マイム1
僕が犯した沢山の過ちのせいで二度君には触れることが出来ない。
あの街で出会って恋をしたはずだったのに。
違う。ぼくが思い込んでいただけの、恋とも呼べない僕達のお話。
風がとても冷たい二月のある日に僕はあの街ー下北沢ーに引っ越しをした。
転勤で、と言ったら聞こえは良いけど僕はただのライブハウスの雇われ店長で。
系列のライブハウスから異動になったと同時に終電で帰れなくなった僕は引っ越しを余儀なくされた。費用は社長が出してくれると言うので遠慮なく職場から徒歩15分の物件に決めた。
ちょうど長年付き合っていた彼女とも別れたばかりでなにも縛るものもなかったし気分転換にもなったのでタイミングも良かった。
この時彼女と別れていなかったら、君とはあんな風にならなかったかな?
何回も何回も考えた。けれど何度考えても僕は磁石みたいに君に引っ張られていく運命だったと思わざるを得ない。それが悲しい。今となっては。
高校時代からの彼女とはちょうど12年付き合った。
大学受験が終わってすぐに僕から告白した。
儚げな笑顔が好きという今思えば青臭くて恥ずかしい理由だけど、その時は真剣だったしずっと僕は彼女以外の女性に興味を持たなかったし後半の四年は同棲していた。
周りはもう結婚するとばかりー当然彼女自身もー思っていた。けれど僕は違和感が拭えなかった、ずっと。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?