Designshipを通じて感じたデザイン組織とマネジメントのリアル
この記事は Goodpatch Design Advent Calendar 2020の24日目の記事です。
はじめに
先日、2020年 10月24~25日にDesignshipが行われました。Designshipのめあては、「各業界でデザイナーが培ってきた比類なき知識と経験について、デザイナー個人に焦点を当ててあらゆるデザインナレッジと物語が聞ける場」として今年も行われており、昨年同様セッション会場とは別にコラボレーションを生み出す場所に特化した空間としてDesignship 2020 Extra Stageがオンラインで実施されました 。
「Extra Stage」の今年のテーマは、「コラボレーション」が掲げられており、複数のセッションが行われていました。今回は私が登壇した、「デザイン組織とマネジメントのリアル」というセッションで一緒に登壇された、株式会社インパスの山下さん、株式会社キュービック CDOの篠原さん、Fjordの岡崎さんとのパネルディスカッションで感じたこと、話したことを書いていこうと思います。
デザイン組織におけるマネジメントの課題
なぜデザイナーはマネジメントをやりたがらないのか?
今回のパネルディスカッションの議題として最初に上がったのが、「デザイナーが中々マネジメント側になりたがらない」という課題感だったのですが、実はこれはDesignship前の打ち合わせ時に、登壇メンバーである4人の共通的な悩みとして出てきたものでした。
世間一般的なイメージ的に見るとデザインマネージャーって、徐々に手を動かすことが少なくなって、もの作りの現場から離れてしまうものだと思われがちだし、自分自身マネージャーをやっていても、メンバーの中でも自ら手をあげて「マネジメントに進みたいです!」って言うデザイナーは少ないように感じていました。
自分がデザインマネージャーをやることを決意した経緯
元々自分自身マネージャーのオファーを会社から頂いたときに感じていたことは「デザイナーは自分で手を動かして、物作りしてこそデザイナーでしょ」「そもそも自分はマネジメント向きのキャラクターではない」という感情でした。
そんな時当時上司だったマネージャーと食事に行く機会があり、「お互いが自分がなんでデザイナーになろうと思ったのか」という話題になり、原点を振り返ってみました。
自分がデザイナーなった原点はざっくりいうと、「良いプロダクトを作ったときに、手にとってくれた人の喜ぶ顔をみるのが死ぬほど好きだったから」というすごくシンプルな理由でした。
これは違う見方をすれば、この原点さえ持ってればもしかしたら自分が手を動かすことが少なくなったとしても、優秀なデザイナー達をマネジメント・ディレクションすることで結果的には良いプロダクトを作れるかもしれないし、物作りをするという点でのデザイン以外にも「デザイナーの成長をデザインする」「デザイン組織をデザインする」など視野を広げればいくらでも、良いプロダクトを作るためにできることはあるなと思いマネジメント側に移行する決意ができました。
入社してからマネジメントになるまでの経緯はインタビューしてもらった記事があるのでよければ読んでみてください。
デザインマネージャーを経験して得たもの
デザインマネージャーをある程度経験して得たものとしては、もちろん、現状分析と課題解決能力、意思決定スピードとリーダシップ、成長のためのコアを引き出すコーチングスキルなどのテクニカルなスキルももちろんありますが、どちらかというとマインドセットやスタンスなどの部分による、人格の変化・視座と視野の変化が大きいなと思います。
恥ずかしながら、マネジメントを経験するまでの自分はかなり視座が低く、自分の関与範囲を限定し、それ以外の組織の課題を見てみないふりをしていたきがします。
しかし、マネジメントをやっていくとどこまで行っても「組織とプロダクトは両輪である」ということが見えてきました。特にグッドパッチでは、クライアントワークの事業をやっており人財の成長(ハード、ソフトスキルどちらも)が組織の成長にかなり直接的に紐付いています。
例をだすと今までは目の前のプロダクトにだけ目を向けていたのが、組織としてプロダクトのクオリティーを上げていくという視座に変化し、プロダクトを作っていくメンバーに対して「どうしたらデザイナーとしての成長に寄与する機会提供をできるのだろうか」「どうしたら余計な変数を考えることなく、物作りに集中できる環境を作れるのでだろうか」「どうしたらデザイナーとしてだけでなく、一人の人間として幸せにしてあげれるのだろうか」などと強く考えるようになりました。
こういった人格・視座と視野の変化が得たものとしては一番大きいかなと思います。
未来のデザインマネージャーと、組織へ
上記の自分の経験を踏まえた上で、今後デザインマネージャーを登用したい組織、または キャリアとしてデザインマネージャーに興味はあるが悩んでいる方に伝えたいことしては、以下になります。
まずはやってみる・やらせてみる
株式会社キュービックの篠原さんも仰ってましたが、組織として、マネジメントに必要な思考を学ぶワークショップなどをメンバーに用意をしてあげることで、徐々に知識やマネジメントとしての視座や視野をつけてってもらうことも大事かと思います。
またグッドパッチではポテンシャルマネージャーという期間を設けており、少数のメンバーマネージメントとプレイヤーを兼務してもらうことで自身の適性などを考えてみてもらうなども良いかと思います。やはり自分自身もそうでしたが、プレイヤーの時にはマネージャーという役割に対して不透明かつ懐疑的だった部分も、一回経験をして初めて見えてくる部分もあります。
プロダクトに向き合う視点を変える
前述しましたが、プレイヤーとしてプロダクトのみにフォーカスしてクオリティーを上げていくことももちろん非常に重要です。ただ視点を内に向けるだけでなく、外に・組織に向けてみてプレイヤーとして直接的に手を動かさなくても、クオリティーをあげていける方法を考えてはどうでしょうか?
あくまでマネジメントは役割にしかすぎません。チームで最高の物作りをするための役割の一つを担ってると考えると良いかもしれません。
マネジメントをすることで自身のデザインスキルも変わる
マネジメントに移行すると、手を動かさなくなり自身のデザインスキルが落ちてしまうと思いがちですが、個人的にはそんなこともないなと思っています。
もちろんただメンバーを管理するという役割だけに自分の関与範囲を狭めてしまうと、衰退していってしまうと思います。大事なのは、組織のマネジメントレイヤーでの視座と、現場レイヤーの視座を常に行き来することです。
マネジメントをやることで、多種多様なデザイナーたちの思想や感性にふれることが多くなるだけでなく、より経営に近いレイヤーとのコミュニケーションも多くなるので両方の視点を持ったデザインができるようになってるなと思っているので特に衰退してる感覚はないです。あと個人的にはメンバーに負けてられないと影でコソコソ努力するようになります。。笑
おわりに
いかがでしたでしょうか?今回はDesignshipでの4人の登壇者の皆さんとのディスカッションを通じて色々個人的に学びがありつつも、マネジメントをやることになったきっかけを思い出す良い機会になりました。
グッドパッチのMissionは「デザインの力を証明する」です。このMissionを達成するにはまだまだデザイナーが足りませんし、デザイン組織を構築していくデザインマネージャーも足りていません。
少しでも今回の記事興味を持っていただけたら、いつでも連絡をください。一緒に社会を前進させるデザイン組織・チームを作っていきましょう!