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④絆されたくはないけれど

 ケンカ中。
 と言うか、私だけが怒っているだけ。
 リクはヘラヘラしてる。
 だって知ってるから。
 私の怒りの気持ちが続かない事を。
 それが悔しくて、もう一度怒りの気持ちを強める。
 「ねぇ、ねぇ、お腹空いた」
 それには応えない。
 「俺、ポテトサラダ食べたい」
 「…………」
 「あっ、餃子がいいかなぁ」
 「…………」
 「春巻きとかもいいなぁ」
 「…………」
 微妙に面倒臭いし、買い物も行かないとな物を注文してきて、ちょっとイラつく。
 「茶碗蒸しでもいい」
 ここに来て、それ言うのはズルい。
 茶碗蒸しは私の大好物で、いつでも作れる様に冷凍庫に材料を揃えてある。
 まぁ、具材なんて余ったモノ色々入れちゃうからなんでもいいし。

 リクは具が無い茶碗蒸しが好きだ。
 うちで具合が悪くなった時、『お粥はヤダ、食べない』と言ってふて寝していた。
 仕方ないので、具なしの茶碗蒸しにあんかけした物を出した。
 「すげ〜上手い」
 と言って私の分も食べて、機嫌を直しもっと食べたいと、また作らされた。
 汗めちゃくちゃかいて、具合も良くなった。

 「そろそろ機嫌治った?」
 私が色々考えている間に、気配が変わった事に気がついたみたいだ。
 「怒ると疲れちゃうだろ」
 そう言って私を抱き寄せる。
 確かに疲れる、だって怒る時気合い入れてから怒っているからね。
 それを簡単に無しにしようとするリクに怒っている事は隠して、ケンカを収めていく。

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