
(7)
私は今はひとりて暮らしている。
母が新しい仕事でひとつの所にいられないので、置いてかれたと言うのがあっている。
当時、高校生だった事もあって受験もあるし、置いて行ってくれと頼んだのは私だ。
それに母は喜んだ。
そんなに子どもが好きじゃなきゃ生なければよかったのに。もっと言えば、結婚もしなければよかったのに。
どんなに社会的に家庭を、子どもを持ってこそ大人みたいに言われたとしても、人には向き不向きがあるのだから。
父も母もどちらも家族、親として向いてないことくらい分かっていたと思う。
人間を育てる事に適さないひと達なのだ。
私の意識が確立する前の事はわからないが、あまり写真もない事から興味がないのが伺えたし、自我意識が確立しだしてからは、私のする事に顔を顰めているのを知っている。
『子どもとはそういうものですよ』と今は思うが、その頃は我儘を言ったり、怒られて萎縮したりして心が安定していなかった。
親は無くとも子は育つとは言えないくらい身体と心の成長が平穏では無かった私。
それでも今はひとりでも平気だ。
「…帰って来なくてもいいのになぁ」