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映画・『正体』を観て 「技あり!!」と叫ぶ

去年の暮れ頃に読んだ小説「正体」。
映画化されているのは知っていたが
ネトフリで配信されていたので即食い付いた。

大概、映画化された映画は
二番煎じっぽく
「原作者の意図ってそこだっけ?」
とか
「小説ではもっと苦労して犯人捜ししたんだ、その苦労が分からなきゃ、この結末は深くないわー」
とか
原作の感動が損なわれた印象になり
己はただの読者であり視聴者なくせに
評論家ぶった物言いで
言いたい放題になってしまうのだが

この「正体」は違かった


そういや時々
脚色の背負い投げっぷりに
イッポン!! と叫びたくなるような
原作を越える映画に出会う。

この「正体」
小説では「あえてこの辛い結末にした」
とあとがきで言っているので
映画制作者は原作者に許可取ったんだろうなと邪推。

で、どうやって許可取ったんだろう
とか
呼び出したのかな
とか
ペコペコへりくだったのかな
とか

世界の狭い小市民のごとく
小さな器量で小さな想像をする。

だって、この結末の方が満足できるもの


そう感じるにはポイントが3つある。

まず登場人物の配置換え。

チカンの冤罪で苦しむ弁護士が紗耶香の父親になっていた所と、
警察にチクる男は元彼ではなく週刊誌の記者になっていた。
それ上手い。と思った。

次に、端折り方が秀逸。

水産加工会社(唯一の目撃者の妹に近づく)の部分は回想で時短している所。
大概、苦労する部分を簡単に端折るとラストzの盛り上がりが軽く感じるのだが、
ストーリー的に「唯一の目撃者の妹」は単なる通過点なのだと
この映画で初めて知った。というか、目からウロコだった。
確かにそうだ! と合点がいく。
しかも敵である刑事・又貫にものっぴきならない事情が分かってくる。
誤認逮捕を認めない上司の存在だ。

そして鏑木の本心(セリフ)。

信じたかった、この世界を。正しいことを正しいと主張すれば信じてくれる人がいることを

とうとう捕まった鏑木は又貫の心をも変える。
原作にはない創作部分だ。

このセリフは秀逸だ。

状況や心情をひっくり返す起承転結の「転」部分。
ここから一気にハッピーエンドへ向かう。


何度も書いているが 脚色は難しい。
難しいからこそアレコレ考察するのだが
この「転」には

技あり!!イッポン!!

と叫びたい。




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