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顏の知らないキミへの手紙 2

夢を見たんだ。

小さなサルの赤ちゃんが、部屋のすみっこにいて
背中を向けてブルブルふるえている。
「ぬれてるじゃないか!なんでこんなとこに?」
ボクはすばやく手を伸ばして
くちびるがむらさき色のそのコを抱きかかえた。

。。。

ボクは、ずっと良い子だった。
おとうと、いもうと思いで
だれとでもなかよくやれる
お父さん、お母さんのじまんの子。

わがままは言わなかったし
言いたいとも思わなかった。

そのときはね。
そう思い込んでた。

まわりに思われているとおりの
良い子のままでいなくちゃって思ってた。
そうすることに
うれしさもあったからね。

でもさ、それだって思い込みだった。

長い間、思い込みをつづけたボクは
相手の良いようにすることが
ボクのしたいことだと思うようになってた。

自分の意見はそれだって。

だけど、それから何年もたって
ようやくわかったんだ。

ボクは、ただ、こわかった。
言いたいことを言ってきらわれたらどうしよう。
悲しませたらどうしよう。
困らせたらどうしよう。

ボクは、ただ、まわりを信じていなかった。

ボクは、ただ、めんどくさがってた。

ボクは、ただ、自信がなかった。

ボクは、ただ、プライドが高かったのかもしれない。

そうやってごまかしていくうちに
ボクは、ボクの気持ちがわからなくなっていった。

いつの間にか。

そうするとさ
この世界に生きている実感がなくなってくる。

くもりガラスの向こうを眺めているような
ぼんやり、ふわふわした中で

なんとなくすごす、毎日。

なんかちがう、毎日。

ふ~~~

息をしよう。

ボクらは、今、ここに生きている。

思い込みをとっぱらって
吐く息にのせるんだ。

しずかに、ゆっくり吐ききったら
しずかに、ゆっくり入ってくる。

ココロにじわじわしみ込んで
ボクが、キミが、目をさます。

その時が、来た。。。

小さなサルの赤ちゃんは
グレーと青のすきとおった大きな目で
ボクを見つめてたんだ。

力強く、ボクにしがみついてさ。

あっためてあげなくちゃ。

              親愛なるキミへ
              みっつのはる より




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