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小説の顔となるキャラクター!魅力的で自由に動かす練習方法を解説 小説講座その2

物語の重要なファクターであるキャラクター。物語の種類によっては、最も大切ともいえるレベルです。

今回は対話式の小説を使って、キャラクターの作り方を紹介していきます。


キャラクターの大切さ

物語には様々な構成要素がありますが、その中でもキャラクターは最も重要といえるファクターです。

小説ではありませんが、人気作品である「ぼっち・ざ・ろっく!」。本作は音楽的に非常にこだわっていますし、ノルマの話やぼっちエピソードなど高いリアリティも人を惹きつけます。

このように様々なヒットの要因はありますが、これらの前提にあるのは魅力的なキャラクターたちでしょう。ぼっちちゃんをはじめとした主要4人とそれを取り巻くあのキャラ達でなければ、これほど人に刺さる事は無かった筈です。

仮にぼっちちゃんが伊藤誠のような男性キャラだったら、全く違ったストーリーになり、ヒットしたかは定かではないでしょう。

このように魅力的な物語には、魅力的なキャラが不可欠です。今回は対話式小説を使って、この大切なキャラづくりについて解説していきましょう。

前回書いて貰った対話式小説を使って説明していくので、手許に用意して下さい。

前回書いた対話式小説を用意

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対話式小説からイメージを書き起こす

キャラの作り方は千差万別。設定主導で生み出している人もいれば、頭の中でキャラを作ってそれに設定を加えていく人もいます。

この中で感覚によらない再現性の高い方法として、前回書いて貰った対話式小説のキャラを、明確化していくことで練習をして貰います。

基本的には一回目のレッスンでやって貰った、頭の中の設定を書き出して整理していく方法と同じです。

男子高校生A「『ぽっくりさん』て知ってる?」
女子高生B「恋愛のおまじないだよね」
男子高校生A「そんなかわいいものだっけ?聞いた話ではもっとエグかったような……」
女子高生B「私『ぽっくりさん』にお願いしたら、木村くんと付き合えたし」
男子高校生A「マジ?俺も根岸と付き合えるように、お願いしてみようかな」
女子高生B「根岸はもうすぐ死ぬんじゃない?」
男子高校生A「なんで!?」
女子高生B「恋愛ってね、かわいいものじゃないんだよ」

前回の対話式小説は最初にキャラ設定を作り切らず、思いつくままに書いてもらいました。ただあなたは無意識下で、キャラに設定を付けている筈です。

例としてぽっくりさんのキャラクターで、設定の考え方を紹介していきます。

登場するキャラクターは、男子高校生Aと女子高生B。まず男子高校生Aに注目していきましょう。

男子高校生Aから読み取れる要素は、以下のような感じです。

  • 男子高校生である

  • 女友達(女子高生B)がいる

  • 根岸ちゃんが好き

  • 根岸ちゃんを呼び捨て

  • おまじないに頼って、根岸ちゃんと付き合おうとしている

  • 根岸ちゃんは木村くんが好きだが、それを把握していない

  • 女子高生Bが根岸ちゃんを呪ったことを知らない

  • 噂好きだが噂に詳しくない

  • 女子高生Bから下に見られているかもしれない?

  • 恋愛の深い部分を知らない?

こういった要素を全て組み合わせると、「ちょっとお調子者で、恋愛のことをよく分かっていない男子高校生」というイメージがわいてきます。

まずは書いてみた対話式小説の登場人物を、こういった感じで一言で表してみてください。

小説でキャラを描くと言うのは、ある意味自分以外の誰かにキャラを説明するのと同義になります。自分の中にキャラをパッと説明できるイメージが無いと、うまく相手に伝わらない訳です。

キャラクターの設定を書き出してイメージを固める

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イメージと要素を組み合わせていく

男子高校生Aのイメージがわいたら、それを要素と組み合わせていきます。

要素には以下のもの使われることが多いです。こうじゃないといけない訳じゃないので、参考程度に考えて下さい。

  • 外見

  • 性格

  • 名前

  • 好きなもの

  • キャラの立ち位置

  • コンプレックス・闇の部分

  • 物語を通しての変化

  • (目的)

  • (キャラの能力)

  • (好きな人)

  • (人生の履歴・過去)

  • (押し出したいイメージ)

  • (このキャラを通して伝えたい事)

  • (口癖・口調)

  • (家族構成)

「外見」、「性格」、「名前」、「好きなもの」、「キャラの立ち位置」あたりを最初に決め、「コンプレックス・闇の部分」、「物語を通しての変化」は物語の設定を練った後に決めると良いでしょう。

他の()内の要素は、物語のジャンルによって、必要であれば使う感じです。

とはいえ、それは長編小説を作る時の話。練習段階では、できるだけ多くの要素を入れれるように頑張ってみてください。

キャラの要素を決めていく

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実践・キャラの設定決め

ここからは実際に男子高校生Aのキャラを決めていきます。プロセスを解説していくので、参考にして、自身の書いた対話式小説のキャラの設定を作ってみてください。

彼については既に「ちょっとお調子者で、恋愛のことをよく分かっていない男子高校生」と、イメージだと決めました。

それに合わせて外見は、「茶髪であまり背が高くない感じ」にしてみます。「笑顔がかわいい」なんて要素を入れてもいいでしょう。ちなみに服装は基本的に制服です。

性格は「ちょっとお調子者」。でも「内面的には落ち込み易い部分がある」という要素も足しておくと、キャラクターに深みが出るのではないでしょうか。

名前はそのキャラのイメージを、一発で表すものがオススメ。お金持ち美少女キャラに『三千院司』と付けたり、強そうな筋肉キャラに『剛力餓狼』と付けたりなどです。もちろんわざとイメージと真逆の名前にするのもありでしょう。

男子高校生Aはお調子者っぽい所から、「犬上ハルキ」してみます。明るいキャラなので、陽気なイメージでハルキ。かわいいイメージで犬と入れました。

名前に動物や特殊な漢字を入れると、そのイメージがそのままキャラにつき易いです。メリットにもデメリットにもなるので、うまく使い分けて下さい。

好きなものは「ポテト」にしておきます。男子高校生っぽくジャンキーなものが好きですが、ハンバーガーではなくサイドメニューな感じが、主役になり切れない感が出ます。

もちろん物語でキーになる感じの物でもいいです。昔幼馴染が作ってくれた、思い出の食べ物とか。因みに「高級フレンチ」とかにした場合は、お金持ち設定など相応の理由が必要です。

キャラの立ち位置としては、「主人公」でいいでしょう。「クラスの女の子と仲がいいが、恋人候補としては見て貰えない」とかの方向性でもOKです。

こういった感じで、それっぽい設定を書いていって下さい。基本的に対話式小説が書けている時点で、無意識にキャラの設定を考えてはいる筈です。

なのでシチュエーションの時と同じように、「自分が何を考えていたのか言語化」していくだけ。

「コンプレックス・闇の部分」や「物語を通しての変化」などについては、これらを解説する時に詳しく説明します。

長編小説を書く場合はこれは仮決め

外見や性格など、ざっくりとした部分を決めて貰いました。これは練習なので、可能な限りキャラの設定を考えて貰えればと思います。

ただ実際に物語を書く場合は、この時点でのキャラ設定は「仮決め」くらいの認識です。この後物語の設定を決めて貰うので、それが終わってから、細かい所までキャラの設定を詰めていきます。

たとえば男子高校生Aは、自由に動かせる無個性の主人公なので、すぐに設定を決めることができます。しかし女子校生Bは、明らかに物語の核心に関係してきます。

なので物語の設定を考えてからでないと、設定を決めにくいキャラと言えるでしょう。

今ここでがちがちに女子高生Bの設定を固めてしまうと、後にその設定が邪魔になる恐れすらあります。なので長編小説のキャラの仮決めでは、「ミステリアスな女子高生」程度で留めておくのがいいでしょう。

応用編・主人公への役割でキャラを作る

「他人を蹴落としてでも人生の勝ち組を目指すべきだ」「大金を得るよりも争いのない人生の方が豊かだ」。よくある対立する主張ですね。

どちらが正しいかと言われても、人によって意見は様々。というか、多くの人が「どちらも間違っていないし、どちらも正解ではない」といったスタンスかと思います。

こういった決着のつかない主張を主人公とライバルにそれぞれ持たせれば、いい感じの対立構造ができあがる訳です。物語の中でお互いの主張をぶつけ合う、熱い展開が繰り広げられることでしょう。

また主人公が「人は努力すれば報われる」と信じるキャラだとします。それに対してライバルキャラを、「才能の前では努力なんて役に立たない」を体現したキャラに設定してみてください。

そうすれば主人公とライバルがぶつかって、主人公の心が折られるストーリー展開になるのが想像に難くない筈です。

このように最初に主人公を設定して、他のキャラには「主人公の心情を変化させる役割」を割り振ってしまうのも1つの手法だったりします。

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