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神田駿河台巡り
秋晴れの嬉しい平日休み。こんな日は街歩きが好手です。
今日はJRお茶の水駅で下車して、神田駿河台の気になる場所を巡ります。
神田駿河台とは
元は本郷台の先端だった場所が外堀開削工事で切り離され、独立した台地になりました。そこに駿河衆が住むようになり、駿河台と名付けられたそうです。
「駿河台」は元来、本郷・湯島台と地続きで、「神田山」と呼ばれる丘陵でした。徳川家康は新たな町づくりのため、この神田山を切り崩し、日比谷入江を埋め立てました。しかし、埋め立てによって平川(神田川のルーツ)の流れがとどこおり、下流で洪水が頻発しました。そこで、隅田川に通じ、江戸城の外堀の役目も果たす「神田川」が分流として開削されたのです。こうしてこの界隈は、本郷・湯島台から切り離され、独立した台地となりました。
家康が没すると、家康直属の家臣だった旗本(駿河衆)が江戸に戻りました。駿河衆が、江戸城に近く富士山が望めるこの地に多く屋敷を構えたことから、駿河台と呼ばれるようになりました。
現在の駿河台三丁目と四丁目にあたるこの地域は、明治時代は駿河台北甲賀町、駿河台南甲賀町、駿河台東紅梅町と名付けられていました。甲賀という町名は、忍者で有名な甲賀者が多く住んだからとも、また甲賀者が勤める火消役屋敷があったからともいいます。
太田記念美術館のnoteに、当時の様子が錦絵で紹介されています。
開削を担当したのは、かの仙台藩。(色々と頼りになるねぇ)
下調べはここまでにして、早速、気になる場所に行ってみましょう!
ニコライ堂
お茶の水駅前は、多くの学生さんとビジネスマンが闊歩する活気ある街です。人混みの中、本郷通りの坂を小川町方面へ下って行くと、突然、緑色のドームの美しい建物が現れます。
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ニコライ堂の通称で呼んでいますが、正式名称は日本ハリストス正教会教団「東京復活大聖堂」。ロシア人宣教師によって建てられたロシア正教会(東方正教会)の教会です。
現在は日本正教会となり、日本人が主教を務めています。正教会はカトリックにおけるローマ法王のような総本山を持たず、各国の正教会がそれぞれ独立した組織なのだそうです。
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内部は撮影禁止ですが、公式ページに内部の写真があります。
独特な様式の建物の中、美しいステンドグラスやイコン(聖像画)の数々があり、祈りの場特有の荘厳な雰囲気で都会の喧騒を忘れてしまいます。
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明治24年(1891)にこの大聖堂を建築したロシア正教会の大主教ニコライ・カサートキンの名にちなんで、明治時代から「ニコライ堂」と呼ばれ、東京の名所の一つとして人々に親しまれてきた。
ニコライ堂の建築の設計はロシアの美術家シチュールポフが担当し、帝国ホテルなどの建築を手がけたコンドルが修正して完成させた。(中略)平面はギリシア十字形をなすビザンティン様式で、中央ドームは八角形、他に鐘楼一基があった。ニコライ堂の建設費用(240,000円)は、ロシア帝国領内に住む正教徒たちの献金によるところが大きかったと言われている。
大正12年(1923)の関東大震災は、ニコライ堂をも直撃し、高い鐘楼が中央ドームに倒れかかって建物全体が大破。ニコライ堂の再建に際し、設計は岡田信一郎が担当した。再建後のニコライ堂は、大円蓋の形が変わったほか、鐘楼が小さくなり、その位置がさらに中央ドームに近接している点以外は、最初のニコライ堂の姿をとどめている。
入館料は300円。リーフレットをいただいて、ガイドさんに館内の説明をしていただきました。ドーム下の1階部分は、明治の創立当時のままだそうです。色々と為になるお話がありましたが、中でも興味深かったのは次の2つ。
⚫︎坂本龍馬の従兄弟が最初の信者!? (↓のサイトをご参照下さい。)
⚫︎見晴らしの良い、江戸の火消し屋敷(消防署)跡に建てられた!?
こちらも気になるなぁ…よし、今昔マップで時代を遡ってみよう!
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右上の橋から続く並木道のカーブ付近にある、ポコっとのがニコライ堂。
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戦前の航空写真でもドームがハッキリ分かります。
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ニコライ堂の字が見えます。地図東南側は江戸の町割りの名残りが見えます。
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さらに遡って、ニコライ堂の建設以前の明治迅速測図(明治19年完成)を確認。見比べると、特に何も記載がない。
そして、江戸時代に突入!
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赤い矢印のところに「定火消役屋舗 秋山主殿」とあります。そこがニコライ堂の場所と思われます。言い伝えは正しかったのですね。
江戸時代、高台には大名や有力旗本が、低地には町人たちが住んでいました。その名残りが現在の神田駿河台の街を形成していて、高台には広い武家屋敷を利用した大学が、平地にはオフィスや商業施設が並んでいます。
神田に書店や古書店が多いのは、複数の大学がこの地に学舎を建てたからです。尚、書店が靖国通りの南側多いのは、通りに面した入り口が北を向いているので、本が日焼けしないかららしい。
現在でもニコライ堂の基底部(19.5m)は周囲から5mほど高く、江戸時代には富士山を望めるほどの見晴らしだったと想像できます。江戸の安全を守るのに、打ってつけの場所だったに違いない。
この緩やかな坂道を下って、次は神保町へ向かいます。
ロシア料理店「ろしあ亭」
ニコライ堂繋がりで、ロシア料理を食べに行きました。神保町のろしあ亭です。ランチタイムはお手軽な値段で、ボリュームも品数も多い大満足のお店。1100円でサラダ、ボルシチ、パイ包のクリームシチュー、パン、デザートが付いています。とても都心のレストラン価格とは思えません。
お腹いっぱいになって、とても美味しかったのに…。
明大博物館
店を出て、明大通りの坂道をお茶の水駅方面に向かいます。
こちらが、前々から気になっていた明治大学博物館。中央奥のガラス張りの建物が、博物館のあるアカデミーコモンです。
(人通りの多い所はストリートビューで)
階段上のテラスには、ストリートピアノが設置され、周りには万人が自由に座れるテーブル席やベンチもあります。文化や学問を通じて、地域や社会と繋がろうとする、明治大学の姿勢に強く共感します。
博物館は誰でも見学OK。無料で公開されています。
企画展
ピロティの入り口から建物内に入り、地下に降りると博物館です。
エスカレーターを降りた正面が企画展会場。
今回は、大学所蔵の歴史的資料から、超有名な資料が公開されています。
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すごい。充実の展示だった。
常設展
こちらにも内容豊富な展示があります。
大学史
明大OBの冒険家、故・植村直己氏の色紙。
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昔、近所の文化センターで植村さんの講演会があり、私の母が参加しました。質問タイムで友だちのお兄ちゃんが質問したそうです。
植村さんは、日本にいると暑く感じますか?(冬に行われた講演会)
いい質問だねぇ。実は、君と同じなんだよ。
北極点からアラスカの町に戻って来た時は、暑くて暑くて半袖で過ごしていたんだけど、日本に帰って来てからは、寒くて寒くて…。
考古学部門
明大は考古学研究で有名。その所蔵品は自治体の博物館をも凌ぎます。時代ごとの解説パネルも分かりやすく、理解が深まります。
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明大コレクション
今回、気になっていたのが、古代の馬。
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東国の牧で生産された馬は、富と権力の証。
低地開発が遅れた関東では、台地や丘陵地に牧を作り、谷戸に馬を囲い、谷戸内を開墾して細々と稲作を行ないました。それぞれのテリトリーを守るため、土着の武士団が誕生し、中世へと繋がっていったと考えられています。
刑事部門
大学の前身が法律学校だったこともあり、法律や刑事罰に関する資料も充実。
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近年の研究では、見せしめに使われた道具と考えられているそうです。
次は、マリー・アントワネットの最期を想起させる…
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その他にも…
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子どもの頃見たTV時代劇の拷問シーンがトラウマになって、日本の刑罰道具はあまり正視できない。
とにかく、圧倒される展示品の数々でした。
山の上ホテル
さて、明大博物館を出て山側の道に出ます。道なりに進むと、山の上ホテルが見えてきました。
ベルボーイが目を光らせているので撮影を断念(本当にビビリ)。
友人がここで結婚式を挙げたので、泊まったことは無いけど入ったことはあります。山というのは大袈裟ですが、高台(標高20m)の上に建っています。
太平洋戦争中には海軍に徴用、敗戦後にはGHQに接収されていましたが、接収解除後、1954年(昭和29年)ホテルとして開業。
ストリートビューを真っ直ぐに進むと、山の上ホテルです。高低差7mほど。
神田駿河台の地形
これにて散策は終了。それでは、改めて地形を見てみましょう。
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ニコライ堂は火消し屋敷のあった高台のエッジ、山の上ホテルも明治大学博物館(地図記号)も高台のエッジに建っています。ここは、武蔵野台地面で海進時代に浸食された波蝕台です。
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引いて見ると、江戸城のお堀の跡が現在の街にもしっかりと残っています。
それにしても、標高20m近くある高台を約1.5kmも開削したなんて…しかも人力のみで!(すごいぞ仙台藩)
こちらの錦絵は、水道橋越しの神田駿河台とその奥にそびえる富士の山。
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神田駿河台は、多くの人々の力と駿府を懐かしむ人々の思いで作られ、それが現在も続く素敵な街でした。
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