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ボンクラでも時間は過ぎる2
パトカーに乗せられ最後の抵抗として怒鳴り散らかしたり、捜査を拒否したりしたのだ。
だが、もう手には手錠が掛けられている。
気がつけば留置所に入れられ自分の置かれている立場を知り、今までは顔すら合わすのが嫌だった母親の顔、兄弟達の顔が今更浮かんで来るものなのだ。
考える事はこう、もう皆んなに合わす顔が無い。
なのに会いたくてたまらない。
眠気なんて来ない、ただただ枕が濡れていく。
絶望だ。全てを失った気分だ。
近くにある物の大事さをこんな所で初めて気づいた気がした。
留置所での生活は決して良い物では無い。
ご飯は野菜ばかりのマズイ料理。風呂は週に2日。
今の俺に人権なんて無いんだ。
看守が俺を番号で呼ぶ。
母親が面会に来てくれたらしい。
今更何を言えばいいのだろうか、頭は真っ白な状態だった。
扉を開くとそこには涙を浮かべ弱りきった母親の姿がある、いつもより身体は小さく怯えている。
なのになぜ、早く帰って来てねと俺に声を掛けてくれるのだ。
返す言葉が見つからないただ、涙が止まらない。
20分の面会時間が数分に感じてしまった。
檻に戻らなくていいのならなんだってする。そう思えたが、もう遅い。
20日間留置所で小説を読むか自分を見つめ合うか。
そして20日間を終えて、家庭裁判所へ向かうこのまま外に出れるのか、鑑別所に向かう事になる。
だが容疑を否認する僕はこのまま外には出れない。
一緒に育って来た友達を売る事が出来ないのだ。
他人からすればただの犯罪者の集まりだ。
だが一緒に居たから分かるんだ。
好きで悪さをする奴もいるけど、俺の友達はいつも生活を変える為にやってるんだ。
間違ってるかもしれないけど、選べるほど無い選択肢の中で皆んな生活してるんだ。
誰にも分からないとは思うが、これは口で説明出来るものでも無い。犯罪者だろうが友達なんだ。俺と同じこの虚しい気持ちにさせる事が出来なかった。
反省していないと言われれば仕方ない。
だが出来ないものは出来ないんだ。
その結果鑑別所に向かう事になる。
護送車に揺られながら見る外の景色はいつもより数段綺麗に羨ましく感じる。
鑑別所に着くと何とも言えない気持ちだ。
トイレと洗面台しか無い部屋から
机にテレビに沢山の本に、何故か嬉しく感じる反面、虚しさが込み上げてくる。
19時~21時までのテレビの時間が生き甲斐だ。
外にいる時にテレビなんて見る事も無かったのに。
母親から手紙が届いた。
胸をナイフで刺されている様に胸が痛む。
嘘じゃ無い。
次回に続く。