「POCHI(ポチ)」小花美穂

しばらくは2021年〜2022年にかけて少女まんが館を訪問した際に読んだ漫画の感想を書いていきます。

2021年6月に、初めて少女まんが館へ行ったときに読んだ漫画の感想!

🌷「POCHI(ポチ)」小花美穂

書誌情報:小花美穂「POCHI」(「りぼん」1999年7月号掲載の読み切り)


少女まんが館 初訪問だったため、リアタイで読んでた漫画雑誌をとにかくどれか読みたくて手に取った本誌にたまたま載っていた一作。
まじで初読だった小学生のとき以来、一度も目を通すことのなかった漫画だったのに強烈な設定だったせいかセリフもコマも全部頭に入っていて子供のころの脳みそ凄い…と思いました。
これは読んだ当時長めの感想を書いていたので、それを書き直して転載〜


「POCHI(ポチ)」

これを読んだ小学生のときは暗い話だなってドン引きしたんですけど、今読むとそんなに暗くなかった。小花美穂特有のえぐみがあります。

中学3年生のしっかり者の女の子が主人公。
しっかり者であるがゆえに学校でも家庭でも頼られストレスをためていたのですが、夜、河原で少年に首輪とリードをつけ散歩(ちなみに少年はふつうに立って歩いてます)している女性を見かけてしまい、後日その少年が同じ学校の生徒だとわかる……という、ちょっとぎょっとする話です。

少年から事情を聞くと実はその「散歩」をやってたのはその少年の母で、子供の死(少年の兄にあたる)や飼い犬の死で精神を病み、少年を出産したときから少年のことを死んだ飼い犬のポチだと思いこんでしまっていて…、それで少年は母の前では犬のポチのふりをして過ごしている…ということがわかります。

ストレス過多な主人公は「そんな生活でストレスたまらないの…?」と聞くのですが(もっともだ…)、天真爛漫なその少年は「これが当たり前だから!」と笑顔でこたえます。主人公はその少年が母親から一度も名前で呼ばれていないのだということに胸を痛め、自分は少年のことを名前で呼ぶね、と宣言し仲良くなっていく……という展開です。

改めて読み返すと主人公の女の子には詩人になりたいという夢があったり、主人公の女の子の家族は理解のある人たちだったりして、ちゃんと希望のあるお話だったんだなと思いました。やっぱり子供のころ読んだので、衝撃を受けた首輪シーンに気持ちが全部引っ張られてしまっただけだったのかも。。

小花美穂は「こどものおもちゃ」でも特にそうでしたが子供を取り巻く社会問題に敏感な人で、この作品も10代の子どものストレス問題や自殺問題に反応して考えられた話だと思います。
あと「POCHI」では主人公のお父さんがリストラされてるという設定だったりもします。たしかにこの頃はリストラという言葉を知った最初の時期だったような…。ニュースの内容をよくわかっていないのに、子供なりに『ある日突然お父さんがリストラされたらどうしよう…』みたいな不安が常に心のどこかにあった時代だったような気もします。。こんな感じで、しみじみと当時の世相を振り返っちゃいますね、、


ちなみに2003年に刊行された「POCHI」(りぼんマスコットコミックス)という単行本があります。調べたらこちらでした。
このコミックス版にはおそらく↑この1999年版「POCHI」も収録されていて、かつ1999年版「POCHI」から少し時間の経ったあとの話「POCHI~MIKE編~」も一緒に入っているようです。後日譚があったんだ!と思いました。

リンク先のマンガペディアの登場人物紹介を読むと、1999年版「POCHI」の主人公・清香(さやか)はポチと呼ばれる少年・斗望(とも)と1歳違いだったようです。そっかーー

「POCHI~MIKE編~」は、新興宗教にはまった親の話なのか…。こういう話って子供のころに読むと心に残りますよね・・大人になってからだと現実にある事なのを分かって読むから意識的に現実と比較して読んでしまうけど、よくわかっていない子供のころに読む方が問題として素直に受け止められたり、理解はできなくても自分だったら、または知り合いだったらどうするだろうとふとした時に考えたりするだろうなあと思います。それとも自分には全然関係ない話だとかいって興味すら示さない子もいるのかなあ。無理もないけど、お話が心に残っていたらいいですよね。またその後の人生で、なにかをきっかけに蘇ってくるかもしれないし…

ちなみにリンク先のマンガペディアのページの、ジャンルが「ラブコメ、犬」となっていたのですが、違うと思う……


小花美穂先生の描くコメディシーンって、、「こどちゃ」もですが、すごいつらくてしんどいんだけど『笑うしかない』みたいな切実さがあって、個人的にはあんまりほっこりはしないんですよね。。。狂気を感じるというか…(それはそれで良いことです)
でもそれも子供のころにびびって読んだ記憶のせいでそう感じているだけかもしれない。今読めばちゃんと楽しいギャグとシリアスの漫画だって思えるかもしれないから、読み直していきたいと思います。

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