアレの拡大に伴う公開延期を経て、ようやくお披露目となった正当続編。わずか53分の上映時間ながら作品のエッセンスが凝縮され、大スクリーン映えする夜のロンドンと梶浦由記先生の劇伴に彩られた新作を観た素直な感想が、「めっちゃプリンセス・プリンシパルだった」です。本当にこの一言に尽きる。

アクション!心理戦!ププのアプ!!

 本作の何が「めっちゃプリンセス・プリンシパル」なのか。新章の幕開けにしてTVシリーズから時間を置いての続編となった第1章は、「プリプリってこういう作品だったよね」を観客に叩き込むような、そんな作品に仕上がっていたからではないだろうか。

 例えばアクション。冒頭からTVシリーズ第1話と同じ要人の奪還ミッションに挑む白鳩の面々が描かれ、派手な見せ場で一気に作品世界に惹きつけてくれる。Cボールによる重力に逆らった挙動で縦横無尽に夜のロンドンを駆けるアンジェ、大胆な潜入から始まり銃弾も寄せ付けない剣客ぶりを見せるちせ、卓越したドライブテクでおなじみドロシーが、これまでの空白期間を一瞬で埋めてくれるほどの「プリプリ」を見せつける。時代考証にも可能な限りこだわって美術や設定を固めていく作品でありながら、一方でケイバーライトという「嘘」を織り交ぜケレン味たっぷりなアクションで楽しませてくれる。

*以下、本編のネタバレを含みます*

 次に、手に汗握る心理戦。TVシリーズ終盤における事件以降、ノルマンディー公によるスパイ狩りが過激化する中、コントロールは共和国の情報を横流しする二重スパイの存在に気づく。そんな折プリンシパルのチームに与えられた新しい任務は、王室内に潜入しているスパイ、通称“ビショップ”に接触することだった。

 女王陛下に最も近しい侍従長という立場にいながら共和国側のスパイ、その上アンジェの秘密をも見抜いたこの男は、劇場版からの新キャラクターでありながら白鳩の面々を凌駕する実力のスパイであり、まさに「プリプリってこういう作品だったよね」な顛末を遂げるキャラクター。同時に、嘘を吐き続けることに疲れ、貴族に生まれながらスパイの道に足を踏み入れたがために平穏な余生をも奪われてしまったビショップの最期は、当然ながらアンジェたちにとっても他人事ではない。どんなに理想が高くとも、プリンセスの行為は国民を欺き続けることに他ならず、アンジェらもその正体が割れればまず命は助からない。

 常に死の危険に怯えながら、嘘に嘘を重ね疲弊していくのがスパイの定めだとすれば、彼女たちに安寧が訪れる日はやってくるのだろうか……。全6章全体のテーマを暗示するかのような大きなフックを残して退場したビショップ。そんな彼の名シーンはやはりチェスの攻防におけるCV:飛田展男対CV:土師孝也の腹の探り合い。イケおじがイケボを駆使しながら心理戦を繰り広げてこそ、個人的には「プリプリってこういう作品だったよね」になってしまう。

 そしてそして、プリンセス・プリンシパルといえばアプですよね。革命によって狂わされた運命を背負い生き延びてきた女の子と女の子の後悔と懺悔の物語ですよね。互いに向き合った感情の矢印がデカかったりすれ違う程に我々が狂ってしまう、アレです。

 とはいえ、TVシリーズを経て一人で抱え込む癖を少しずつ脱却しつつあるアンジェは、白鳩の面々の前でも素直な気持ちを口にしたり、プリンセスに助力を求めるなどの精神的な成長が印象的。一方、チェンジリング実行中にピッキング&潜入を難なくこなすプリンセス、元から血のにじむような努力で生き延びてきただけあって、精一杯覚えたんだろうな。プリンセスがただの守られる姫君ではなくスパイとして行動しているということは、アンジェの過保護も少しずつ和らいできているんだな~って台詞外で伝わるところがめっちゃ好きです(ろくろを回すポーズ)。

 しかしOPでは「壁」による分断がなおも示唆され、両者の正体に気づいたビショップによって「アンジェとして生きてきたシャーロット」「プリンセスとして生きてきたアンジェ」の双方を肯定されるシーンに至り、各々の複雑な心境が見え隠れする。このシーンが後にどのように響くのかを見守るのが楽しくて怖くて仕方がなく、作品のエモーションの一番大きい部分をこの二人が担ってこそ「プリプリ観てんな」となるんですよ!!!!!!

そして、秋がきた。

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