「あわゆき通信」鑑賞楽~「六花賞」受賞者による作品鑑賞

本日、創刊いたしました「あわゆき通信」(わたしと一緒のお誕生日にしました)。

今回ネプリに参加した作家さんは、昨年、「さっぽろ俳句倶楽部」が開催した「俳句コンテスト」の作品賞、互選賞の受賞者です。

が、忘れてはいけません!「俳句コンテスト」にはもう一部門「選評賞」の受賞者さんがいらっしゃいます。

というわけで、選評賞にあたる「六花賞」を受賞した紀宣さんに、各作品より1句抽出しての鑑賞文を書いていただいてますので、ご紹介しますね。

ネプリを出してから読むか、読んでからネプリを出すかは、お任せします(笑)創作と鑑賞をワンセットで磨き合う「さっぽろ俳句倶楽部」の雰囲気を感じていただければ幸いです。

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「あわゆき通信」鑑賞楽~紀宣


「あわゆき通信」創刊号の3名の句を楽しんで鑑賞させていただく紀宣です。

よろしくお願いいたします。

 

「秘境」 瀬戸優理子より 


 遭難のような顔して冬かもめ

秘境とは誰も知らない土地。一句目の「オリオンのしずく」の句も素晴らしいが、掲句の「遭難のような顔」に衝撃を受けた。
鴎は北からの渡り鳥。心身ともに傷つき海を見ているのか。
その冬かもめを優しく見守っているのだろうか。それとも傷ついている人を冬かもめとし、その人を癒そうとしているのだろうか。
どちらにしても深く想像できる句である。
秘境の中にある厳しさと優しさを感じる一句だ。

 

「再生」 岩永靜代より

 
 煮凝にプランクトンの影探す

「再生」という題名の七句に哲学的な香りが隠れている。一句目の「果ててゆく」の句には「再生」へのこだわりを見た気がする。
掲句は中七のプランクトンが句の中心だ。プランクトンは肉眼で見えるはずがない。好奇心、生命を考える作者のこだわり、探求心と感じた。
プランクトンの影とは徐々に進化していく生命の影のことかもしれない。その探求心を持つように日々の生活をしていきたい。

 

「今もすきやねん」 山田すずめより


 えびせんを拳で叩き割り初冬

懐かしの駄菓子がそれぞれ句に入り、ノスタルジックな雰囲気が全体に出ている。この駄菓子!と思いながら鑑賞させて頂いた。
掲句は駄菓子「えびせん」を叩き割る、しかも拳でだ。友達同士だろうか、衝動的な気持ちからだろうか、とても読み手を楽しくさせる。
季語の初冬も関係するだろう。徐々に寒くなる日をえびせんを割ることで我慢しているとも読める。
駄菓子を我流に食べたくなる一句だ。

 
★紀宣(きせん) プロフィール

京都府在住。天塚同人、篠同人。
俳句をマイペースに25年楽しむ。クラシックと鉄道とチョコとコメダコーヒーが大好きな京都人。好きな言葉は「なんくるないさー」たこ焼にはまりかけている。

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