マイム3

最初に君を見つけたのはライブ終演後、フロアの掃除をしている時だった。

このライブハウスは終演後はバーになるのでその日出演していたアーティストやそのお客さん、単に飲みに来るお客さんもいて結構賑わうのだ。


スタッフも片付けが終われば一緒に飲んでいくことが多かった。


その日も掃除のチェックを終え書類を整理していると、バーカウンターのほうから瓶の割れる音と悲鳴が聞こえた。

また喧嘩か?とうんざりしながら振り返るとそこにいた腕を綺麗な紅に染めた少女が静かに口を開いた。


『ソウの悪口だけは絶対に許さないから』


それが君ー御宮朱里ーだった。



ソウ?今日の出演アーティストにその名前のボーカルがいたな、と思いながら立場上仕方なく止めに入る。


『申し訳ないけど喧嘩するなら外でやってくれないかな』

僕は朱里の腕を優しくつかみながら言ったのだけど。

『喧嘩じゃないわよ』と冷たくはね除けられて内心イラっとした。

『とにかく迷惑だから出てくれないかな』

『そいつがソウの悪口言うからいけないのよ。迷惑なら店長呼びなさいよ』

その台詞にここぞとばかりにニヤっとして言った。

『僕がその店長なんで、悪いけど出てってくれるかな?ついでにそこの子も一緒にね』と朱里と喧嘩していた若いバンドマンにも笑顔で告げた。

顔も知らない若いバンドマンもどきは多分駆け出しなのであろう、老舗のライブハウスの店長という僕の立場を知って狼狽していたが無視して二人を追い出した。





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