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10話
目が覚めた。
スマホを見ると、11時ちょっと過ぎた辺りだった。
さすがにお腹が空いて、起きたみたいだ。
メッセージを確認しながら、冷蔵庫を開ける。
聿からは『お前からの説明も聞く』と、逸からは『とりあえず帰る』『しばらく夜の散歩は無し』とあった。
逸はしばらく私の所には来ないと言うメッセージだ。
覗いた冷蔵庫には、飲み物と私の好きな物が補充されていて、聿の優しさを感じた。
だから逸の事を誤解したままは、申し訳ない気持ちになる。
冷蔵庫の真ん中に、見慣れた箱を見つけて手に取る。
「季節限定プリンだー」
私の実家に近い、小さな洋菓子店のプリン。
定番プリンの他に、不定期季節限定プリンが出る。
定番と違って小さめなフリーカップに入ったプリンは、小さい頃から大好きだった。
プリンを食べ終わった後、そのフリーカップでジュースを飲んだり、ミニ鉢植えにしたり、机の上の小物入れにしたりしていた。
今はそれでやっぱり飲み物飲んだり、ヨーグルトを食べたり、逸の好きな茶碗蒸しを作ったりしている。
食べる事は好きだが、たくさん食べられない私のご飯もスープもおかずもそれに入れると食べたくなるし、丁度いい量で重宝している。
今日ふたつ増えたから、これで逸に茶碗蒸し作ってあげようと思う。
聿にはこれがお礼だよって説明した方がいいかな。
逸は聿に頼まれたから、私を見張っているだけなんだよって言わないと。
でも、無防備に服脱ぎ散らかして寝ちゃった私の世話をしていた逸へ誤解するのも状況としてはわかる気がするし、お風呂で寝ちゃって沈みかける私を助けてくれた話は…しない方がいいかな?
ベッドに横になって頭やお腹撫でてくれる話しはしても大丈夫だよね。
どれを話して、どれを話さないか考えて、考えて聿に会いに行かないとダメだと思った私は、逸が持って来てくれたプリンをふたつとも食べてしまった。
少し満たされたお腹と頭に、更なる空腹を呼び起こされた。
とりあえず聿への説明は、先延ばしにする事にした。