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『俺、ツインテールになります。』だそうですが、どうします?

一条さん、俺、なります…凄まじき戦士に!

 これは、『仮面ライダークウガ』の脚本を手掛けた荒川稔久氏が書き記した、主人公の悲壮なる決意の言葉だ。究極の闇に対抗するためには、自分も最強の戦士になるしかない。だがそうすれば、敵と同じ殺りく兵器になってしまうかもしれない。自分を見失う恐怖、拳を振るうことの痛み。それらを抱えてでも、みんなの笑顔を守りたい。オダギリ・ジョー演じる主人公・五代雄介がその覚悟を示したのが上記のセリフである。

 そんな荒川稔久氏が、『クウガ』から14年の時を経て世に放ったのが、TVアニメ『俺、ツインテールになります。』だ。具体的には同名ライトノベルのアニメ版のシリーズ構成を荒川氏が手掛けたに過ぎないのだが、よもやツインテールになる、という概念がこの世に存在するとは。そして奇しくも、本作は特撮(とツインテール)に迸る愛を注ぎ込んだ、色んな意味でヤバい変態アニメだった。なんだこれ。

 主人公は「ツインテール」に異常なまでの愛情を示す男子高校生の観束総二。そんな彼の元に異世界から現れた科学者のトゥアールは、ツインテールがこの世から無くなってしまうと語り、総二に闘う力を授ける。その日、地球は異世界からの侵略を受けたのだ!侵略者エレメリアンの目的は地球人の「属性力」を奪うこと。属性力とは何かを愛する力。中でもツインテールを愛する「ツインテール属性」は最強であり、そのためツインテールの女性たちを襲っていたのだ。ツインテールが脅かされ、奪われることが許されない総二は、エレメリアンと闘うことを決意する。赤いツインテールで小柄の美少女戦士、テイルレッドになって!!

 気の触れたあらすじで申し訳ないが、これが『俺ツイ』の物語だ。ツインテールが好きすぎる男の子が、ツインテールの女の子になって、ツインテールを奪う侵略者と闘う。この時点で髪形フェチや性転換など性癖の過積載が起きているが、これはまだまだ序の口。ツインテールから始まり、うなじ、貧乳、ブルマ、男の娘、ナース…書ききれないほどの性癖を宿した強力な刺客が襲い掛かり、それを戦隊めいたレッド・ブルー・イエローのヒロインが打ち払う。ツインテールが好きなほど強い、という謎理論の元に!!

 本作は属性、すなわちフェティシズムが重要な概念として描かれる。それは主人公ら闘うヒロインや侵略者エレメリアンの力の源であり、何かを愛する行為の象徴として崇められる。…と高尚な物言いをしたが、要は個人の嗜好・性癖のことである。主人公はツインテールの髪形が大好きな「ツインテール属性」である。ツインテールが好きすぎるあまりに女性を見るときも髪形優先、髪形の所有者である女性本人にはあまり目が向かないほどのツインテール狂信者。相手を個人としてでなく、髪形という「属性」で良い悪いを判断する、一般社会で生きるにはとても未熟で危うい思考の持ち主だ。

 このように、本来は秘めるべき個人の嗜好を大っぴらに晒すこと、それを異性に投影することは、褒められた行為ではない。そもそも、本作で言う属性力=フェティシズムは男性が女性に向けるものに限られている。ナース服が至高だとか脚線美がどうとか、本来なら自室でこっそり発散すべき性欲のようなものだ。男性が性的な目線で女性を愛で、己がフェチを押し付ける。なんというか、現代の人権意識とはそぐわないインモラルなアニメだ。

 しかし、しかしだ。本作を最後まで観てしまったのはフェティシズム怪人ことエレメリアンの幹部軍団アルティメギルの皆々様が、あまりに魅力的で最高すぎたからだ。その姿はニチアサでも通用するバッキバキのスーパー戦隊フォルムで、自分の性癖を恥じもせず、惜しみなく情熱的にプレゼンする性格の熱い漢たち。しかも揃いも揃ってみんな声が良すぎる。変態的なセリフの数々を、日本が誇るイケボ声優、あるいは特撮経験者のボイスキャストが活き活きと演じる。倫理や人権を飛び越えて、この面白さには抗えなかった。速水奨の最も贅沢な無駄遣いを、そして「内なるツインテール」なる未だ人類が出会ったことのない概念がどのような声で喋るのか、ぜひご自身の耳で確かめてほしい。

アルティメギルのイイ声一覧
・玄田哲章
・黒田崇矢
・関俊彦
・檜山修之
・稲田徹
・チョー
・大川透
・竹本英史
・三木眞一郎
・岩田光央
・速水奨
・楠大典
・神奈延年

 アルティメギル、本当に最高なんですよ。主人公サイドの物語を完全に上回ってるぶっ飛び具合。例えば、「お人形を抱きしめる幼女が好きすぎる」のでか弱い少女をさらったり、ブルマが未だ体操着として採用されている高校を襲ったりと、もうメチャクチャだ。世界征服を目的としながら幼稚園を襲うショッカーがネタにされてきたが、まだその方が可愛く見える。

 変態怪人イケボ集団アルティメギル、もうぶっちゃけいるだけで面白いのだが、奴らは奴らで数々の異世界を侵略した恐るべき存在でもある。しかもその侵略とは人々の殺戮や文明の崩壊を伴わない、目に見えた暴力性は見られないもの。しかし、属性力を奪われた人々は、その嗜好に影響を及ぼされてしまう。例えば元からあった髪形の好みを奪われたことで永遠にツインテールを結べなくなったり、あるいは別の属性で上書きされてしまう。誰しもが持つ「何かを愛する気持ち」を奪われた結果、アルティメギルに侵略された世界は無味乾燥な世界になってしまう。人間性を奪う精(性)神的な侵略行為、許すまじアルティメギル!闘えツインテイルズ!すべては愛を守るために!!

 信頼できるコンテンツライターのazitarou先生の推薦図書noteを読む限りだとぶっちゃけ原作小説のほうが面白そうなんだけど、アニメには豪華声優陣演じる変態という唯一無二の醍醐味があるので、それはそれで愛すべきアニメ版なんだと思います。知らんけど。ニチアサとかウルトラマンが好きで、人には言えないフェチを持っている人は観てみてはいかがでしょうか。Amazonプライムビデオで観られますが(20年7月23日現在)、家族と共用のアカウントをお使いの方は履歴に残らないようお気をつけください。こちらからは以上です。


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