推しのアーティストを語らせて。
「え、待って。マジか、嘘でしょ、当たるんだ?」
目の前で携帯を見つめながら「ヤバい」しか言わなくなった私を見かねて友達が声をかけた。
「どしたの」
「……第4希望って当たるんだね」
当たったのだ。
国民的アイドル、嵐の20周年ツアーに。
その2ヶ月前。
私はテレビのニュースを見て泣いていた。
嵐、活動休止。
その前の年にジャニーズはいろいろあった。
タッキー&翼の解散・引退、関ジャニ∞の渋谷すばるさんの脱退……。
「アイドルは永遠じゃない」、そう思った1年だった。
でもまさか嵐が休止するなんて思わなかった。
衝撃だった。
でも、テレビの中の彼らは、
とっても普通だった。
私たちが見てきた彼らと何ら変わりない、普段の仲良しな、「5人で嵐」と臆面もなく言い、「こんなことなら喧嘩もしとけばよかったね」と冗談で笑い合える、そんな5人だった。
だから、泣いてしまった。
ああ、彼らはいつでも「アイドル」だ。
もしかしたら本当はたくさんぶつかって、話し合って、言えないことがあったかもしれない。
でも、それをファンには見せない。
いいだろう、それなら。
私はあと約2年、あなたたちを全力で推す。
いつだって私はあなたのファンだから。
さらにその2ヶ月ほど前。
2018年から行われていたコンサートツアーの「追加公演」という名のドームツアーが決まった。
すごかった。
いや、本当に驚いた。
ファンクラブ会員全員が会場に来られるように、そんな思いが伝わる申し込み条件で、「この人たち、すごい……追加公演で5大ドームツアーとか前代未聞過ぎる」と思った。
その時は。
そこに活動休止の発表である。
それは私にとってのコンサートの意味を変えるには十分だった。
会いに行かなきゃ。
そう思った。
当たるはずない。
当たれば定価9,000円のチケットがそれ以上の値段でネットオークションサイトに出ていることはよく見る光景だ。
それくらい行きたい人がいる。
当たるはずない、でももし当たるなら。
彼らに会えるなら。
希望はクリスマス、ツアー最後の公演。
でも、会えるなら。
「いつでもどこでもいいでしょ、行くよ。どこへでも」
第4希望だった。
それが今回初めて当たった。
「今年の運全部使い切ったわ……」
当選メールは3度見した。
正直な感想だった。
しかもこれは3月の話。コンサートは11月。
半年以上先の予定がすでに決まった。
こんなこと出来るのは彼らだけだ。
それからの8ヶ月、たくさん驚いた。
当たると思わなかったワクワク学校に行けた、しかもスタンド2列目。
めっちゃ近かった。
ベストアルバムの特典はすごく豪華だった。
10月にはYouTubeチャンネルが開設された。
デビュー日には初のYouTubeライブに、各種SNSアカウントの開設、全シングルの配信が始まった。
そして新国立競技場でのコンサート開催。
意味が分からない。
本当に彼らは来年休止してしまうのだろうか?
本気でそう考えた。
コンサートまで1週間。
私は美容院に来ていた。
「推しに会うのだから最高の自分で会いたい」
彼らから見えるかは分からない。
いや、見えてないだろう、自己満足だ。
でもあなたたちのファンはこんなにも魅力的だと、伝えたい。
彼らのファンは魅力的だとファンじゃない人にも伝えたい。
コンサートに行くにはお金がかかる。
チケット代、コンサート会場までの交通費、宿泊代。
そして自分のために使うお金だ。
服を買ったり美容院に行ったり。
アイドルは世界の中心だ。
その行動1つで世界が変わる、経済も動く。
経済効果は一体いくらだろう。
多分数億とかじゃないだろうか。考えただけで恐ろしい。
実際に会話できるわけじゃない。
俳優さんや声優さん、モデルさんなどはSNSをしている人も多い。
でも今までSNSとかで繋がれた存在だったわけじゃない。
私のことを知ることなんて一生ないだろう。
それでも私は彼らに会うためにお金を使う。
意味が分からないと言われるかもしれない。
でもそれが推しで、アイドルという存在だと思う。
あと1週間で私は彼らに会うために札幌に行く。
遠い。遠すぎる。
席は行ってみないとどこか分からない。
アリーナ席か、スタンドか。それとも天井席か。
チケットは行ける権利をもらえただけで直接見える位置かは分からない。
それでも私は会いに行く。
だって好きだから。
世界の中心に向かって思いを届ける。
今までありがとう。
大好きだ。
これからも応援してる。
また会える日まで。
ありがとう。