【roots2】《29章》父母の想い・2
もう1通は父からだと分かった。
心して手に取った。
封筒にロウで封がしてある。Dの飾り文字。紋章ではないのでプライベートな手紙に使っていたのだろうか。
デイブは出来るだけ丁寧に封を剥がした。
愛するデイビッド
この書は国王としてではなく父として記す
デイビッド会いたい。何日何年経とうと君にまた会える日を願わずにはいられない。
アリソンもそうであろう。
父として、何も教え諭す事も出来なかった。
思いをここに記す。
愛する人を大切にすること。
民の隅々まで心配り尽くし、優しさで包むこと。
それが自分を守ることになるのだ。
自然を大切にすること。
水、土、空気が綺麗であれば豊かに生きてゆける。民が潤い国が成長する。
幸せはわずかなことの積み重ねだと知ってほしい。
悪に負けそうになった時には、どうかサイラスに会いに行ってほしい。
自分だけではどうにもならない時は、正直に助けてと言える勇気を持つこと。
どうか我が国の聖なる森の心の美しさに導かれここに辿り着いていてほしい。
父はデイビッドが人を信じる清らかな心の持ち主だと信じている。
沢山のことを見聞きし自分に必要な物を手にしたら沢山の人々を魅了する国王に成長するだろう。
また会える日を。帰還する日を待たずにはいられない父を笑うだろうか。
親とはこんなにも子の幸せを願い祈り続ける者だったのかと学んでいるよ。
何より1番の願いは、デイビッドが今そばにいる
心通う温かな人を真っ直ぐに愛すること。
それが全ての始まりだからだ。
父が、もっともっと共にいて抱きしめ愛を伝え教えたかった。力不足であったことを悔やむ。
だが、こうして離れていようと。
父には幸せを祈れる人がいる。
私には心の全てを捧げて愛する人がいるのだと知らせてくれる。それは幸せなことなのだ。
アリソンとデイビッドが私にくれた幸せだ。
ありがとう。
この父と母の愛がデイビッドの助けになる日が来ることを祈念する。
父、ディラン
「ディラン…って」肖像画をもう一度見る。顔の辺りの砂を手で優しく払う。やはり顔は違う。でも、ここに書かれている事は全部鯨のディランに教わった。優しさ、美しさ、強さ、清らかさも。
僕は一人で旅に出たんじゃない。
こうして、父さんや母さんの想いに助けられながら歩いてたんだ。
「愛」をちゃんと与えられて生きていたんだ。
孤独でハンカチ一枚持たずに無感情で真っ暗な廊下に佇んでいた僕は。本当の僕は。
こんなにも沢山大切に想われていた。
デイブは涙も出ず熱くなるばかりの目を強く閉じて手紙を胸に当てた。
目を閉じても何も思い出せない。
残念だけど。心の中はそう簡単じゃない。
ゆっくりと目を開け、他の箱にも手を伸ばした。
赤い革張りの小さな箱。開けると指輪が3つ入っていた。
デイブとルビーの名前が刻まれた結婚指輪。
大きな宝石のついた細工の素晴らしい美しい指輪。代々王家に伝わる指輪かもしれない。父が母に贈ったものかもしれない。
to be continue…
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自分には愛してくれている人がいた。幸せを祈り続けてくれている人がいた。気にしてないけど、気づいてないけど。あなたにもいるのです😌🍀
私にもいたのです📙
ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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