【日常12】刀剣乱舞と刀剣博物館 左文字編
国宝 太刀銘 筑州住左(号江雪左文字)
(附)黒漆研出鮫鞘打刃拵
長さ:78.2cm
伝来:板部岡江雪斎→徳川家康
→紀州徳川家初代頼宣
所蔵:ふくやま美術館(小松安弘コレクション)
左文字の在銘作のほとんどは短力であり、本作は
希少な太刀の作例である。本来は二尺九寸ほどの長い太刀であったと思われ、現状では少し磨上げられているが、流麗な鏨さばきによる「筑州住左」の銘字が茎先に残っている。鍛えは、板日がつんで地景がよく現れる。刃文は、のたれを基調としながら、尖りごころの互の目が交じり、全体に沸がよく付いて、条属・砂流しがよく入る。表は腰売から大きく乱れて、わずかに飛焼も入る一方、裏は表より穏やかながら、中ほどで大きく乱れるなど、表裏で印象を違える点も見どころといえよう。
号は、後北条氏に仕えた板部岡江雪斎の所持に由来する。その後、徳川家康に渡り、十男の徳川頼賞へ家康手ずから与えられた。そして頼宣は、大坂の陣で初陣を迎えるにあたり、本作を帯びて臨んだとされる。
国宝 短刀銘左(号 じゅらく(太閤左文字))
筑州住
(附)葵唐草文金襴包短刀拵
長さ:23.6cm
伝来:豊臣秀吉→徳川家康→徳川秀忠
→遠江国浜松藩井上家
所蔵:ふくやま美術館(小松安弘コレクション)
同時期の他の刀工の作と比べて、かなり小ぶりな短であるが、その小ささを忘れさせるほどに姿が美しく、迫力が凝縮した一日。とりわけ、やや枯れたふくらの曲線は、鋭く突き上げて長く焼き下げる帽子の形と見事に調和して、本作の印象を決定付けている。鍛えは、よくつんだ小板目に地沸が細かく付き、地景が入って明るく冴える。また、刃文は小のたれに尖りごころの五の目を交え、全体に匂深く小沸がよく付くが、ふくら付近では粒の大きな沸が地にこぼれて一つの景色をなしている。豊臣秀吉の蔵力を絵図にした『光徳刀絵図』のうち、元和年(1615)の奥書のある通称埋忠寿斎本に本作が掲載されていることから、吉のにあったことが分かる。秀吉から徳川家康に贈られたのち、2代将軍秀忠にわたり、さらに秀忠からの拝領品として、遠江国浜松藩主井上家に昭和初期まで伝わった。