薬屋のひとりごとを考察する1鉛中毒
📖引用
「さすがに詳しい症状はわからないけど、頭痛とか腹痛とか、吐き気もあるっていうけど」
📖引用
美しい顔は歪むとそれは恐ろしいものになる。幽鬼のような白い肌と悪鬼のごとき眼差しは、頬に手を添える美女に向けられている。手が触れている頬は赤くなっていた。平手で叩かれたのだろう。
📖引用
乳幼児の死亡、頭痛、腹痛、吐き気。そして、梨花妃の白い肌とおぼつかない身体。
📖引用
『おしろいはどく、赤子にふれさすな』
📖引用
「毛穴から、口から、鼻から毒の気が全身に回るからな。お慕いする梨花さまと同じ、枯れ枝のような手と落ちくぼんだ眼窩と血の気の失せた肌が手に入るぞ」
「そ、そんな……」
粉だらけになりながら、侍女が言った。
「なんで禁止されたかわかってんのか、毒だっつってんだろ!!」
猫猫は怒っていた。侮蔑の目で自分を見られたことでも、持ってきた粥をひっくり返されたことでもなく、何も考えず自分が正しいとしか思っていない莫迦な侍女に怒っていた。
📖引用
問いかける声に対し、猫猫は
「もしかして、亡くなられたかたは、貧血や腹痛などを繰り返していませんでしたか?」
とたずねた。
「そうですが」
「ほかに吐き気や、気鬱など見られませんでしたか?」
猫猫の質問に対し、三兄弟が顔を見合わせるところを見ると、そうなのだろうと確信する。そして、猫猫は置物のように置かれていた結晶を思い出した。
📖引用
職人が死んだ理由について、猫猫はあらかた想像がついている。鉛による中毒死だ。これは、職業病と言われればそうなのだが、そうでない可能性も出てくる。
💊鉛製の白粉
江戸時代の白粉(おしろい)には、鉛製のものと水銀製のものがありました。本の中で書かれているのは、鉛製の白粉のことです。
💊鉛の毒性
鉛は、吸入摂取、経口摂取。
経皮吸収は、ほとんどないとされる。
摂取すると血液及び軟部組織への速やかに取り込まれ、骨に緩慢に再分布される。
経皮吸収は、ほとんどないとされる。
毒性は、血液毒性(造血組織に対する鉛の影響はヘモグロビン合成の減少)、知能/行動学的影響、神経毒性(脳症、運動機能障害、認知機能等への影響)、腎毒性、生殖発生毒性、発がん性(疑い)がある。
🎓考察
貧血を起こすので血の気のない顔になり、毒に耐性がない赤子の命も奪うこともあるでしょう。大人でも手足の痺れや吐き気などを起こし、最悪の場合、死に至ります。
📖引用
現在、毒おしろいは壬氏の言により、後宮内では使用不可となっている。卸した業者があれば、ひどく罰するよう徹底したらしい。今後、手に入れることは不可能だ。
🎓考察
現在、日本では鉛中毒予防規則が制定されています。鉛を吸入又は経口摂取する可能性がある場所では事業者が経口や吸入しないように必要な策を講じる必要があります。また、労働者がいる場合は血液検査等でモニタリングし、数値が高いものは外す、適切な除染処置を受けさせるなどを行う必要があります。