名無き王の決断
僕は決めあぐね、思考を深い螺旋へと
再び引きずり下ろした。
僕は王だ、民衆を煽動し、多くの人々の
幸せを保護し、享受することで
存在証明を果たしている。
僕は「ヒト」として生きてきて
気づいたことがある。
僕は根本的にこの「ヒト」という生物とは
相容れない生命体であるらしい…
ということだ。
あくまで"らしい"ではあるが
恐らく、今の問題を普通の"ヒト"が考えるのであれば、
答えを導き出すのはとても容易なことであろう。
だが、僕にとってはどれも適解に思えず
夜とも朝とも言えない
空から色が無くなる時間まで
ぼんやりとした意識の中にいた。
思えば、
なぜ王になったのか、、
度重なる災害と、謎の細菌兵器により
経済が破綻し、国が荒んだ時期があった。
特に食料問題が著しく、
富裕層とそうでは無い者との
格差が生まれた。
噂ではあるが、貧困層の人間を
食料にするなどと言ったことも
まことしやかに語られていた。
その時に気づいたのだが、
僕には類稀なる
指導者の才能が眠っていたらしい。
合理的かつ非常に対処した結果
今の地位を築いている。
ふと、螺旋が途切れた。
意識が体に染み渡る感覚に身を浸し、
全身の感覚を取り戻したところで
ぼんやりとした思考に
ある一条の光が差す。
どうせなら最後まで徹底的に
遊んでやろうではないか
思わず口の端に溢れ出す笑みを
夜の闇とともに空へと返し、
僕は立ち上がる。
転んでもただじゃ起き上がらない。
第2章はここからだ。
僕のクニでは僕が絶対である。
ある人は僕を独裁者と言うが、
そんなことどうでもいい。
暇さえ潰せれば。
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