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『ナイトガーデン』を比べてみる/一穂ミチ巡り

『ナイトガーデン』は、フルール文庫版とディアプラス文庫版の2種類がある。

フルール文庫版は、2017年にKADOKAWAメディアファクトリーから発売。その後刊行停止となり、絶版。ディアプラス文庫版は、2019年に新書館より発売されている。

ディアプラス文庫版は、『ナイトガーデン 完全版』として出版。ディアプラス文庫版「ナイトガーデン」「ブライトガーデン」「あとがき」への加筆修正、「とげたち」の書きおろしなどの変更がある。


表紙・イラストの違い

フルール文庫版

・フルール文庫版の表紙は、イラスト+ナイトガーデンの文字でシンプルな作り。イラストは縦に配置されており、落ち着いたデザインになっている。空白や人物は明るめではっきりと、グリーンはセピア調でくすんでいるのが印象的。木立の間に、柊と和章がいるような表紙。

・本文の「ナイトガーデン」は、表紙とバージョン違いの中扉、挿絵が9点。こちらの中扉は、柊も和章も目を閉じたイラストになっている。

・本文の「ブライトガーデン」は、表紙とバージョン違いの中扉、挿絵が1点。こちらの中扉は柊が目を開いたイラストになっている。

・あとがき(のちのアイノネ)は、和章のイラストが1点。この時点でのあとがきには、特にタイトルがつけられていない。

フルール文庫版は、表紙が渋めな緑だったり、目次・挿絵の印刷が暗めだったりと丁寧でひそやかな印象が強い。セピア調な空気感は、石蕗先生を彷彿とさせる気もする。フルール文庫版は、ディアプラス文庫版の書下ろしがない分未来の話が少ないので、このひそやかさがしっくりくると感じた。前述したとおり、表紙~バージョン違いの中扉で柊の表情にバリエーションがあるのも、どこか物語性を感じてお気に入り。

ディアプラス文庫版

・ディアプラス文庫版の表紙は、イラスト+英字表記・日本語表記のタイトル。「ふったらどしゃぶりスピンオフ」の文字も入っている。イラストは斜めにに配置されており、動きのあるデザイン。フルール文庫版に比べ、現代的な印象が強い。木立の向こう側に柊と和章がいるような表紙。

・口絵にカラーイラスト1点。

・本文の「ナイトガーデン」は、植物の中扉、挿絵が9点。フルール文庫版のイラストを反転させたりアップにしたりといった違いがある。

・本文の「ブライトガーデン」は、柊の中扉、挿絵が1点。

・本文の「とげたち」は、植物の中扉のみ。

・あとがきの「アイノネ」は、和章のイラストが2点。一つはフルール文庫版の『ふったらどしゃぶり』のあとがきカットから。

ディアプラス文庫版は、表紙が鮮やかな緑だったり、目次や中扉が白基調で明るい印象が強い。挿絵も明るめの発色、顔がアップになるようなカットに微修正がかかっているといった違いがある、フルール文庫版に比べ、「ブライトガーデン」「とげたち」「アイノネ」と未来の話が続くのでこの明るさは希望につながるように感じた。(もちろんレーベルのルールが基本だとは思う)口絵のカラーイラストは、特に特定のシーンは見当たらなかったが、P323・P345あたりかなと思っている。

本文の違い

大まかな点は以下の通り。

・フルール文庫版のP274の位置に、24ページ分の加筆。
(ディアプラス文庫版P245‐269。あまりに自然すぎて最初気づかず)

・書下ろし「とげたち」の追加。
(お父さんが含み笑い、藤沢くんももの好きだね、が好き。)

・あとがきのこばなしへ「アイノネ」のタイトル追加。

・フルール文庫版、ディアプラス文庫版それぞれのあとがきコメント。
(一穂さんの挿絵へのコメントに毎度あかべこのごとく頷いてしまう……)

関連情報

※WEB小説サイト『fleur』は閉鎖。

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