ディアファミリー感想

松村北斗さんのど新規がディアファミリーの試写会に行かせてもらったので、感想をまとめました。これはキリエ〜夜明けのすべて経由でハマった人の感想です。

挨拶はめちゃくちゃ面白かったんですが、すでにたくさん記事が出てるので割愛します。北斗くんが話し始めた瞬間、あからさまに大泉洋さんが前のめりになっていつ突っ込むかタイミングを見計らっていて、ほんとに北斗くんのこと好きでいてくれてるんだな〜!って勝手に感じました笑。

以下、①映画の感想、②北斗くんの演技でまとめていきます。

まず①映画の感想について。
私が試写会に当たった理由の一つには、おそらく医療従事者だからなのでは…と思っています。そのため感想もこの視点にかなり寄った意見になります。
ネタバレは多分に含みます。

正直なところを言うと、「得意ではないタイプの映画だ…」っていうのが予告編の印象でした。
まず「人工心肺をつくって娘を助ける!」の時点で、それは(今なおあくまで移植への橋渡しとしての利用が主たる面を鑑みると)なしえなかったのだろうと予測されることをあまり伝えぬまま前面にキャッチーに押し出しているように感じられた(もちろん穿った見方すぎるが…)ということ。追加であらすじを読むと、IABPの日本人用カテーテルをつくり会社を成したというのを目にして、「この人工心肺からの乖離がよくわからないな…」とも思っていました。
結論からいうと、この乖離を見届ける映画だったと思います。最初にこのことが明示されてびっくりしたけど笑。

自分の映画の最初の方の印象は「成せばなる」というモットーの考えと、ならないことがある病のアンマッチな部分に(勝手に)苦しくなってしまうな…でした。
病院で働いていると、bad newsをいかに伝えるか、そしてどうステップを踏んでそれを受け入れてもらうかということにしばしば悩むことがあります。「何か、できることはありませんか?」という思いに、何か伝えたいけれど、「ありえない希望を持たせてはいけない」という気持ちと、何か目標、希望をわたしたい気持ちがぶつかりあうことが自分は多く、だからこそ映画のご両親の「やり遂げて見せる」という気持ちに勝手に押しつぶされそうになりました。いつかくる最期に向かう瞬間、この思いはどうなってしまうのかな…という不安感が強かったです。
ただこの映画(というより、モデルとなったご家族)の素晴らしいところは、実際に目標を決めた後、しっかりした理論を元に本気で研究に参加したこと。めちゃくちゃ圧倒されました。割と研究会とかはクローズな場が多いのに、そこに乗り込むアグレッシブさ。すごい。
とはいえ財産を投げ売って研究に投資する姿が、本当に不安でした。これもあるあるだと思いますが、治ると信じて民間療法や宗教、その他様々なものに時間とお金を費やす人を見たことがやはりあり、これがもちろん決して「それではない」とはいえ、彼らの夢を真にかなえるものではないと感じてしまっていたから。
だからこそ、北斗くんが演じる冨岡先生が「一抜け」して研究室を出ていく瞬間の言葉が良かった。私たちって希望を与えることだけが仕事じゃなくて、むしろそんな時は少なくて(じゃないかもしれないけどどうしても重みは違う)、悪いお知らせを常に続けている仕事だしそれを無視したらダメなんじゃないか?っていう私の勝手な気持ちを笑、汲み取ってくれてすごくすごく安心しました。悪いことを、悪いまま受け取らなければならないときだってあると思うから。
そこから様々なことがあり、予期された「目標が達成されない日」からまた始まる冨岡先生との縁から、IABPカテーテルの改良がなされていく様は、自分の中ではスムーズに見れました(とはいえ、家族の時間も大切にした上で!とかはもっと強調してもよかった気もする…)
トータルで言うと、何か困難に面した時に自分にできることを見つけてやり遂げようとことで、問題に対峙していくような人たちの強さ、しなやかさを見ることができたなと思いました。常に希望を胸に生きていきたいと願い、それを形は柔らかく変化しても実現することができることを、目の当たりにできたと思います。私はどうしても悲観的とは言わずとも、そういう希望をあえて思考としては選択しないタイプなので、こういう考えと結果が世の中にはあるんだと知れたことも私にとって本当にいい体験だでした。
あとは割と感情が強いお話なのかと思いつつも、実際の面では行動が勇敢かつロジカルで、その部分も安心してみれたなと思います。冨岡先生がかなりその部分に作用してくれていたな…。

とはいえ、私は死という常にそばにあるものに、「特別」を求めすぎたくないなと思ってしまう気持ちもあります。もっというとその当事者たちにとってはそのそれぞれの死が特別で、語られるべきものがあり、そのすべてに寂しさ悲しさ安らぎがあると思うから、「死に直面したときにこうあるべき」とはこのお話を受け取りたくないというか…(これはあまりにも逆張りすぎるかもだけど…)
そういう意味で、一定の距離を持って見れた作品でした。あとモデルの大学は怒らないかな?と心配です笑。

全然関係ないけれど、夜明けのすべてで扱う「喪の共有」ってすごくよかったなと思っています。死の先にある人の生活、それをどう扱って連帯していくのか、さりげなく、でもあの映画の根幹でもあったな。監督の対談がすごく良くて、改めていい映画だったなとしみじみ感じています……!

②北斗くんの演技について

これを書き出した時、私が最初に触れたキリエ〜夜明けのすべての感想も書いてしまいとんでもない量になったのでそれはやめました笑。

初見の感想は、(思ったより)めちゃくちゃ出るじゃん!ということ、そしてなにより「トメ前」として、余裕を感じさせるような演技でした。本当によかったです……!

冨岡先生は先ほど書いた通り「一番共感できる」役でした。いいところだけ伝えることはなく、でも臨床経験から必要なことをしっかりと見出して研究を考える姿勢。娘さんの病状と家族の様子におそらく唯一直に触れた研究医でもあり、そのやるせなさを車でひとり表出するシーンがすごくよかった。家族だけだとどうしても前のめりで視野が限られているけれど、冨岡先生がいることでバランスよく、かつその「悔しさ」をきちんと私たちも共有することができたと思います。
とはいえ自分が一番好きなのは、さっきも書いた「研究を一抜け」するシーン。あの冷淡にも取れる距離感の表出の仕方が、逆にわたしにとっては安心できる言葉であり、そして後半へのフックとなる。すごくすごくトメ前だ……!物語のゲームチェンジャーだ!

マジでぜんぶよかった。カテーテルを試していくシーンも、ふたりで名古屋までドライブするところも、悔しさが爆発する車内も、冨岡先生の家庭環境を示唆する会話も……。本当にすべての演技がよくて、いつも感じる繊細な北斗くんの演技のよさはもちろんなんですが、どっしりと構えた部分も感じられて、みんな見に行って欲しい。特に車での大泉さん演じる父との会話が、派手さはなくとも静かな抑揚があり、また違う演技が見れたなとしみじみと思いました。この北斗くんの演技を観る価値はあります……!
北斗くんの演技ってわたしは言葉を発するリズムの取り方がすごく特徴的だなって思っているんだけど
(そしてそこがたまらなくすき)、今回はその印象があまり強くはなくて、あくまで仕事で話している冨岡先生のフラットな話し口、考え方を見せるのにその感覚はすごくよかったなとも思いましたし、だからこそ感情が昂ったときの静かな苛立ちを強調して感じられた気がします。
ここまで書いておきながら、多分これを読む稀な人はおそらくみた後だと思いますが……笑。

北斗くんの演技、私はまだ全部見尽くしたわけではないんだけど、加速度的にどんどん魅力が増している印象です。これまで演じた役柄の魅力ももちろんなんだけど、繊細な部分を表出するのが恐ろしいくらい解像度が高く、でもディアファミリーはそれだけじゃない演者としての様々な役回りをこなす安定感に触れられて、いろんな作品をもっとみたい!ってワクワクドキドキしちゃいます。ドラマも楽しみ…!
あとは北斗くんの解釈って、思わず唸ってしまうことが多くて、ドラマの役の印象とかも毎回選び抜かれて研ぎ澄まされた言葉で圧倒されてます。今回の映画も「消費するだけではない」ってはっきりと伝えてくれるところとかが、いわゆる「余命映画ジャンル」に対して彼の考えを伝えてくれているなあって本当に聞いた瞬間興奮しちゃいました(その後すぐ洋さんと爆笑乱闘がはじまりましたが……)。自分も消費じゃなく財産になる部分を探すような気持ちで映画を観れて、個人的にはすごくいい体験でした。
北斗くんに関してはパフォーマンスとか、文章とか違うツボがたくさんあるので、いつかまとめたいな〜とふんわり思いつつ、他の人の感想とかまとめ読んでこれこれ!ってなって満足しそうです笑。

以上簡単な感想まとめでした。まだ北斗くんの演技見尽くせてないから、また違う方の感想も見たいな〜!公開が楽しみです!


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