見出し画像

ビワ枝葉の草木染め

草木染め体験ブース出展

2020年12月12日(土)に開催された「斑鳩プレーパーク」にて、
「つくる暮らしの会」として草木染め体験ブースを出展しました。

プレイパークを主催している「いかるが子どもの遊び場づくりの会」さんからお声かけいただき、ありがたいことに子ども達と「つくる」を楽しむ機会をいただきました。

今回は、プレイパークでの草木染め体験の様子を中心にご報告します。

プレイパークのフィールド内に自生する植物の中から、今回は初夏に黄橙色の甘い実をつける「ビワ」を染料に選びました。
ビワの枝葉を煮出した染液で、白い綿のガーゼハンカチを染めていきます。


草木染めでは、植物の外見からは分からない、うちに宿る色を発見できます。
ビワの葉は「濃い緑色」、枝は「茶色」。
このビワの枝葉で染めると、白いハンカチは何色に染まるでしょうか?

画像2

画像3



(いきなり)結果、今回はこのような色に染め上がりました。

画像3

とても優しく綺麗な色が出てくれました。
化学染料では出せない、複雑で微妙な色合いが余計に愛着を感じさせます。


3色の染め分け

ところでなぜ3色あるのか、と疑問に思われたかもしれません。
すべて同じビワの染液を使っていますが「媒染剤」が違うためです。

草木染めでは、染液の色を生地に定着させるために「媒染(ばいせん)」を行うことが通常です。
「ばいせん」と聞くと、コーヒー豆などの「焙煎」が思い浮かびますが、
草木染めでの「ばいせん」は、媒染剤の主成分である金属イオンが、天然染料と結合することで、色素を発色させ、かつ繊維へ色を固着させる工程のことを言います。
要は、洗濯や汗・日光などによって色落ちしてしまうことを防ぐ目的で行う工程です。

使用する金属(媒染剤)の種類によって、染め上がりの色が変わります。
今回は「鉄」「銅」「灰汁(あく)」の3種類の媒染剤を使いました。 

 ・鉄 … 薄いグレー
 ・銅 … 薄いオレンジベージュ
 ・灰汁 … 薄いピンク       

3色から好みの色を選び、模様をつけたい場合はビー玉や輪ゴムを使って絞りを入れました。

画像11

画像12


草木染め体験の様子

では、今回の染め体験の様子を順を追って紹介します。

画像23


1、素材準備
ビワの枝葉をあつめ、細かく切ります。
染めたい生地の重さの約3倍の重さの素材を準備しました。

画像4

画像5

収穫したばかりのフレッシュな葉と、数週間前にあらかじめ収穫して乾燥した葉も使いました。
乾燥したものでもちゃんと色が出るようです。


2、染液づくり
お湯で枝葉を約50分間煮て染液をつくります。

画像6

画像7

画像8

見た目も香りも、お茶のような、透明感のある茶色の液体になりました。


3、染め
ビワの枝葉を煮出した染液に、ハンカチを浸していきます。
鍋の蓋を開けると、うっすら甘く美味しそうな香りが広がります。
「くさ〜っ!」という子どもの声も聞かれましたが(汗)、ビワ茶もあるぐらいなので、とってもいい香りですよ?
約30分間、ハンカチを煮ます。

画像9

画像10

画像13

ハンカチは染液と同じ薄い茶色になりました。


4、媒染
いよいよ、好きな色になるように、3種類から選んだ媒染液に約20分間浸します。
薄いピンクに染まる「灰汁」が子ども達に一番人気でした。
灰汁に入れた瞬間から、あっという間に、ハンカチの色が茶色からピンクに変わり、びっくりする子ども達。

画像15

画像15

画像16

画像17

みんな好みの色に染まって大満足の様子です。


5、洗って干す
最後に、水でよく洗い、干します。

画像18

画像19

画像20

フィールド内のビワの木にロープを張って干しました。
自然の中で風に揺れる優しい色のハンカチ、眺めているだけでなぜか気持ちが満たされます。


草木染め体験ブースは、受付開始後すぐに定員に達してしまうほど、子ども達に興味をもってもらいました。
参加してくださったみなさま、ありがとうございました。
この体験を通じて、身近な自然への興味や「つくる」楽しさ、モノへの愛着を感じてもらえたら嬉しいです。

私たちも、今回のブース出展を機会に「つくる暮らし」を皆さんともっと共有していきたいと、思いを新たにしたところです。

お声かけくださった「いかるが子どもの遊び場づくりの会」、活動を支援してくださった斑鳩町まちづくり政策課、住民活動センターの皆さま、ありがとうございました。


草木染めの奥深さと不確かさ

私たち「つくる暮らしの会」は、これまでも自分たちで草木染めをしたことは何度かありましたが、自分たち以外の一般参加者さんに体験していただくという経験は初めてでした。

自己流で楽しんできたのとは違い、草木染めについて改めて調べたり、何度も実験して、成功するかドキドキしながら当日に臨みました。

試行錯誤の結果、今回は上述のような方法で染めることに決めましたが、その過程で気づいたことは、草木染めの奥深さと不確かさです。

ビワの草木染めはピンク色が出せるらしい、ということは分かっていましたが、
どうすれば綺麗なピンクに染まるのか、色々と調べても、調べ先によって内容が違いました…。
素材の量、煮る時間、生地の下処理方法、媒染方法もさまざま。
さらに葉を採取する季節によっても出る色が変わるというので、実際にやってみないと分からないことだらけでした。

草木染めは完全に化学の世界です。
基礎、原則をしっかり理解しないと、その都度の行き当たりばったりの結果に出会うことになります。
あまり分からずに楽しむのも良し、学びを深めるのも良し、です。

私たちは現時点ではあまり分からず楽しんでいる状態に近いのですが、もっと深く理解したいと思っています。
ただ、おそらく理解したとしても、さまざまな条件の組み合わせにより、現われる色の幅は無限大、まさに一期一会の色との出会い…
学びの道は、気が遠くなるほど奥深いものであることは確かなようです…!

今回私たちが、どんな方法を試したり失敗したのか、試行錯誤の詳しい内容はまた別の機会で紹介できたらと思いますが、
今回辿り着いたレシピをまとめると下記となります。
もちろんこれが正解でないですが、参考になれば幸いです。

スキャン 2

興味を持たれた方は、ぜひ、別の植物でも試してみてください。
基本的にはどんな植物でも色は出ると思いますが、玉ねぎ、ブドウ、アボカドの皮など、家庭で用意しやすい素材でとても綺麗に染まるものもあります。
媒染剤は「ミョウバン」がスーパーで簡単に手に入るのでおすすめです。

染める生地は、今回は綿100%のハンカチでしたが、動物性の繊維(絹や羊毛など)の方が色がしっかり入ります。
染まりにくい生地でも、下処理によって染まりやすくする方法もあります。

気になるのは染めた色の色持ちだと思います。
素材や下処理、媒染等による色持ちの違いについては、私たちもまだ経験が足りていないのですが、
草木染めにどこまでの耐久性を求めるのか、という視点から、気がつくことがありました。


長くモノと付き合う、自然に任せる

以前、とある草木染め教室に参加した際に、講師の先生から教わった印象的な言葉があります。

「草木染めは色落ちします。そういうものです。
色が落ちたら染め直す。そうして昔の人は暮らしてきたのです。」

これを聞いた時、ハッとしました。
洗濯しても長く色が変わらないことが当たり前の化学染料に慣れすぎて、
無意識に同じことを草木染めに求めている自分に気がつきました。

もちろん色落ちしにくいに越したことはありませんが、それは絶対ではないのです。


色が落ちたら染め直したらいい

長くモノと付き合う、自然に任せる、とても素敵なあり方だと思いました。


化学染料が海外から日本に入ってきたのは明治時代だそうです。
現在流通している繊維商品の99%以上は化学染料で染められていますが、
それ以前はみんな天然染料による草木染めでした。

化学染料、天然染料、どちらにも良い点・欠点があります。
草木染めが当たり前だった頃の暮らしに戻ることは難しいですが、
その暮らしから生まれる考え方や態度に学ぶことはとても多く感じました。


筆者:fujino

つくる暮らしの会HP  https://tukurukurasi.org/

画像22

画像24



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?