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夏休みに運命が動き出す。『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』(アニメ)

 Fate×魔法少女、ようやく楽しみ方がわかってきました。これ、やっぱり平成ライダーです。夏のギャグ回を挟んで強化フォーム回。話数的にもタイミングばっちしじゃないですか。あとは夏の劇場版(TV本編とはパラレルなやつ)とか、サブキャラクター回が異様に充実してきたら完全に「それ」です。

 分身したもう一人の人格・クロを受け入れたイリヤ。強敵バゼットを退いた彼女たちは、束の間の平穏を享受する。学校は夏休み。夏祭りに遊園地にBL談義と、楽しい日々があっという間に過ぎていく。

 前期同様、全10話の内前半が日常回、後半がバトル回と明確に分かれており、前半はそれぞれが単独のお話であるため、作品全体を貫くストーリーやテーマがあまり見えてこない。彼女たちの楽しい夏の一時、というキャラ萌えとしての要素しかなく、シチュエーションは変われど印象としては変わり映えしないように感じられる。過激なお色気シーンももはやお約束となっていて、魔力補給という名目で行われる過剰なまでに官能的に描かれるキスシーンは、「そういうもの」と思ってやり過ごすのがこのアニメとの付き合い方だ。まぁ、需要があるからこそこうなのだろうが。

 ようやく物語が動き出すのは後半から。これまで、魔法少女アニメに「Fate」というスパイスを放り込んだような塩梅だったが、ついに選手交代。Fateがファンシーな世界を食い破るほどに、あの夜の物語が顕現していく。

 今作のテーマは「最強の敵との邂逅」。『stay night』を意識した選抜の英霊たち、それを踏まえた8人目といえば当然、あの金ピカのAUOなのだが、ここで一捻り入れてくるのには素直に驚いた。可愛らしい声と容姿なのにちゃんとアイツで、しかもエグいくらい強い。シリーズを代表する最強の敵に相応しい強さと憎たらしさで、魔法少女に襲い掛かる。

 対する魔法少女たち、絶望の状況を打開するのはそう、強化フォームだ。二つの変身アイテムを掛け合わせて、サブライダーの意匠を取り込んだ新形態に主人公が変身。日曜朝じみた展開で、イリヤのテンションもかつてないほど急上昇。

 そして、第1期から棚上げにされ続けてきた、美遊のパーソナリティにいよいよ触れ始めていく。聖杯として造られたイリヤと、その機能が分離したクロ。さらにもう一人、並行世界における聖杯である美遊。いかに魔法少女とあれど、やはり世界の根源は魔術と聖杯。前半の軽いタッチが嘘のように、物語のシリアス度はぐんぐん濃くなっていく。

 総じて、この「ヘルツ!」そのものが2期と4期をつなげるためのブリッジにしかなっていない、という印象を受ける。穏やかな日常とシリアスなバトルをハッキリと区分けしたことで、逆に引き伸ばし感が強まっている。全10話のうち、物語が動き出すのは後半3話だけで、最終回は4期に繋がる意味深なCパートが流れて終わる。美遊の正体は明かされたものの並行世界なる新概念が飛び出したことで、またしても謎や伏線は棚上げ状態。聖杯戦争や時計塔といった、いわゆる「正史」との関連性を匂わせる設定が数多く散りばめられているのに、どこまでが地続きでどこまでがパラレルなのか、説明がないまま進行していくのも、モヤモヤを加速させていく。

 これは想像だが、今期製作時点で4期も織り込み済みであり、それを見越してこのような中途半端な物語になったのだろう。エンジンがかかるまでとにかく遅く、走行距離も短い、そんな車では満足しないだろう。キャラクターに愛着があれば前半も楽しめるだろうが、4期への助走と割り切って、ライトに観るのがオススメだ。


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