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憧れの人を目指すのはいいが、憧れの人になってはいけない

「はあ…Twitterでよく見るあの人、めちゃくちゃ上手いなあ…。しかも自分よりも年下か。なんて俺は下手くそなんだろうなあ…」

こんな風に自己嫌悪になって、マジックが嫌になりそうな方って、何気に多いのではないでしょう。

ちなみに僕もよく思います。なんか自分のタッチって硬いんですよね。喋りなし手元のみだと、よりそれが顕著に現れます。

でも、Twitterを開いたら、めちゃくちゃタッチが綺麗だし、自分には思いつかないような斬新なアプローチで現象を起こしていたりと、たくさんの上手い人の映像を目にします。

その度に、「こんな自分が情報発信しててもいいんだろうか…?」と思ってしまいます。


しかし、本当にそうなんでしょうか?上手い人の演技を見て、自分を卑下しがちな人にぜひ見てもらいたいです。

この記事を読んだ後、本来のマジックの楽しみ方を思い出したり、ちょっと前向きな自分になれていたら、僕は嬉しいです。


上手い人の最初の動画を見よう

とても勇気が出る方法を教えます。それは…

上手い人の最初の頃の動画を一通り見ることです。ちょっとわかりやすい例を出してみましょう。(マジシャンを実際に例に挙げると怒られそうなので別分野で。笑)

今となっては超有名YouTuberとなった、はじめしゃちょー。彼の初期の動画って見たことありますか?もし時間のある方は2分ぐらいなのでぜひ見てみてください。

どうでしたか?これは9年前の動画です。今とは全然違いますよね。ハイテンションじゃない。音楽なし。字幕なし。OPもEDもなし。これが面白いかどうかは人それぞれですが、多くの人がきっと「今の方が面白い」と答えるでしょう。

これをみたら「あれ、自分にもできるんじゃない?」と思った人もいるはずです。でも当時YouTuberという職業は、馬鹿にされてきて、誰もやりませんでした。そんな中、多くのYouTuberさんはずっと続けてきた結果、富と名声を手に入れたのです。


これはマジシャンも一緒です。最初、あの上手いマジシャンも、マジックを覚え始めた頃は、ダブルリフトも綺麗にできず、パスも丸見え、リテンションもうまくいかない、そんな下手くそなマジシャンだったんです。

でもそんなマジシャンが、他の人よりも努力して、他の人よりも勉強して、他の人よりも経験を積んだから、上手くなったのです。だから、あなたにもチャンスはあるはずなのです。上手くなるチャンスは、皆平等にあるのです。


マジシャンは、クリーニング屋のバイトをしていた人が多い

「でも、自分はあの人みたいに手先が器用じゃないからなあ…」
「あの人みたいに上手く喋れないもんなあ…」

この記事を読みながらそんなふうに思ってた人もいるかもしれません。でもそんなことはどうでもいいのです。


憧れの人を目指すのはいいが、憧れの人になってはいけないのです。

タイトル回収です。何もその人になる必要はないのです。同じようにできなくても全然いいのです。先程のはじめしゃちょーの例を出せば、はじめしゃちょーを目指すのはいいけど、はじめしゃちょーになってはいけないのです。

完コピをして、その人のようになっても、基本的に二番煎じですし、その人の劣化コピーになるだけです。マジックをしていると、これがとっても多くなります。

それをよく表したマジック業界のジョークがあるんですが、知っているでしょうか。


「日本のマジシャンは、みんなクリーニング屋のバイトをしている」

聞いたことがある人も多いでしょうし、心当たりがある人もいるかもしれません。

マジシャンの前田知洋さんが、トーン&レストアのマジックをする時、トランプの折れ目を消す現象の際に、

「この仕事をする前はクリーニング屋で働いていたので…」

と言って、トランプにアイロンがけをするジェスチャーをすると、折れ目が消えて新品同様になるというマジックをします。

これはとてもキャッチーなマジックですし、セリフも面白いので、たくさんのマジシャンが真似して使った結果、このようなジョークが生まれました。

あれは普段、ロイヤルなお客様にマジックを見せている人が、「実はクリーニング屋でバイトしてたんですよ」っていうから、ユーモアがあって面白いのであって、普通の人が言っても、単なる演出にしか過ぎません。ましてや、それを言ってるほとんどの人が、クリーニング屋でバイトなんかしていません。

こういったただの受け売りではなく、なぜこのセリフを言うんだろう、と考えてみましょう。そうすると量産型のマジシャンではなく、自分にしかできないマジシャン像が見えてくるはずです。クリーニング屋よりももっといい、自分に合った演出やセリフが生まれてくるはずです。

(偉そうなこと言っていますが、僕も若い頃、バリバリにクリーニング屋のセリフを使っていましたんで、大丈夫です。みんな通る道です。笑)


Be natural, Be your self.

歴史的マジシャンの一人に、Dai Varnonという方がいます。世界中のマジシャンから「プロフェッサー」という尊称で呼ばれ、「アンビシャスカード」「トライアンフ」「カップアンドボール」など数多くの歴史的名作クロースアップマジックを数多く創作した、マジシャンの神様みたいな人でした。マイケルジャクソンとかマラドーナみたいなすごい人です。

オリジナルマジックを考えても「それ、もうバーノンがやってる」と言われ、クリエイターをどん底に突き落とすマジシャンとしても有名です。()

彼の残した有名な言葉があります。


"Be natural. What I mean by this is "be yourself."
「自然であれ。『自然であれ』というのは『あなた自身であれ』ということだ」


バーノンは、100年も前のマジシャンですが、この言葉は今のマジシャンにこそ大切な言葉だと考えています。

今の時代、DVDやYouTubeなど、動画媒体で低価格、さらに尖った内容を学ぶ環境が充実してきた結果、より高難度、高レベルのマジックができる人が増えてきています。それと同時に「完コピ」というのができやすい時代になっています。

ですが、それはあなたの個性が出ているパフォーマンスになっているでしょうか?クリーニング屋のような受け売りになっていないでしょうか?その演出や台詞は、あなたに合ったものでしょうか?


無理に周りに合わせる必要はありません。等身大の自分でマジックを楽しめばいいのです。上手い人の演技を見ても、「スッゲー!こんなマジックやってみたい!」でいいのです。「なんでこんなに自分は下手くそなんだろう…」って卑下する必要はありません。「いやー、こんな難しいことができるなんて、あの人はすげーな!」って思いましょう。

自分が悪いわけじゃないんです。あの人がすごいんです。


だから恐れずにどんどん発信していきましょう。どんどん人に見せていきましょう。人を傷つけなければOKです。傷つけちゃったら謝ればいいんです。

時には厳しい意見も言ってくる人もいます。その時は「あ、ここは自分のためになるな」って思えば参考にすればいいし、自分にハマらなければ、真摯に受け取る姿勢は見せて、我が道を進めばいいんです。

そうしているうちに、憧れのあの人に近づいていくと同時に、あの人には出せない自分のスタイルができていきます。それが「Be natural, Be yourself」だと思っています。

大切なことは「あの人になること」ではなく、「自分が楽しむこと」そして「マジックを見せる人に楽しんでもらおうという気持ち」この二つだと思います。


なんかマジックしんどいなあ、と思った時は、またぜひこの記事を読みにきてください。何かあなたの力になれば幸いです。

最後に、この「Be natural, Be yourself」について書かれた素晴らしい記事を紹介して終わります。本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

魔法都市マジェイア、最高。


月乃輪ウルフ

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