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【roots2】 《25章》主人の証
次の日、朝早くからアリソンと畑を整え。
庭に木を植えて丘からの景色を眺めながら昼食を取った。
「良い眺めだね。水が良いから木も草花も良く育つんだろうね。空気も良いし!本当に良い所だね」アリソンがしみじみと口にした。
ルビーは自分が褒められたように気持ちになって「水の主はデイブなの。後で見にいきましょう!私もずっと行ってないから」と嬉しそうに話した。「大丈夫かな…」デイブが不安そうに言うとルビーはデイブの手の上に手をのせてニッコリ微笑んで続けた。「途中にある花園の主は私なの。ご案内しますね」
「ほう、それは楽しみ。お腹いっぱいだし、良い散歩だね」と午前中の疲れを忘れたようにアリソンも楽しみだと応えてくれた。
湖まで来てディランの姿を見つけた。
「あら、釣りも出来るの。釣れるのかい?」
「美味しい魚が釣れます。でも今日は釣らない日ですね。」とデイブが言うとオスカーが
「ディランは水の中の生き物と話をしに来てるんだ。針を付けずに糸を垂らしてるだけなんだよ。それが落ち着くんだって」と続けた。
「ヘェ〜」アリソンはこれまた不思議が増えたと思いながら返事をした。
花園は今日も色とりどりの花々が咲き誇り
輝くように美しかった。
「これは!!素晴らしいね!」アリソンはキョロキョロと周り中を見て周り感激した様子。
東屋まで来て「少し座って眺めたいわ」と椅子に腰を下ろした。「ほら、皆んなも座って。落ち着かないから」と座らないデイブたちに声を掛けた。デイブは「驚くものをお見せしますけど…」と言ってルビーの手を取り腰掛けた。座った瞬間、2人の姿が10歳の少年少女に見えた。
花の妖精のような白く透き通る美しい少女とあどけない少年。
「ここが、間違えた東屋なの⁈」シャーロットが笑った。デイブとルビーは顔を見合わせて同時に立ち上がった。
「そうなんだ、後悔が残ってるのか…ここに座ると必ずあの頃に戻ったように見えるんだ」
25歳のデイブが恥ずかしそうに答えた。
「可愛いかったわ!」シャーロットがデイブを励ますように言うと「ルビーは子どもの頃から美しかったんだね」とアリソンも褒めてくれた。
オスカーは目を点にして何も言えなくなっていた。「オスカー大丈夫かい?」なぜか順応しているアリソンに聞かれて「こんな不思議がある?」と頭をクシャクシャに掻きまくった。「あるんだ。人生は不思議の連続なんだ」とデイブが笑った。
滝に近づくとまだ姿は見えないのに音が大きく聞こえた。
「良かった」デイブが小さく呟く。
ルビーがチラリとデイブを見るとニコリと微笑み合った。
木々の間を抜けて滝を目の前にすると唸るような轟音と共に大量の水が垂直に落ち続けていた。
霧のような水しぶきが立ち上がり虹が出ている。
清々しい空気に包まれデイブが訪れた事を喜んでいるようだった。
「これが水源なんだね!豊かだね〜」アリソンが手で水をすくった。澄みきった美しい水だった。
「こりゃぁ、デイブそのものだ。納得だね」
アリソンの言葉にデイブは頭を下げた。
オスカーも間近で見るのは初めてだった。
「これがデイブ…」オスカーはのけ反らなければ全てが見えない雄大な滝を前に息を飲んだ。
「父さんと母さんに敵わないわけだね。オスカー」とアリソンに肩を叩かれて大きくうなづいた。
「濡れて風邪を引くといけないわ。そろそろ行きましょうか」とルビーが言うとオスカーが「手を…中に手を入れても良い?」と聞いた。
「どうぞ」とデイブが微笑むとオスカーはそーっと手を水にいれて「冷たくて、柔らかな水だね」と嬉しそうに言った。
もう一度滝の上までを見上げると霧状の水が顔を優しく濡らした。息を吸い込むと自分の中にある情け無いカケラ、小さな恥ずかしさが消えてゆくようだった。
「さ、行こう」デイブの声で我にかえった。
家に着くとアリソンが「良い経験をさせてもらって。明日、帰るよ」と言った。
「私も家族に会いたくなった。いつでも私の里にも来て。大歓迎するからさ」とデイブの手を取った。デイブは強く握って「ありがとうございます。」と頭を下げた。
夜はアリソンの美味しい料理を頂いて、わいわいと話をし、笑い合って沢山食べた。
まだ話に盛り上がっている中。
デイブは1人一階に降りてサイラスと話をしていた。「ずっと長い間平和に暮らす事をしてこなかった。サイラスのおかげで皆んな笑って暮らす事が出来てるよ。聞こえるかい?」
まだ幼い木のサイラスと会話は出来ない。
でも、デイブはきっと伝わっていると信じて毎日話しかけ続けている。
サイラスとは、どこかで会っていたのかな?
1000年の間、ずっとあの森にいたのだろうか。
ふっとそんな事が気になった。
オーウェンやルビーの日記に記されていないだろうか。
四階に戻ると階段で待っていたオーウェンに「サイラスと話してたのか?」と聞かれた。デイブは
「オーウェンの日記にさ、木の話は書いてない?僕とサイラスの関係が判る事が書いてないかな?」と聞き返す。オーウェンはニッコリ笑って「わかった、探してみるよ」と返事をした。
デイブは楽しそうに話す皆んなを眺めて
「幸せに感謝だね。皆んな笑い合って。本当に夢見た光景だよ」と言った。「本当だな」オーウェンもしみじみと皆んなを眺めて言った。
デイブはハッとして
「オーウェン!リリーは大丈夫だった?」と聞いた。「心配ないよ」オーウェンは小さく笑って恥ずかしそうにデイブを見た。
その話をしようと思って階段で待っていたのだ。
次の日アリソンは帰って行った。
家族が増えた喜びをお互いに持って別れた。
to be continue…
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