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【シチュボ】雪の妖精に惚れられて、あちらの世界に連れていかれる

()は、聞き手側のセリフ想定。
男女どちらでも、いけるように書いています。
後半、耽美ホラー系。
雰囲気が変わる前後の役作りで、
台本のカラーが変わりますね。

あぁ、やっと帰ってきた。
待ちくたびれたよ。

(誰? どこから入ってきた!)

どっから入ってきたって……どこからでも。
ほんの少しの隙間があれば、入ってこれる。
たとえば、玄関の郵便受けや、窓の隙間
通気口あたりも通り道になる。

(は? できるわけがない)

できっこなくは、ないよ。
だって、ヒトじゃないからね。

(ヒトじゃない?)

わからないのも当然かな。
いまは、ヒトの姿をしているからね。
ヒトというものは、見た目に惑わされやすい。
だから、受け入れてもらいやすい
ヒトの姿をとったんだ。
ネコやネズミの姿のほうが、よかったかな?
でも、それじゃあ、話ができなくなるか。

(け、警察に連絡を)

ちょっとちょっと、警察とかやめておいたほうがいいよ。
呼んだって、なんの役にも立たないんだから。

(どういうこと?)

ヒトを取り締まるものでは、捕まえられないってこと。

(は?)

雪の妖精だから、俺(私)

(……え?)

そういうもの、信じる人が少なくなっている時代だから
頭おかしいとか、思ってるよね。
だけど、これが本当なんだなぁ。

(えっと……)

なにげなくしたことだろうけどさ。
雪だるま。
ちいさいのを、日陰に移してあげたの
覚えてない?

(あの、昼間の……)

そう、昼間の。
子どもがつくった、たわいない不格好な雪だるま。
あれに込められた子どもの純粋な気持ちを
君は助けてあげたんだよ。

なかなか、ないことだよね。
作り手の気持ちを思って、少しでも長く形をとどめておけるように
なんて……さ。

ほら、ヒトの世界では、ふいに目の当たりにした優しさに
心を奪われるというのが、常道なんだろう?

(常道というか、まぁ……そういうことも、あるけど)

この俺(私)、雪の妖精も、ヒトとおなじく心を揺らして
キミのぬくもりが欲しいと思ってしまったんだよね。

(雪の妖精? ぬくもり?)

雪の妖精が、ぬくもりを求めるのは、おかしいと思う?
溶けてしまうから、イヤなんじゃないかって。

妖精ってことを信じてもらうには、どうすればいいかなぁ。

あ! ちょっと。
ストップ、ストップ!
ファンヒーターのスイッチを入れるとか、殺す気?
まったく……ひどいなぁ。
雪だるまには優しくしておいて、
雪の妖精には優しくしてくれないなんて

もしかして、見た目が好みじゃない……とか?

信じてないからかぁ。
というか、順応性が高いね。
怪しい人間だから、刺激しないようにしているだけって
本人に言う?

とりあえず話を聞いてくれるんだ?

コーヒーありがとう……って!
ホットは熱いから!

猫舌とか、そういう話じゃなくて、溶けるから!
飲んだら溶ける……の、前に!
カップで火傷しちゃうから。

牛乳を入れたら飲めるとかではないんだよ。
雪の妖精だから、ヒトにとっては適温でも
こっちにしたら熱湯レベルになるんだって。

ヒトにとっての、ぬるま湯でも
雪にかけたら湯気が出て溶けるのとおなじ。

はぁ……用意してくれたものにケチをつけるのは
申し訳ないとは思うけど
ありがたく受け取って口にするのは
俺(私)からしたら、自殺行為だから。

だから、本当に雪の妖精なんだって。

ほら……手、冷たいよね。
外で冷えたってレベルじゃなく
氷みたいだってこと、わかるよね?

両手で頬を包まれたら、冷気の風に吹かれているみたいでしょ。

これが、雪の妖精だっていう証拠。

手の冷たさだけじゃ、信じられない?
じゃあ、体に触ってみて。

ほら……君の手で、俺(私)に触れて。
ちいさな雪だるまを、壊れないように包んだ時みたいに。

ねぇ……頬に触れて。
冷たいよね?
頬から首まで、撫でてみて。

ふふ……くすぐったい。

鎖骨に触れて。
ここまでは、外気で冷えていてもおかしくない……か。

じゃあ、もっと先。
鎖骨より下に触れて。

緊張しなくていいよ。
もっと、君に触れてほしいんだ。
体中、どこもかしこも。
君が雪だるまを包んだ手つきで、抱きしめてほしいんだ。

ほら……ねぇ……もっと、服で見えないところまで、指を伸ばして。
雪の妖精の肌が、どれほど冷たいかを味わって。
君の手のぬくもりを、俺(私)の全身で味合わせて。

ああ……俺(私)も、君のすべてを撫でていいよね?

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