はじめに/一穂ミチ巡り
一穂作品に出会い、かれこれ10年。
2024年の直木賞受賞の記念に、無糖と玄が「作品のここが好き!」をまとめていくnote。
初回は自己紹介から。
初めの1冊
初めて読んだ作品は、2014年7月発行の『ナイトガーデン』。
のっけから不真面目な話で大変恐縮だが、高校をさぼる時行きつけにしていた本屋で出会った。その本屋で、ナイトガーデンは面で陳列されていた。平積みではなく、面である。それも2‐3段を使って――と書いたが、いくぶん記憶は美化されているかもしれない。ただ、竹美家ららさんが描かれた表紙の深い緑が、木立のように目をひいたのを覚えている。
また、この時のナイトガーデンには、「三浦しをん推薦! 一穂さんにまた泣かされた」の帯がかかっていた。三浦しをんと言えば、『まほろ駅前多田便利軒』(2006年)、『本屋さんで待ちあわせ』(2012年)を愛読していた。「BLも読むの!?」と衝撃を受けつつ、「これはおもしろいのかも」とレジに持って行った。
そんなわけで一穂作品まっしぐらな日々は、竹美家ららさんと三浦しをんさん、そして本屋さんによってスタートしたのである。
2冊目から今日まで
『ナイトガーデン』に打ち震えた翌日、ブックオフに走った。「本屋で買え」という突っ込みが耳に痛いが、高校生なので許して欲しい。
最初の頃は、あらすじと財布の中身を見比べ、うんうん迷いながら買っていたように思う。転機は『おとぎ話のゆくえ』。あらすじの「お殿様」に購入を悩んだが、大変素敵な一冊だった。完敗だった。これを機に、お年玉をひっくり返して既刊をそろえ、新刊が出れば本屋に走るようになったのである。
そうして迎えた2024年。直木賞の受賞。
たいがい薄情な自分もさすがに感動して、出会ってからの10年に乾杯した。
これから
noteの冒頭、「一穂作品のここが好き!をnoteにまとめていく」と書いた。書いておきながら、「本当にできるのか?」と悩んでいる。
感想を文章にするのは難しい。わーっと感じた衝動を文章にすると「なんか違うな……」となる。ましてやnoteに綴ろうとすると、かっこつけ精神も顔を出してくる。
自分は書評家でもないし、エッセイストでもない。読書感想文が得意だった記憶もない。noteで好きなところを書いても、きっと言葉が足りない。
それでも、一穂作品が大好きだ。
なんとか伝わるように、少しずつ、少しずつ、言葉を重ねていきたい。