初めてでも破綻しない!逆算で作る実践的10ステップ小説の書き方講座!その1
「小説を書きたい!」という表現欲求は、ある意味本能のようなもの。誰もが一度は想うことでしょう。
しかしいざ書くとなると、キャラ設定にプロット、ストーリー展開に伏線やオチ。考えることが多くてなにから手を付けていいか分からず、多くの方が自分には難しいと諦めてしまいます。
そんな中で小説の書き方を求め、この講座にきてくれたあなた。この時点で既に、小説を書きたいと志した大多数の方よりも一歩に進んでいます。
あなたのその勇気に報いるためにも、この講座ではどんな人でも小説を書けるように、分かり易く実践的にレッスンしていきます。
物語の基本は人と人の関わり合い
『人は一人では生きられない』という言葉の通り、世の中は人と人との関わり合いで動いています。会社や学校に属する人はもちろんのこと、それは引き込もりであっても違いはありません。
たとえば通販でゲームを買ったとします。すると通販の運営やゲームを作った人、配達してくれる人、引き落としのクレカ会社の人などなど、多くの方が関わっているのが想像に難くないでしょう。
この基本原理は小説でも一緒。実際好きな小説を思い浮かべて貰えれば、キャラクター同士が関わることで、物語が動いているのが分かるでしょう。
逆に言えば人と人との関わりあいさえあれば、物語は展開していくわけです。
では人と人との関わりあいで、一番重大なものは何でしょう?そう、会話です。コミュニケーションを取って仲良くなったり、情報交換をして重大な謎を解いたり。物語を書く上で、会話の重要性は無視できません。
まずはそんな会話を練習してもらうために、対話式小説を書いて貰います。ちなみに対話式小説というのは、以下のようなものです。
人と人の会話のみで成り立つ小説で、物語の最小単位。非常に簡素なものなので、コツさえつかめば誰でも書けるようになります。
これから10回に分けて、長編小説を書くための実践的な講座を行っていきます。その第1回目がこの対話式小説。これが書けるようになれば、容易に長編小説に発展させることが可能です。
この講座ではPICKUPという形で、やって欲しい手順や練習を実践的に示していきます。実際に文章を書いて貰うので、まずは紙やPC、スマホなど書けるものを用意して下さい。
提出するものではないので、あまりのノートやメモアプリなど、自分が書き易い形態で大丈夫です。
対話式実践・まずはキャラの区別
対話式小説を書くために、まずはキャラクターを2人作ります。練習段階なので、しっかりとキャラを作り込む必要はありません。
自分の脳内で人物の区別さえできればそれで充分。以下のように対極的な設定にすると、自分の中でキャラの区別がし易くなります。
これから書く対話式小説に登場させるキャラを、2人考えてみてください。練習なので好きな漫画のキャラを使って貰っても大丈夫です。
挨拶をさせる
ここから作って貰った2人のキャラに、会話をさせてもらいます。
「キャラ同士で会話をさせろと言われても、なにを話せばいいの?」と困ってしまう方もいるでしょう。会話の基本は挨拶。まずは2人のキャラに挨拶をさせてみてください。
キャラの反応は千差万別。「おはよう」と投げかけたら「おっはよー」と元気に返すキャラもいれば、「あ?話しかけてくるなよ」と塩対応するキャラもいるでしょう。
元気に返してくれば「昨日のドラマ見た?」と、会話をキャッチボールさせましょう。塩対応されれば「ご、ごめん、そうだよね。私のこと、まだ怒ってるよね?」なんてドラマ性を感じさせる会話をさせてみてもいいです。
2人のやり取りを、切りのいい所まで続ければOK。内容を面白くする必要はないので、ただただ会話を続けて下さい。
もし会話が続かなければ、やり取りの中に原因がある筈です。そこを改善してやり直すか、今度はそこに気を付けて別の会話を発生させてください。
例としては以下の様になります。
自分が詳しい話題で話させると、会話が続き易くなります。2、3個対話式小説ができたら、次に進んでみてください。
それっぽいセリフから初めて見る
挨拶からだと会話は始めやすいですが、やはり内容のパターンが決まってきてしまいます。
会話に慣れてきたら、今度は「ねえ、私のために世界を滅ぼしてくれない?」なんて、それっぽいセリフから始めてみてください。それっぽい会話シーンになります。
練習なので映画やドラマで聞いたことがある、それっぽいもので大丈夫です。前後の繋がりは、深く考える必要はありません。
「どうして裏切ったんだ!信じてたのに」「何故こんなことになってしまったんだ……」などなど、衝撃的なセリフで初めてみてください。
少しでも自分が気に入ったものができたら、次に進んでいきましょう。
小説の設定の基本的な考え方
2人のキャラが話す対話式小説。あなたが書いたその対話式小説には、文章には書いていなくても無意識に様々な情報が入っています。
つまり、キャラの年齢や性格、学生なのか社会人なのか、話している2人は仲がいいのか悪いのか、いつどこで話しているのかなどなど。これらは小説の『設定』にあたる部分です。
多くの人は「設定を作ってから小説を書く」イメージを持っているでしょう。これは間違いではないのですが、正確ではありません。
というのも、設定は綿密な設計図ではなく、アイディアを明確化するメモや備忘録の役割でしかないのです。
たとえばアニメを作る場合、分厚い設定資料を作成するでしょう。これは沢山の人が関わっているので、チームで情報を共有するために設定資料が要るのです。
一方小説は基本的に一人で書きあげます。ぶっちゃけてしまえば、面白いアイディアを思いついたら、設定・プロットを作らずに小説を完成させても何の問題もありません。
ただ人間の情報処理能力や記憶力の関係で、そんなことは現実的ではないという話。だから面白いアイディアを思いついたら、自分の頭の中にあるアイディア・無意識下の設定を書き出して具体化し、プロットにして整理するのです。
だから重ねて言いますが、設定を書くというのは、頭にあるアイディアを整理する工程でしかないのです。
もちろん価値がないと言っているのではなく、「設定は既に自分の頭の中にあるものを、自分のために整理することだと念頭に置いて欲しい」という意味。これを理解していないと、設定だけ凝って本末転倒になってしまう場合があるので注意して下さい。
実はこれまで書いて貰った対話式小説でも、あなたは無意識下で設定を作っています。
それを書き出して明確化し、不明瞭な所を保管してやれば、それが「設定を作る」という行為なのです。もちろんこれができれば、自分で書いた対話式小説のその先のシーンを描くことができるようになります。
なので今度はこれまで書いた対話式小説について、「自分はどんな設定で、このシチュエーションを書いたのか?」という、無意識下のアイディア・設定を言語化する練習をしてもらいます。
シチュエーションを明確化する
先程書いた対話式小説の中で、一番気に入っているものを用意して下さい。そして、その会話の情景を思い浮かべてみましょう。
たとえば「ねえ、私のために世界を滅ぼしてくれない?」というセリフ。最初に目にした時に、どこで誰が言っている光景が思い浮かびましたか?
全く同じセリフですがシチュエーションによって、意味合いや言われた側の受け答えも違ってきます。
つまりあなたは様々なシチュエーションの内、1つだけを選んで対話式小説を書いている筈なのです。
例えば「明るい人」と「静かな人」の会話。「朝の教室で友達同士が挨拶している」「休みの日に男性が気になる女性にLINEしている」など、色々なシチュエーションが考えられます。
まずは自分の書いた対話式小説が、どういうシチュエーションなのかを明確化させ、一言で説明してみてください。
設定を明確化
書いて貰った対話式小説のシチュエーションを明確化して貰いました。今度はその対話式小説の設定を明確化して貰います。
とはいえ、いきなり全ての設定を明確化するのは難しいので、最初は5つの項目に絞って明確化して貰います。
明確化する設定は「場所や時間帯」「1人目のキャラの性格」「2人目のキャラの性格」「時期」「このシーンのきっかけ」の5つの項目。どんなシチュエーションでも使われる、汎用性の高い設定です。
例えばこのシチュエーションの設定を書き起こすと、以下の様になります。
本格的な設定を書き出そうとすると、もっと詳しいものが必要になります。けれども練習段階なので、この5つの項目で十分です。
一年後の自分が見て理解できるくらいには、各項目を分かり易く書き出してみてください。
この5項目の中では、「このシーンのきっかけ」が少し難しいかも知れません。しかしこれができると、シーンの因果関係を考える力がつきます。長編小説を書く際に重要な能力なので、練習してみてください。
もっと詳しい設定についての解説や練習は、また別の講座で行います。
応用編・目的や制約をつける
自由にキャラを喋らせることができるようになったら、今度は目的や制約を付けてみましょう。
目的というのは別に難しいことではなく、「キャラをかわいく表現する」「名言を言わせてみる」など簡単なもので大丈夫です。口調をかわいくするとか、ツンデレなセリフを言わせてみるとかでもいいでしょう。正解は無いので、好きに楽しんで下さい。
制約というのは、自分の成長に必要な枷です。つまらない会話がだらだらと続くのであれば、「10回以内のやり取りで面白くする」とか。逆に会話が続かないのであれば、「20回以上やり取りをする」とか。
この練習は長編小説で、魅力的なキャラを書くことに繋がってきます。逆にこれができないと、「物語は面白いんだけど、キャラに魅力がない」「盛り上がる場面で刺さる言葉がなくて薄い」なんて言われかねません。
もちろん今の時点で、完璧にできる必要はないです。別に書き起こさなくても、暇な移動時間に、脳内で2人を会話させて訓練するとかでも問題ありません。
オチや構造を考える
これまで練習して貰っていた「2人のキャラに会話をさせる」というのは、長編小説を書くための練習です。長編小説であれば長いスパンで構造やオチを考えればいいので、細かい会話にオチを付ける必要はありません。
ただし短い小説を書きたい場合は、短文で構造を考え、オチを付ける必要があります。
長編を書きたい方はそこまで考える必要はありませんが、短編やTwitter小説などを書きたい人のために、構造の説明を軽く行っておきます。
たとえば上の文章は、以下の構造になっています。
AとBが謎のおまじない「ぽっくりさん」について話している
Bは「恋愛成就のおまじない」というが、Aは疑問に思う
Bがぽっくりさんに「お願い」して、木村くんと付き合えたことが明かされる
Aがぽっくりさんにお願いして根岸ちゃんと付き合おうと考える
Bから根岸が死ぬかもしれないことが明かされる
なぜ?という問いに「恋愛って、かわいいものじゃないんだよ」という答え
⇒ぼっくりさんはAの知っている通りエグい「呪い」
⇒木村と付き合うのに邪魔だった根岸に、Bが呪いをかけた
恋愛がかわいいものと思っているAくんと、かわいいものじゃないことを知っているBさん。Bさんが恋敵に呪いをかけたことが察せると共に、Aくんの恋に問題が起きていることが分かります。
短編として考えると、BさんのせいでAくんの好きな人が無くなってしまうことが判明し、ちょっとぞくっする文章と言えるでしょう。
またこれは長編のワンシーンとしても成立します。ここから物語が盛り上がっていってもいいですし、ラスト近くでAくんを絶望の淵に叩き込んでもいいでしょう。
つまり対話式小説は会話劇であればそれ単体で完結し、長編であれば物語の大切なパーツとなる訳です。構成の詳しい考え方や地の文、設定等については、また今度の講座で詳しく解説していきます。
現時点ではオチや構造を意識する必要はありません。が、頭の片隅で意識しておくと、より早く成長できると思います。
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